心の在り処9
恐ろしいほどの情熱にオレは感動していた。
ヤツと戦う事がこんなにもオレの身体を沸かせることになるとは。
馴れ初めは、まぶしい姉ちゃんに引き連れられるように一緒に夢楼草を守る俺の前に現れたところから。
取り返しのつかない絶望に陥いったみたいに、蒼ざめた顔をオレは覚えている。
そういえば、あの姉ちゃん、どこにいったのだろう。
唯一無二の、光のもたらす質量を操るシンマネ。
「いつもありがとうね、ライ」
「なぜオレに礼を言う?こちらが言いたいくらいだというのにな…」
「そりゃあ、あなたが居なかったらもっとラクに、巫女なんてものにこんな面倒押し付けずに済んだかもしれないとはかんがえちゃうけどね。ましてや、あの街に済む者達を苦しめている張本人だしね?」
「そうだよ、そういうお願いをオレは引き受けてるからな」
「でもあなたはあの街に攻め込む真似を最後までしなかった。その力があれば、太陽の熱をもっと上げて焼き捨ててしまうことだって出来るでしょ?そうなったらさすがにもう終わり」
「そうだな」
「戦うのが好きなあなただから良かったのよ。もしあなたが壊すのが好きなブレーキだったら。先に壊してしまってたから」
「そんな気はないくせにな、よく言うな。そんなことよりお前は何を言いにここにきた?」
「この街が滅びないように、本隊を食い止めなくちゃいけない」
「バレてたか……」
オレはアゲハからの命令は受けていたが、基本自由に動いていいとも言われていた。
だからこんな覚悟を決めたような真剣な顔を前にオレは何もできなかったのかもしれない。
「ユイと遊んであげてね」
「イヤだな、あいつ弱そうだから」
「もう少し経てば、ライより強くなるよ」
「なぜだ?」
「悲しみを知ったシンマネはもっと冷たくなる。あなたの炎を封じ込めるのだって容易くできちゃうようになるわ」
「これから暇になるな……オレはお前というヒトを知って、お前達ヒトという生き物が好きになった。あの街を、ブレーキにくれてやるのには惜しい。止めはしない、行くがいい。」
「ありがとう」
「これから暇になるな」