第2節 「既定」
◆学校 朝
刃沼は朝の出来事を、友人のデガラシに話した。
デガラシ「そういえば最近は、そういう人が増えているような……感じです」
刃沼「そうなの?」
「新聞やニュースで報じられるのを見ると、そう思います」
「ふーん……」
「気をつけてくださいよ。この辺りでも、治安が悪くなってきています。いつ、犯罪に巻き込まれるか分かりませんよ」
――ここで二人の外見的特徴に触れる。一応。
刃沼 ◆ 黒髪を目深に伸ばし、そのセミロングな髪の向こうに、どす黒く赤い瞳が見えるのが、刃沼。背はデガラシより低い。
デガラシ ◆ いつも青いジャージ姿なのが、デガラシ。学生服よりジャージの方が良いと云う。他に特徴としては、色白な皮膚、淡い紫がかった頭髪、コバルトブルーの瞳。
これくらいあれば、誰が誰だが識別する手がかりにはなったと思う。
◆学校
教師「今度の修学旅行は、流離島という孤島に行くことにした」
修学旅行について、話をしている。しかし、一方的なものだった。
「旅行先は学生が決めるんじゃないんですか?」
「ハワイ行きたい!!」
「ゴルゴタの丘!!」
生徒たちは不満を、騒がしく鳴らした。
「もう決まったんだ」
その教師の声は、生徒たちの騒がしさに かき消えた。教師はさして動じず、いつも通り拡声器を取り出す。そして必要要件のみ淡々と語る。
教師(拡声器)「旅行先は流離島。当日の予定や準備などは、これから配布するプリントを確認しなさい。旅行については、これで以上」
相変わらず、生徒たちは賑やかに喧騒している。教師はいつのまにか授業を始めていた。またも拡声器の大音量がガンガン響く。拡声器と生徒の喧騒で、その日もまた、うるさい一日だった。
刃沼(うるさくて、気持ち悪い。頭がガンガンする……)
◆学校 放課後
刃沼「学校に行くの、やめようかな。うるさくて頭痛がして、気持ち悪くなってくる」
デガラシ「ええっ! じゃあ修学旅行も行かないんですか!?」
「別に行きたくはないよ」
「一生に一度の経験ですし、行きましょうよ! あとで後悔しますよ」
「ふぅん……」