アルフレーガシ12
横になって、天井を一点に見つめた。
生き物の気配は何一つ感じられず、シキはとてもリラックスしたように、寝息の音だけを奏でていた。
気付けば僕は修行の再会に向けて、誰もいない夜の街を歩いていた。
相変わらず氷で出来たように見える城のオブジェは、順応性の高いシンマネを散らしていた。
常温にさらされても尚、溶けずにどっしりと構えていた。
「本当に誰もいないな。起きてるのは僕だけだ……」
つまりアルフレーガシに来たヒトは僕だけだ。
そういいながら光の粒子に手を伸ばした時。
『それが、そうとも言い切れないんですよ』
声!
……あの城の中からだ。
『古より受け継がれし伝承は、必ず真実を含んでいる。そしてその真実を知り得た所で、全容に迫る事は出来ないのが我々です』
『ですが、他者を想い、このように無限のシンマネなどなくとも共に生きる事が出来る種族が現れ、その定めを変えると』
『私は貴方の事を待っていました。ですから今日に至るまでのこの行いは苦ではなかった。この時間に、いつか貴方が来るのを信じていたから』
窓から顔を出していたのは、女の子だった。
憂いを帯びた顔で僕に手を伸ばしている。
「伝承……夜に起きてるだけでそんな凄い奴になったの、僕」
「はい。この街の伝承では、貴方のような夜に活動できる者が現れて不思議な絵を書いてくれるのだと言われています」
「はぁ……」
いの一番にヒトである僕がアルフレーガシに辿り着いたせいで厄介なのに絡まれたなぁ。
それよりも。
「無理して慣れない口調しなくても大丈夫ですよ……」
「……へっ?」
神秘的な雰囲気に惑わされる所だったけど顔が引きつっているからね……
「特別扱いみたいでちょっと面白いから別にいいんですけどね」
「あ、そう。じゃあやめるわ」
「切り替え早……」