心の在り処15
「久々の再会で、その呼び方!?アホ!」
「いたっ!?」
久々の拳骨は、とても痛かった。
痛いってのも、違和感有る表現かもしれないが。
「今度やったらうちの子じゃなくなるからね」
「ごめん」
「でも、どうして俺のところに?」
「ユイがあなたに今、触れてるからね。夢楼草を倒れたあなたに与えるために」
ユイは、肉親でもあるこのひとから能力を譲り受けたのだ。
能力を命と引き換えにユイに渡し、そして自分の意識をシンマネにこめて、それも遺していた。
すぐ本物だと分かった。
隠しようのない、穏やかさと不定形な立ち振る舞いのこの女性は……間違いなかった。
「身体をかけめぐる憎しみや悲しみが、闇の正体で、それにヒトはずっと苦しめられている……俺もそれになっちゃったんだ」
「知ってる、あなたにしてはよく耐えてたと思う」
「だから俺、こんなものにならなくていい世界が見たくて、桜吹雪を立ち上げて、ユイにも見せてあげたくて……でも俺、やっぱり弱いからやることなすこと全部後手後手になってて」
「ユイの中から見てたよ」
「俺、つい最近ユウゼンと出会って……でも身体が、すごく弱ってて…!そこをブレーキに狙われて、俺がふがいないから……ユイに汚れ役まがいのことまでさせちまって」
「……」
「ごめんなさい!ごめん……本当に……!だから、今度こそは、次こそは間違えないようにって……!」
言い終わる前にスイは走り寄り、シキを抱きしめた。
「間違ったことなんてしてきてなかったよ。ぜーーーーーんぶ正解の道」
「というか二人が普通に生きていてくれて、こうして再会できた事が一番太鼓判押せるポイントだったかな」
シキもまた、子供のようにスイにしがみつく。
その姿を優しく見守るそのまなざしは、まさしく母だった。
その体勢のまま暗闇の精神世界のまましばらく経ち。
「……でもなんで、俺に……?ユイに残ったシンマネだって、有限じゃないだろうし、それなら先にあいつの為に」
こんな無粋な質問をしてるのに。
スイはあんなにも優しい目をしている。
ヒトとして当たり前に持っている温情が湯のように自分を囲むのを感じた。
「シキが真魔欠乏症に陥った時、ユイがあなたの身体に触れたら発動するよう細工しておいたのよ。相当弱ってるって時に会えるようにね」
「さすがに抜け目がない……」
「後は知っていて欲しい事があるからここに来たのね。ここまで成長したシキになら、話せる」
「聞いて欲しい事だと……?」
「あ、でもやっぱりいいや、またきっと会えるだろうから。そのとき話そうね」
「は?」