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第5節 「不毛」

◆家 夜

 刃沼は、ラジオから流れるノイズ混じりの音声を、おぼろげに耳にしていた。

ラジオ「

 ――という軍関連施設で人体改造の研究のうわさが流れた頃、同時期に狂人化現象が発生。――そこでワシは睨んだ訳です。怪しい、と。――へえ。それで。――つまりですよ。こうこうこうであるからにして、――――だからこそ、その人体改造実験の産物が、狂人化現象という取り返しのつかないものを招いたんじゃないかって、そう考えておるわけですワシは。

――へぇへぇ。おっしゃっていることは皆目――――と、いたしますと。狂人化現象が、狭い地域だけでなく、世界中で見られることについてはどう説明つけましょう?――そりゃキミ、世界中でやっとんのヨ。核実験、イヤ、こりゃ失礼、人体実験を。――へぇへぇ――そんなことも分からんのかネ、キミは。これだから頭に髪を生やした人間は、まったく」

 内容がダラダラした不毛なものだと分かったとき、ラジオの電源を切った。布団に入り、考え事……。

刃沼(『人間を改善するには、どうすれば良いのだろう』 これまで人間が考えてきたものは、たくさんあるはず。人を改善するには? と考え行動した人だって、数えきれないほどいたはず。でも、今の現状は、まだまだ愚か者と未熟者であふれている。なぜ……!?)

…………

(そうだ! そこで逆転の発想だ。今、愚か者と未熟者であふれているけど、昔はもっともっとひどかったとすれば? ようやく成長して、人間の知性はここまで来た。でもまだ成長段階だから、悪はたくさん残っている、と。だったら……、もっと「成長」をさせる。どうすれば成長を? どうすれば?? ――『進化』だ! 生物は進化して、ここまでの高機能化、知性を手に入れた。人間の次、次の生命体の出現を待つしかないかなぁ……。……でもたしか、人間を進化的に見ると、1万年前とほぼ変わっていないという。人間の身体にしても心にしても。それくらい、進化スピードは、あまりにも、途方もなく、遅い。遅すぎる! これじゃあ、発展する世の中のスピードに対し、進化で適応できなくなるに決まってる。もう今がその時代なんだ! そして生きづらさの訳も、それが大きく関わっている。この身体そして心は、狩猟採集していた頃のものだ。まだ農業すらやっちゃいない頃の名残り。適応できないのはあたりまえだ。今までは、何とかだましだまし適応している形をとっているだけで。……でも、哀しい。常識とかが邪魔して、大抵の人間はそれが見えていない。適応力を、努力や根性の大小で認識してしまっている。それともまだ正確に認識できるまでの頭が発育されていない? もっと成長し大人になれば、自然とより良い知性になるのかなア。周りの大人を見れば、それは違うと分かった……。)

 刃沼は眠りに落ちはじめ、思考はもうろうとしてさまよう。

刃沼(これまでの生物的……進化は、……用済みで、次は別の方法をとらざるえない……。テクロノジー……? そういえば人体改造の研究がなんとか、とか……そうか…………!! いっそのこと、人の手で人間を作り変えればいいのか……。なんでこんなシンプルなこと……気づかないんだろう…………、それが自分の、発想力の程度なのか……。人間の能力の不完全さ、かなぁ……1つのことに集中するとき、必ず視野は狭くならざるえなくなり……、意識して視野を広く戻す必要があることを…………――) 刃沼はぐっすりと眠った。

第1章は終わり、次は第2章となります。

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