オルレアン奪還作戦18
俺の剣の中で光になりかけているライは、自分の人生に納得したのだろう。
「っくくくははははは」
「せっかくシーセルが助けたのに、無駄になっちゃっただろうが」
やさしく、目を瞑って、それでも狂暴さを残す。
「オレぁ、言っただろ……この戦いが終わったら、力になってやるって……」
「死んだら、そんなこともできなくなるだろうが、ボケが」
「ふ……」
まばゆい真っ赤な光を放ち、ヤツは消えていったように、そのときの俺には見えた。
この行動まではオレもシーセルも見抜いてやることはできなかった。
「この行為に何の意味があるんだよ、ナイトメアブレーキ」
『死にたかったんだろ』
「なんでだよ」
『あの敵さんはな、自分のことが死ぬほど嫌いだったんだよ』
「そんなことって」
『まあこれでなんにせよ、終わったな、ご苦労さん』
桜吹雪のメンバー数人が、俺の誘導に従って戻って来る。
その中にはほとりからずっと寝込んでいたユイもいた。
「シキくん」
「身体はもう大丈夫か?」
「作戦、終わったの?」
「ん、ああ、宿なしはなんとか避けられたってところか。ユイが俺を助けてくれたおかげだ」
「感謝してね」
ユイも笑ってくれた。
少し報われたような気がする。
『ありがとうございます!』
「え?」
『まずは直接お礼を言いたくて、戻ってきたんです』
後は涙をにじませる仲間が数人。
桜吹雪の大半が、オルレアン在住のナイトメアやヒトだ。
ようやく自分が住んでいた場所を取り返せたのだから。
「泣いてんじゃねえ。逃げ出したブレーキ連中がまたまとまって襲撃をしかけてくることだってありえるんだからな」
『そうですよね……すみません』
『てかシキさんも泣いてるじゃないですか』
指摘通り。
偉そうなことを言っても、説得力なんか皆無だ。
「本当だ」
ヒトが虐げられない世界。
俺なんかには大きすぎる一歩だ。
自分が育った地にしばらくぶりにこうして戻ることができた。
これは幸せなことだと言える。
そしてこの組織は、アゲハ率いるブレーキ軍団相手にも戦えるという、自信と希望をもたらしている。
「まずは一通り見回ってみないとな、ユイ」
「うん」
この街については、触れなきゃいけない事があまりにも多すぎる。
そもそもの話からして、この街は「かつてのユイが能力を暴走させ、内部から崩壊したスキをブレーキに突かれた」なんて事はなかったのだ。
俺は震えるユイの冷たい手を、強く握った。