オルレアン奪還作戦12
「そうだな、お前は強いよ、大したもんだ。けど近接しか攻撃手段がないのは、限界がある」
「えっ」
絶対的にむき出しになった部位に一撃を叩き込む前に。
「これは……!」
【ドレイク・プラダリング・グングニル】
ライの身体から先鋭化されたシンマネの炎が射出される。
「ははははははっ!自動防御のシンマネだけは仕込んでおいたんだよ!」
「さあ、トドメだ」
突き刺さり、倒れ行くであろう彼に、追い打ちをかけようとした折から。
その存在は幻影となり、誰にも視認できなくなっていく。
つまり、消えた。
「ぼくも仕込んでおいて良かった、【存在する幻影】だよ」
「バカな、ぐあっ!!」
本物のシーセルがライの顔に拳をめりこます。
そして、殴りぬける。
(今度も、だけどモロに入れました。そろそろですかね)
(確実に突いたはずなのにな、空振りかよ。クハハハ、たまらねえ、たまらねえよオマエ。さて、ここからどうすっかなあ)
「おかげさまで、痛みに向き合わなくて……済む」
(今度はしっかりと痛みを感じているような反応をしているような感じが見受けられますね……)
「……うっ!」
シーセルは身体の変調を急激に感じ始めた。
「これは……、ぐっう……」
(消耗感や疲弊感とは違う、力が、入らない……)
「まさかこれは……」
「【毒】だよ」
「そもそもオレはシンマネコントロールの得意属性は火なんかじゃねえ。シンマネの性質変化は属性なんつー概念に縛られちゃダメだと、アゲハが教えてくれたのさ」
「そうしてオレはどの属性にも当てはまらない、全く新しいシンマネを使えるようになった。こいつは空気を漂い、自然発火をする特性があってな。あくまでこいつは副産物ってワケだ。火さえ作れれば、そのコントロール自体はたやすい」
辺り一面灼熱の業火に包まれているのに、なぜか身体は寒さを抱えている。
(彼は本当はダメージを受けていた!受けていないように見えたのはおそらく痛みが伝わる感覚を、その力で誤魔化していたからだ。そして、今それが切れたんです)
「そしてぼくもまた、何度も軽く触れてしまっていた火によっていよいよ毒がまわってきた……」
「思ったよりオレも、オマエからずいぶんとダメージをもらっちまっていたみてえだなあ。立ってることなんてもう少ししたらできなくなっちまいそうだ」
(ユイさんの身体がしばらく優れなかった様子だったのは、そういうことだったんですね)