第2節 「首謀者との戦い」
◆研究施設のどこか
刃沼たちの行く先々で、作業中の研究員さん方に出会う。でも、そのほとんど――「あら、どうも」。「見慣れない方ですね」。「そこちょっと邪魔」。「…………」――刃沼達を大して気にもとめない。興味がないと云った様子だった、研究以外は。
デガラシ「襲ってくるかと思っていました」
害骨「みんながみんな、危険人物というわけじゃありませんよ。私のように細々研究に打ち込んでいる者が大半です」
デガラシ「もう少し地上での出来事を、気にしてくれたらいいのに」
害骨「そこは……良くも悪くも、研究熱心なんですなぁ。回りが見えなくて」
デガラシ「害骨さん、この施設に船もあるそうですが」
害骨「いやぁ……考えたこともなかったです」
「とすると、知らないんですね」
「船、ええと……」 近くの研究員がつぶやく。そのとき、トランシーバーが受信した。
「こちらレッドパス。 全員、Zブロックへ集まれ。全員、Zブロックへ集まれ。繰り返す。こちらレッドパス。至急全員、Zブロックへ向かえ」
害骨「Zブロック……どこでしょう?」
刃沼「あんた何も知らないんだね」
デガラシ「少し遠いですね、ここからでは」
デガラシは渡された見取り図のコピーを出した。そばにいるブレークタイム中の研究員が話しかける。
「ありゃ、その地図じゃあ分かりずらいでしょう」
コンピュータを操作し、もっと詳細かつ見やすい地図を表示させる。
「印刷する?」
「ええ、お願いします!」
デガラシは応答する。カラーで主要経路のはっきりした地図を頂いた。そしてさらに教えられる。
「思い出したんだけど、Zブロックにも船があったなぁ。船というか小形潜水艦? でも今もあるのかなぁ」
◆Zブロック
Aチーム。
ツミキ「Zブロック……って、僕たちがいる所ですよね?」
生徒「きっと首謀者がいるんだ、一気に叩こうぜ」
「そしてすぐに脱出だ」
トランシーバーからデガラシの声が聞こえる。
「こちらCチームです。Zブロックには船もあるそうです。この施設の人から聞きました」
生徒たちがどよめきたつ。
「おおーっ」、「行こうぜ!」
タコヤマが静止する。
「待て! 待て待て。ここからは敵と戦うことになる。だったら、他のチームと合流するまで待っていた方が」
生徒「そもそもチーム分けをしたのが悪いんだ!」
「みんなまとめてくりゃ、こんなことにならずにすんだのに」
「まとまってたら一網打尽にされてたかもしれねえだろ」
タコヤマ「もうすぐなんだ。……もうすぐ。堪忍してくれ。な」
◆Zブロック 別方面
Bチーム。
ヘレネー「…………(研究員が誰もいない。嫌な予感がする)」
ホープ「ヘレネーさん、どうしたんですか? 先に進みましょうよ」
ヘレネー「ここで待っていた方が――」
生徒「なんでこんなところに」。「突然なに怖気づいてるんだ?」。
生徒「じっとしてたら、敵の餌食だろうが。もうおれ、やだよ。化け物に襲われるの待つのは」
生徒数人が先を歩いて行った。仕方なくヘレネー達も歩き出す。
◆?ブロック 迷路
Dチーム。
レッドパス「しまった、な」
レッドパスは突然開いた穴に落ちて、迷路の中にいた。
レッドパス「こっちか?」
勘を頼りに歩き出す。
◆Zブロック 大研究室
???「ヘレネー……」
そう呼びかけた高齢の男が目の前にいた。
ホープ「あなたは確か……、うぐッ」
男は銃のような器具を取り出し、ホープに向けた。発砲はしていない。音も光もない。なのに、ホープはうずくまり、苦しそうだ。
ヘレネー「や、やめろ!」
男は素直に従い、止めた。ホープはすでに気絶していた。他の生徒たちは、怒るでもなく、戸惑いの表情を浮かべていた。
ヘレネー「本当にあんたなのか?」
「……」
「答えろよ、おい。今まで化け物を作り、襲わせた奴。それは本当に、あんたなのか……?」
◆迷路
レッドパス「参った。さっぱり出口が分からん。――おい?」
曲がり角に、見知った顔の者がいた。
「ああっ、レッドパスちゃん!」
「おばちゃん、なんでここにいる?」
民宿ずんだらのおばちゃんだった。
「助けにきたんだよ。レッドパスちゃん、出口、分からないだろ? あんたが落ちたのが見えてさ、私も追いかけたんだけど、どこでどう間違ったのかね、今まで全然会わないんだわ」
「出口を、知っているのか?」
「ついて来な」
◆Zブロック Aチーム。
タコヤマ「すでに他のチームが戦ってるぞ!!」
タコヤマは響く物音で、そう判断した。
タコヤマ「みんな、突撃ーッ!」
なだれこむように奥へ入った。しばらく進んだところで、後方から悲鳴が。落とし穴だ。そして穴の中は無数の槍が上を向いていた。
タコヤマ「俺が通ったときには落ちなかったのに……なぜだ!?」
穴の中で呻く生徒たち数人。出血が激しい。
「ヒロシ! ……今、楽にしてやるかな」
生徒の一人が、銃を向ける。ヒロシと云われた生徒は、驚きと恐怖の表情をしたが、その後、肯いた。何度が撃ちこまれ息絶えた。ヒロシ以外はもう意識はない。ヒロシを絶命させた生徒はしゃがみ込み静かに泣いていた。タコヤマ達はその場で立ち尽くし、もう先へ進むことはなかった。
◆Zブロック 上
刃沼たちは、下からの悲鳴を聞いた。
害骨「やっぱり、上に来過ぎたんですよ。下です。下です」
刃沼「そんなこと分かってるけどさ! どう行くの!」
デガラシ「いっそのこと、敵の上方からの狙撃、というのはどうです?」
刃沼「うん、それがいい。そうしよう」
◆迷路 出口
「あいよ!」
「おばちゃん、感謝する」
「気ぃつけてな!」
レッドパスは迷路を脱出した。急いでZブロックへ駆ける。
◆Zブロック 大研究室
Bチーム
ヘレネー「うううぅ。仕方ねえ。撃つぞ」
敵となった男に、ヘレネーはサブマシンガンで撃つ。男は無言で倒れた。ヘレネーが少し近づいて、問うた。
「なんでなんだ、平兵衛先生……! あんた、生徒を軽んずる奴じゃなかったろ?」
平兵衛「…………ヘレネー、ワシは元から、そうだったんだよ」
銃声がして、ヘレネーの足が撃たれる。倒れる。
「なん、でだ……」
平兵衛の両手は素手だった。銃などどこにも持っていない。そして周囲を見回しても、銃口がこちらを狙っている様子はない。確かに目の前の平兵衛から、銃弾が飛んできた。
「そう、ワシは元から、そういう人間だったのだ」
平兵衛の膝頭という意外な所から、銃口が伸びていた。
生徒「義足だ! 銃を義足に改造したんだ」
生徒「何してる! 撃つんだ!」
生徒「いや駄目だ。ヘレネーに当たる」
平兵衛は立ち上がる。ボロボロになった上着を取っ払うと、金属質で覆われた身体が露になった。そして奥の方へ去っていった。




