オルレアン奪還作戦3
「敵がアンタめがけて近づいてるよ」
精神世界にてリベールが話しかけてくる。
ずいぶんと言葉を交わしたのはひさしぶりなような気がするのだが、何も変わらない、いつもの素っ気のない態度だと感じた。
実際のシキはオルレアンから少し離れた森に、ずっと目を閉じて座り込んでいる。
それでも。
「俺は動かない、動くとシーセルの能力に集中できなくなる」
「アンタの護衛がたった一人なのに?」
「俺にとってはお前と同じくらい、アイツの能力は信頼してる」
「へえ、そいつぁさぞかし有能なんだろうねえ」
無防備な状態のシキに、無慈悲なまでに強大な炎が稲妻のように飛んでくる。
曇った表情のライが遠くから放っていた。
「有能……ってのはちょっと違う」
ライは目を見開いて笑って見せた。
「あいつは無能だ」
大振りした片腕、ただそれだけで眼前の炎を吹き飛ばした、そんな大雑把な動作だけで強者だと理解できる。
「だからこそ、その為の対策を誰よりも練って、誰よりも行動した。あいつは誰にも負けない」
「だろ?シーセル」
精神世界で、いわば心の中でただそう呟いた。
聞いてるのは、彼女だけなのに、無意味なのに言いたくなった。
その言葉がまるで聞こえたかのように、シーセルが不敵に笑った。
「……彼が受けるダメージは、僕の能力で精神同調を果たした桜吹雪のメンバーにも伝わる。やらせない」
「へえーー、いいねえ。桜吹雪は色んなヤツがたくさん居て」