オルレアン奪還作戦7
「お前、うちにこないか?」
「えっ?」
「ああ、そうか。いきなりだよな」
シキという、ぼくと同じくらいの年代をしているようなこの人は、微笑みかけるように続けた。
「簡単に言うと、ナイトメア・ブレーキからヒトを守る為の組織、かな。見たところお前もお前で、大変な歩み方をしてきたのがなんとなくわかる。その冷静さもあわせて、力を貸してほしい」
少しぼくは考えてから、その話に乗ることにした。
正直死にかけていたところを救ってもらったのだから、断るのは何か大事なことから反するのではないかと、考えていたのかもしれない。
少なくとも行き場もなくし、いまだ狙われている可能性さえあるぼくが、身を隠すにはうってつけだ。
『こいつまた、試練に落ちたんだってよ』
『雑魚すぎ、いくら教えてやっても時間の無駄なんだよ』
『こんなセンスのないやつは初めてだ、シキさんと同じヒトならまだしもお前ナイトメアだろ?』
でも、その程度の「なんとなく」で入ってきたぼくを周囲は歓迎しなかった。
ぼくは桜吹雪の一員として数えるにはあまりに戦闘に関する才に恵まれておらず、桜吹雪内に人員を育てるための簡易的なアカデミーがあるのだが、それにもまるでついていけなかった。
シンマネコントロールもままならず、転用した攻撃手段を取得もできず、ぼくはただ足でまといになってしまった。
『アホだなあ、お前みたいなのが桜吹雪の戦闘員になれるわけねえだろ!』
その通りかもしれない、実際別の形で役に立てるように動けば良いと思う。
『だいたいシンマネもロクに扱えないヤツが戦えるわけねえじゃん。シキさんは例外だけどな』
それでも。
「ぼくだって、できます」
『お前、そもそも近接戦闘だってまともにできてねえじゃん?』
周囲に呆れるほどコケにされても尚、ぼくはこの道を選んだ。
無駄に死ぬだけだからやめたほうがいいと、言われているのだろう。
彼らなりの気遣いだったのかもしれない。
そこでぼくは始めて、自分が意地っ張りで負けず嫌いのポンコツ野郎だってことを自覚した。
「できます!」
バカと蔑まれながら、アカデミーから課せられたトレーニングをもくもくと明くる日も続けた。