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雑音ステップ 〜ALONE〜  作者: 白井 雲
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オルレアン奪還作戦14

そして今はシキさんはぼくを見ていない。



でもそれがいい、その方がいいんだ。



きっと彼はぼくが今からすることに反対し、叱るのだろう。



『自分の為に戦うよう言っただろ!桜吹雪の為に動くのはその次でいいと!』ってね。



おそらくあの人は今ぼくを見ていない、完全に任されている今が、ぼくにとって最大の本領を発揮できる時。



少し昔話になるのですが、今思えば住んでいた村が村なので、他の地には見かけない珍しいものが多かった気がしていまして、住んでいた方々の能力だけじゃなくて、その中には色んな能力が封印されていた巻物をまとめていた倉庫もその一つでした。



当時ウワサ程度でしか聞いたことがなかったぼくですが、どこにも遊びになんかいけない、退屈な場所でしたので、好奇心に勝てずにどうしても気になって忍び込んでみたんです。



バレることを恐れたのか数ある巻物の中、一つだけを持ち出して早急に脱出したぼく。



さっそく自分の住居に戻り、巻物を開いた。



そこに記されていた内容は。













「終わりだァ!苦しみながら死ねるよう、特別性の牢獄に招待してやる」



ライは自身の上空に直径5メートルほどはある巨大な火球を生成した。



【プロミネンス・フレイヤ】



それは瞬く間に、地に膝をつかせたまま一歩さえ動かないシーセルに直撃し、牢獄へと閉じ込めるような形で飲み込んでしまった。



この様子を感知していたリベールは焦った。



【焦っている】というのは、彼がライに始末され、次にこちらを狙ってくる危険もそうだが、それ以上に。



(そんなバカな……アイツ、シンマネが使えないなんて嘘っぱちじゃあないか……)



(アイツを包んでる小汚ねえシンマネとは違う。あの中心から、どんどん、尋常じゃないスピードでシンマネがあふれ出してる……!それも何モノにもそまらない、限りなく研ぎ澄まされたものだ)



(昔、蔵にいた頃、暇だからってんで通りすがりのヤツらの会話とかを感知して聞いてた時、ウワサされていたのを覚えている。自分の身体と引き換えに無限の力を手に入れる秘技が記された書物があるって。まさかあれが、そうだってえのかい!)



(ナニモンなのさ、アイツは……)




「ぐううううううッ!!」



(シキさん……あなたにも秘密にしていたぼくが会得していたもう一つの能力、今ここで使います!)





こんな所で、こんなヤツに、桜吹雪を燃やさせるワケにはいかない……!燃えるのはぼく一人でいい!だから……



今だからこそ誰よりもぼくは、桜吹雪の下で燃え上がる時!



【桜吹雪流・地獄道開祖術・イサリビ】








シーセルにとっての今際の際に、それは発動した。



(シーセル、なんてヤツ……今じゃ参謀役だなんて涼しい顔してたクセに、あいつはこと戦闘において、真なる天才だ。シキじゃなくてアイツに鞍替えしたくなる……しかし)



「ハアアアアアアアアアッ!!!」



「うおッ!!?」



シーセルを包む炎が一瞬にして、蒼く、変色したと思ったら、内部から生まれたシンマネの流れに散らされた。



「こ、このシンマネの圧力は!」



シーセルの発するエネルギーの本流が、周囲に展開されたライの制御下に置かれていない炎を吹き飛ばす。



ライの振りまく炎により、焼き焦げた木々さえ生命力を取り戻し、次々に周囲の景色は緑が濃く、変わってい行く。



「これではまるで、アゲハの……!」



その身体からは澄み切った青空を象徴するエネルギーに覆われていた。



ナイトメアの身体には血は流れていない、しかし目の色も蒼く、鼻からも蒼い液体が流れている。



受けた毒のシンマネも、そのエネルギーに押し出され、シーセルはその済んだ瞳で、戸惑いを見せるライを見据えた。



「くっ!」



ライがすぐに防御の為の炎を生成しようと手を振る、と。



「また防御体勢に入る気ですか?」



その手をシーセルに掴まれて



「それなら……!」



ライをそのまま力任せに真上に放った。



何百メートルもの上空に飛ばされたライのその真上を、シーセルはとる。



(これがナイトメアの動きなのか!?)



浮き上がったライを殴り飛ばし。



飛んで行った方向を先んじて周りこみ、また攻撃する。



これをひたすら空中で行う。



シーセルは身体から溢れるシンマネの使い方がわからなかった。



だが、足裏に漂うシンマネを蹴り上げ続けることで空中でさえ移動するという。



あらゆるナイトメアたちとは比較にならない、一線越えた行動をたやすく行っていた。



こうして攻撃を繰り返しながらこう思考する。



(まさかイサリビを一発目で使うハメになるなんて、ぼくもどうかしてるな……)



(もしもの時に考えていたこの状態でしか使えない、連続技、使わせてもらいます!)



生い茂る森とは別に、シーセルがイサリビを開放したその場所のみ、ポッカリと空いた場所がある。



シーセルを中心に周囲には地面しかない場所をそのエネルギーが作ったのだ。



そしてその地面の土は圧をかけられ続けて、濃縮された。



とてつもなく硬いのだ。



「これが、最後です!」



シーセルは両手両足を大きく広げて、向かってくるライに四肢を当てがった。



最も硬質化された土の真上へと打ち上げられたライ。






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