心の在り処13
「どうして……」
「燦が教えてくれたんだ、俺が行った方がいいって、寝ていたらたたき起こされた」
「ロクに身体も動かせないってのに他のやつに行ってもらうつもりだったけど案外身体、動いたんでな。お前だから大丈夫かと思ってたんだが、結構やられたな」
ユイを抱えてシキは歩く。
確かに苦しそうな息遣いだった。
私の身体は止血の為の氷の影響で今までで一番冷たい。
きっと堪えるだろうに。
「どうして、シキくんはそんなに強いの?」
「お前に言われたくない」
「私……結局失敗しかけて」
「こんな所に一人で何回も何回も行かされて、文句一つ言わない。俺には真似できないから。でもそれが巫女だっていうんなら、そんなものが必要のない世界を手に入れたい。そう思ってる」
「本当に強いのはお前だよ、俺にはこんな事しかできないし、しかも別に俺じゃなくても、他のメンバーでも容易にできただろうしな」
その言葉を聞いてユイは深い驚きを吐き出すようにため息をつく。
「そんなことないよ、シキくんにしかできないよ。じゃあさ、こうしようよ」
「うん?」
「二人で本当の強さを見つけるってことにしない?」
ユイは抱きかかえられたまま息が止まるほど、ギュッと抱きしめる。
「そうだな」
まさか燦くんが、こういう形でシキくんとの間を取り持つようなことをしてくれるなんて。
(他人のことを理解することは無理だと思う)といわんばかりに、まるであきらめたようなあの顔を思い出す。
でも彼は、それをしようとするヒトなんだ……
しばらく山を上っていると。
「途中までは連れて行ってやる。夢楼草の範囲がキツくなってきたら、そこからは頼むな」
「それまでは休んでいてもいいって、寝てるか……」
無防備な寝顔が赤ん坊のようにあどけない。
「お前の言うとおり、己の身体一つで戦うには限界もあるよ。でもあんなやつらくらいならノしてやるから。とりあえず、役に立ててよかった」
美しい頂上、山ひだの一つ一つをなめるように見まわした。
「この先だ」
さすがに鍛えただけあって、ヒト一人抱きかかえて、荒れた場所を登ろうとも、息のリズムは乱れていない。
だが、体内に生成された黒い塊は、確実にシキを蝕み続けている。
「ありがと」
「気にするなよ。俺だって、これからお前に助けてもらうんだから……」
「行って来るね!」