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雑音ステップ 〜ALONE〜  作者: 白井 雲
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心の在り処11

「ヒトは脆い、とよく言われているが、あれだけの傷を負えば、どんなナイトメアでも再び戦う事など不可能だ」



「ユイ、幼馴染の力をオレは素直に受け止めよう。成長の幅を認めてやるよ、だが、終わりだ!」



湿った地面の上を鮮血が生き物のように広がってゆく……





「ああ……私……怪我しちゃったんだ……」



私には真魔欠乏症(ままけつぼうしょう)なんてものは無縁なものだけど。



シキ君が患う事になったのは、間違いなく私のせいだ……



じゃなきゃ誰よりも強いあのヒトがそんなことになるわけないもん……



あの症状の辛さって今の私みたいな苦しみがあるのかな。



いや、実際はもっと苦しいんだろうな。






立場上、私はあまりにもたくさんの、苦しむヒト達の姿を間近で見てきた。



「痛い」「痛い」と苦しみにあえぐヒト達が、私にとって、すごく見るに耐えない光景だった。



彼らは痛いと言うけど、どこが痛いのかは分からないのだそうで、ずっと違和感があった。



だってそうじゃない?どこが痛いのか分からないのにいたいいたいって……



それがたかが葉っぱ一切れで治る?



そんなおかしなことってあるの?



心が苦しんでると、ジャンヌは言ってたけど。



じゃあその心はどこにあるんだろう……心臓?頭?分からない……もう何も……



わからない。







それでもシキ君には生きていて欲しいよ……



私の痛みをすんなりと受け入れられるあの強さを、学びたいんだ……



となりにいて、見ていたいよ……



だから。



こんなヤツに邪魔されるワケには、立ち止まるわけには。



「いかないんだっ……!」










「立ち上がった……バカな……」



「傷口を、氷でふさいで……赤い水が出ないようにしているのか……」



ユイ自身は氷のシンマネを取り扱うが、それでも直接触れることはほぼない。



彼女とてヒトだからだ。



絶対零度の冷たさはとてもじゃないが痛覚のあるヒトには耐えれたものではない。



だけど彼女はその力を自らの身体にへばりつかせて、命を繋いだ。





その出で立ちを見て、ライは空に感嘆の声を放つ。



「美しい」



生にしがみつく姿は美しいと前々から色々見てきていて、感じていたが、彼女は飛び切りだった。



満たされることのなかった、そしてこれからも永遠に満たされることのないであろう空虚が何かで充実していった。



「いいだろう、救いたい者がいるなら救うがいい。それだけの傷を負ってもいいと思える程の仲間がいるのならな。だが、勝負はオレの勝ちだ……」



勝負は勝たなければ面白くない。



結果にこだわり続ける姿勢があるからこそ、本気のぶつかり合いになっても、決してライは負けなかった。



莫大なシンマネ量と、それをたやすく操る才を持ちながら、普通の暮らしをしていた。



世界を作り変えるほどの才を持っているアゲハとの一気打ちを機に、彼にとっての世界が変わることに。



そうだ、オレは……アゲハの……



「お前の傷付いた姿を見ていると、こみ上げるものがある。あの光る女も良かったが、オレにとってはお前が一番美しい」



「だから生かしてやる、さらばだ」



「脆くて悲しくて、それでいて儚いほどに強い、美しきヒトよ」

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