オルレアン奪還作戦10
あのライでさえ、目で追うことさえできないまま彼の幻影を追い続けている。
「こっちですよ!」
刹那の間に火の壁が剥がされる。
どこだ、ヤツはどこにいる。
火の間から迫る、見えない攻撃にダメージを与えられ続けている。
「引きこもってないで出てきませんか!」
どこにいるのか、視界をあさっている間に、シーセルは彼の上空を取り、渾身のかかと落としを放った。
「ぐぅ……おおッ!!」
いい感触、でした!
ユイさえも倒した彼を、かつては能力のこと以外基本何もできなかったシーセルが圧倒している。
「何てスピードをしている……」
「さあどんどんいきますよ!」
「くっ……!」
今度は防御に徹していたライが使役している火を攻撃のものとして、シーセルを取り囲むように展開させた。
賢者には読めていた、焦った炎使いがそうするのは。
ライがそうするころにはもうシーセルは彼の近くに踏み込んでいて。
残りの火の壁も。風圧の枠を超えたまるで衝撃波のごとく一撃で吹き飛ばし、またも直接攻撃を叩き込んだ。
「やるなあ、オレの防御術を悉くほんろうし、ここまで楽しませてくれるとは……」
さあここからどうするんでしょうか……?このライという少年は。
背に翼を掲げて飛ぶこともできるらしいですが、もし飛ばれたらぼくが圧倒的に不利になりますね。
すぐに攻撃ができる間合いには常に入ってるようにはしてはいますが、
いよいよバレてるのか、なかなかスキを見せようとしませんね。
「安心しろよ、オレぁ飛ばん。ヤツにも手は出さん」
「せっかくこんなに気持ちのいい敵と出会えたんだからな」
戦いっていうのはできれば避けたいっていうのがみんなの常のはずです。
桜吹雪のメンバーにも一人としていなかった。
環境の問題で戦いなれている仲間だってそうは思っていなかったはずなのですが。
「なんだと……」
この時一瞬のまばたきをしたのですが、目を閉じて開けるまでの刹那の時間で、彼の周囲の木々が。
なくなっている。
「様子見なんてチマチマやるから、オレ、こんなにダメージ負ってしまってるじゃあねえかあ!!!」
あらぶる感情をそのまま表すかのように周囲の火は燃え広がり、あたりを焼き尽くしている。
「……もったいないもんなあ、こんな素晴らしい戦士を上空から一方的に攻撃するなんざ」
やがてまばらにちらばった火はまとまりを見せ、二人を取り囲むように燃え広がっていった。
「もうこの周りの火は俺の制御下からは離れた。だからこいつらは無限に燃え広がる」
「早いところ決着をつけないと、ぼくは死ぬってわけですか」
「お前の所のリーダーには手出しができない、っていうのを納得してもらう為にな」
見たところ上空にも火が無数に散らばっている。
なるほど【飛ぶこともしないことの証明】の為にか……
「行くぞ」