アルフレーガシ13
「いやあ……何か胡散臭いし僕に描いてもらうより他の人の方が……多分ここから色々来ますよ、ヒト」
「そんな事知った事じゃありません!あなたが絵を描いてくれるその人だっていうのは、間違いなく真実です!」
「伝承の人って本当に僕なのかな……多分違うと思うのでこれにて」
「ダメ!」
城から降りて来るや否や、僕の裾を掴んで離さない。
絶対絵を描いて欲しいみたいだった。
その面持ちはどこか決意を固めた様子を醸し。
瞳は力強さを携えて、まっすぐ僕を見つめている。
「どうしてそんなに……」
たかだか絵だぞ……?
何に使うって言うんだ……?
「見るだけで、みんなが慄くような不思議な絵」
「慄く……?そんな迫力のものを描けと?」
「ね、ホントに描けないの?」
「うん、ごめんね……」
僕は彼女の目的を聞くことにした。
誰もいない、夜の静けさは彼女の声をよく通した。
「私の名前はユイ。ご覧の通り氷を生み出し、それを自由自在にコントロール出来るシンマネを使うの 」
彼女はその力を使えるようになったのはかなり昔からだったらしい。
幼い頃からそれ故苦労ばかりして、親を失った代わりになってくれた人さえ裏切りの憂き目にあったが、ある人のおかげでなんとか立ち直り、住んでいた街を守る力になった。
そのある人を、なんと今日見かけたというのだ。
そして彼女の事を覚えていないのか、多少変わった姿に気付いていないのか、スカウトをして来た。
「街を救うには襲って来る奴を潰すしかない。俺に力を貸してくれってね」
「ああ……その口ぶり間違いないね……」
あいつの力強い言葉を聞き、成長を知ったユイさんの瞳からは、人知れず涙が零れ落ちていた。
いや、多分覚えてないだけなのか……?
つまりユイさんがこうしてシンマネを散らしていたのは、その特異な力で栄えた街を作り、色んな人を集め、再び会える時を待っていたからだった。
「という事で別にそんな伝承ありもしなかったのでーす。ごめんね」
「あのさぁ……」