オルレアン奪還作戦13
満足に動かせなくなった身体を引きずるように火炎を回避しようと試みる。
一般人よりは素早く動けるくらいにはなんとか維持できているものの、それでも捌ききれずに何度も直撃をもらっていく。
「ぐわあああッ!!」
~シキとリベールの精神世界~
「おい負けそうじゃあないか」
シキに聞こえないくらいの距離で、リベールはつぶやいた。
向こうも作戦は佳境へと入っているようで、モニター前の主は集中しているからだ。
いざとなったら彼のリンクを解いてでもここから逃げ出さなくては、巻き添えくらうのはゴメンだとリベールは思うも、毒に侵され、逃げ場もないシーセルにもまだ勝ちの目は残っている、そう確信している。
ヒトはナイトメアに比べてあまりに弱い、貧弱である。
その弱さを補うものがシンマネであり、これを如何にしてコントロールできるかが肝要なのだ。
だから桜吹雪に加わるヒトたちは一切の例外なく自分の力を磨くための努力をしてきたし、報われないまま、別の役割を選択した者も多かったが。
ナイトメアは違う。
息をするのと同じくらいシンマネを操るのは簡単だし、身体の作りもヒトのそれとは比較にならないほど強靭だ。
だから彼らは頑張るということを往々にして知らない。
その中で彼は努力をしたナイトメアで、シンマネを自在に使って戦う相手への対策も、間接的にリベールが授けたもので50通り。
「負けるなよ、ここからだろうが」
「なかなかしぶといヤツだ、ナイトメアだからか?」
「まだですよ……」
「もっと楽しませてくれ」
(どんどん身体の自由が効かなくなってきています。ダメージも大きくて、これ以上の直撃をもらったら終わりですね)
(シキさん……あなたはいつも修行を続けたぼくを笑って見守ってくれましたよね。桜吹雪のメンバーに下克上のような形で挑んだ時も、勝った時も負けた時も)
(それだけでぼくは更に力を手にすることができた。誰よりも強くなれる。高く飛べる)
『俺も小さい頃な、住んでた所がめちゃめちゃになったんだよ』
『ぼくと同じ?』
『そうそう、加えて俺たちヒトはナイトメア・ブレーキだけじゃない、アクセルにさえ狙われてたりもしたんだ。だから自分の身を守るためにまずは桜吹雪を作ったのがはじまり』
『言ってしまえば、ここに属しているお前らナイトメアは俺たちヒトを守るためにいるようなもんなんだよな……悪かった。本当は他の仲間達には事前に言うことだったんだけどな……』
『シキさん……』
『他に目的があるなら、お前はそれをやるべきだ。俺がトップだったらお前はナンバーツーくらい強くなったんだからな。いつでも抜けて構わん』
ぼくはそういうシキさんの目をずっと見ていました。
『でも、そういうあなたの目はそうしてほしくないって言ってますよ』
『お前……』
『決めました。あなた方ヒトがもう狙われなくていいように出来たら、ぼくはあなたと戦ってみたい。それまではついていきます。それまでせいぜい死なないように立ち回ってくださいね』
『はっ、言ってろ。お前こそ俺がわざわざ見なくても安心して任せられるくらい、強くなってみせろよな』
『わかりました!』