覚醒、受け継がれた能力11
「ほ、ほんとうかい……?」
感情のままに生きたユウゼンの額に、ユイは優しく指を当てた。
「うん、本当。すぐ苦しくなくなるから」
「帰ったら昔シキくんと住んでた家に行こう?」
「ユ、ユイ……」
本当は知っていたんだ。
どのタイミングだったかなどは問題じゃない。
ユイは、ユウゼンが真の肉親であることを知っている。
「これじゃあ道化だね……」
ユウゼンの授けたコキュートスのコントロール術によって
穏やかになった力が、ユウゼンの身体を駆け巡る。
「うん……そうだね。あの家まだ残ってるかな……」
そうしてしばらく経った。
ふと、天を仰ぐユウゼンの頬に氷の結晶が降りる。
「ごめんね、こんな事しか出来なくて……ごめんね……!」
「こんなことになるのなら、私達、出会わなければ良かったかもしれない!」
「私のせいで、こんな事になるのなら……!」
俺たちの間には、雪解時の泉のように、あらん限りの感情が目まぐるしくわき上がっていた。
「君を知らないまま、生きていくよりは満足できたし納得もできたんだよ。神様は笑ってはくれなかったけど」
「運命は振り向いてくれた」
記憶の片隅でチラついたのは父親の寝顔だった。
彼の寝姿は、幼心にも静かで、恐ろしかった。
思わず息をしているのか聞き耳を立てたこともある。
けれど今だけは、なんだか安心しきった顔だよ。
日に照らされて凍りついた氷が溶けたんだ。