心の在り処14
俺の目的は確かに、こんな病になることのない世界を作る事。
今もその実現の為に生きている。
そう思ってここまで走ってきた。
俺たちヒトが唯一住んでいるとされるオルレアンを取り戻す一歩の所まで来ている。
だけど思うのは、俺達はもともとこの世界のヒトではないのでは?という猜疑心。
あまりにも力が弱く、あまりにも脆く、そして寿命を迎えたら死ぬ。
シンマネの力を借りないとロクに戦えない。
意志のないナイトメアが意志あるナイトメアや俺達ヒトを襲う。
当たり前だと思ってたこの世界をだんだん受け入れられないと感じたから、桜吹雪を結成したんだ。
始めは俺に同調したヒト達が中心になって共に旅をしながら修行の日々を送った。
そうしてブレーキやアクセルが入り乱れると噂されていた幻の楽園と謳われた桜吹雪で俺達ヒトの力を見せつけ、カタチはなんであれ少しずつメンバーが増えてきた。
いつかは俺に勝つため、俺の側で力を学ぶ者。
滅ぼしてはならぬと、ヒトの為に力を尽くす者。
俺の存在を恐れてついてきた者。
他に生き場がなかった者。
確かに力を手に入れるのはいい気分になる。
だけど同時に、恐ろしくもなる。
なぜアゲハ率いるブレーキ軍団はヒトを虐げているんだ?
なぜ巫女なんていう、力を代々押し付け続けて、女泣かせてまでまで俺達、生きようとしてんだ?
桜吹雪結成から時間はたっているのに、この気持ちに俺は未だに折り合いを付けられていない。
せめてオルレアンだけはヒトが生きやすい街であってほしい、そうしたら、そこでユイには普通の暮らしをしていてほしい。
「ぐっ!いっ……!てえ……」
どんどん離れていくユイの姿を見届けているうちに、その場に突っ伏しこてしまった。
「……バカみたいだ」
青く凍ったような空だ……
仲間たちの顔が過る。
闇を背負うのって、こんなに辛いのか。
この痛みを、ユイは沢山救ってきたと言うのか。
そしてお前は、自分のせいで俺がこんなんになったって、そう思ってるのか?
お前は俺のせいであんなにボロボロになってるのにな。
いくら言葉を重ねても言葉にならない焦燥が、頭の中でぎりぎりと軋みまわる。
そのうちに、意識が落ちていった。
真っ黒に塗った板を、眼の前に突きつけられたような闇に意識が沈んでいく。
「シキくん」
静かな空気を破ってユイの声が先ほどから呼んでいた。
「ユイ……?」
よく似た声と雰囲気だったけど、違う。
「闇に食いつくされそうになってる?」
「うん痛いんだ、どこが痛いのかまるで分からないんだけど……ずっと痛くて、なんでこんなに弱くなっちまったんだろうって」
狂人のような真紅な着物と赤髪、そして昔から俺を困惑させてばかりのこのヒトは……
「へえ~、久々にあったと思ったら結構弱ってるみたいね」
「でもシキは、生きていていいのよ。生きていてくれたら、私もユイも嬉しいからね。私が誰か当ててみてよ」
「本当に、本物のスイ……なのか?」
「うんうん♪……は?」