心の在り処3
「それよりシキさん……」
シーセルは燦の方を、古い楽器を点検でもするのかと言うくらいにじっくり見た。
それから。
「やっぱり友達になってくれている燦さんにも聞いてもらいたいんだけど」
「誇らしいな〜友達だって」
「黙ってろ……」
「永くないですよってここのお医者さんが、本人に伝えるか任せるって」
「?」
「『真魔欠乏症』だな、つかもう伝えてるじゃねえか」
「そうですね」
あとからシーセルに伝えられた。
呼んで字のごとく体内のシンマネがどんどん消えていくという症状だ。
「起きてからずっと身体がロクに動かねえからな……」
「一体何があったんですか」
真剣な面持ちでまっすぐに問い詰める。
「相当な事がない限りはこんな病気、かかるわけないですよ……シキさんを尊敬してます。代わってやりたいくらいに信頼だってしてる。みんなはシキさんのリーダーというポジションに意識が向いているけど……ぼくは」
心の中に巣くう闇が、シンマネを吸い取ってしまう、という説が有力なのだと……だから問題なのだ。
ヒトがヒトであることの証左だ。
彼は自分の事をあまり話さない気がする。
色々教えてもらったのに、僕は、こいつの事を何も知らないのだ。
「ううーん……」
そのときまた僕は、(ああ、またダメだったんだね)と悟った。
心のシャッターを閉める表情が彼からは見てとれた。
「すまない……今はまだいえない」
そりゃあ、なんでこいつはいつもこうなんだろうとか。
「っ…!シキさん!」
みんなを率いる立場のヒトがこんなんでいいのかとか、思ったりもしたけど。
「待って、シーセル」
「それでいいんだよ」
自分をさらけ出す事が出来ないヒトは、他者とわかりあう事ができないかもしれないけど。
例え見えない壁が僕とこいつの間に出来てたとしても。
「ありがとうな」