心の在り処5
「でもそこまで重大な病が関係していたとなると止めちゃってごめん」
「知らなかったのですからしょうがないです。僕のほうこそすみません」
「あるにはあるんですよ。その病気を無理やりでも治す方法」
「あるの!?」
「この近くに夢楼草いう植物があって、この草に超濃密のシンマネが詰まっています。一口齧れば失神してしまうほどのシンマネが流れ込んできて病気の原因となる闇を破壊するんです。それを飲ませてあげれば」
「なんだあ……」
だから自分の死が近づいているにも関わらず、シキはあんなにおちついていたのか。
「じゃあ早速取りにいこうよ」
「でも無理なんです」
「なんで?」
「あの植物がなんで超密度のシンマネを抱え込んでいるのかってのが取りにいけない事の原因です」
「まさか、周囲のシンマネをものすごい勢いで食ってたりするの?」
「そうなんです、あの植物の辺り一辺が、不毛の地と化してます。われわれナイトメアが近づけば、霧散してしまうほどには」
「だからオルレアンには巫女という存在が必要だった。無限に沸くシンマネを使役できる者が」
繋がった、あの街の抱える闇に少し近づけた。
そんな気がする。
「巫女がヒトの抱える闇をどうにかできるのだと、ヒトが代々受け継ぎし大いなる力がシンマネの結晶をヒトに授けられるのだと、だから虐げられていてもなんとか生きてはいけたんです」
「だけどそれさえもナイトメアブレーキの連中が許さなかった。絶大な能力を持った腕利きのブレーキがあの植物を守るようにしてずっと居座っています」
「聞いた事がある、ユイさんがそこの巫女をやってたって……太陽の光を強くして、あの街をいじめているんだって、巫女はそれと戦う力だと……」
つまりユイさんは夢楼草の存在と、生息してる場所を知っているんだ。
「シキさんはユイさんが絶対動くのを分かってた。だから疲れ果てて倒れる寸前にあのヒトの見張りを命じた。発症したばかりならオルレアン奪還作戦も不都合ない、終わってからでいいって考えているはず。今は数人で四六時中バレないように見張っているはずですよ」
「なんでそういうことばかりは抜け目ないんだあいつ」
『ヤバイです!ヤバイよヤバイ、これはヤバイよ!』
「あの人はユイさんの見張りをしてた……」
「まさか」
ユイさんがいたという住居を張っていたら、そこにあったのはユイさんの形をした氷だった。
シンマネの制御を失った氷は立ち尽くすようにポタポタと水をはべらせていた。
「ずいぶんと器用に能力を使えるようになったんだね……」
『やられました……すみません』
「クソっ、作戦が全て終わってからでも実際は夢楼草を取りにいけばいいのに……太陽の力さえ操るナイトメアだって拠点が失われば撤退だってするかもしれない、しなければ数で圧倒すればいい。あの人も確かに巫女でしたが……」
事の重大さが分かっていない、あの子以上に強い人を僕は見たことがなかったからだ。
ミハヤと同等くらいには……