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母親にゲームソフトを捨てられて、さらに勇者をやることになったんだけど。

連載始めました、更新はゆっくりになると思いますがよろしくお願いします。


この話には挿絵あります。

 私は現在、お母さんの前に立ち……産まれてから何度目かになる、心の底からの怒りの炎を燃やしていた。

 お母さんが引き篭もりニートの私にやってはならない事をやってしまったからだ…!


 ああぁ…私の大切な人達が居る世界があんな事に…ぐすっ。

 大きめのメンズTシャツを着ている私は、あまり動くと下着が見えてしまうが…そんな事を気にせずに手をぎゅっと握り締めて、お母さんに抗議した。

 セミロングの私のピンク色の髪が、揺れる。


「お母さんのばかぁ~、私のゲームソフトを捨てるなんてこの鬼畜外道~!」


挿絵(By みてみん)


 私が居間でテレビ放送している映画を見終わって、自分の部屋に映画の余韻に浸りながら帰ってきたら……私の大切なゲームソフトが全部無くなっていたのだ。

 そう…全部だ!

 鍵付きの引き出しに入れて置いた、お気に入りのソフトもぜーんぶ捨ててしまったらしい。

 僅か2時間ちょっと部屋に居なかった、私の隙を突いての早業だ。


「馬鹿はあんたよ!あんたが就職もせずに毎日毎日画面の中の男を見てニヤニヤしてるから、これじゃダメだと思って、あんたの持っているゲームソフトを全部捨ててあげたのよ。捨てたゲームを買い直したいなら、働きなさい!」


 子供を二人も産んでいるとは思えないほどすごく若く見えるエプロン姿のお母さんは、ビシっと私に指を差した。

 お母さんの見た目が女子高生と言っても、違和感が無いのでたまに一緒に歩いているお父さんが……お母さんのお父さんだと勘違いされる。

 今も客観的に私とお母さんを見たら、姉妹喧嘩をしているみたいに見える筈だ。


「うぐぐっ。」


 確かにお母さんとお父さんが働いたお金で買った、恋愛ゲームを毎日してたけどさ……捨てる事は無いよねぇ?勝手に部屋に入って来て、人の物を捨てるとか……これじゃあ、何時私の物が捨てられるか怖くてもう部屋から出れなくなるよぉ!?トイレにも行けなくて、困る!


「こ、ここに外道がいるぅ!?ああああぁあ、私の大切な人がががががが…。…って、あれっ?おかしいなぁ…お気に入りはちゃんと鍵付きの引き出しに入れて置いたのにどうして?」


 私は不思議そうに首を傾げて、新妻臭のするお母さんを見る。

 スタイル抜群のお母さんはどうみても、子供が居るとは思えないけど……。


 へへ、私の若くて清純そうなお母さん…こう見えて、二人も産んでいるんだぜ…と心の中でゲスな呟きをする。

 口にして言ったら、今度はマンガも捨てられそうなので言わないでおこう…。


 ちなみに私のお母さんの清純成分は全部お姉ちゃんに持っていかれたので、私はゲス成分の塊だ。

 だからお姉ちゃんはウブなので私が下ネタを言うと、顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうに上目遣いで私をじっと見てくる。下ネタに少し興味があるけど…恥ずかしいと言う感じに思っているのかもしれない。そんな感じの私のお姉ちゃんだ。


「それならほら、手先の器用なあんたのお姉ちゃんにぱぱっとロックを解除して貰ったのよ。あんたを真人間に戻すって言ったら、喜んで協力してくれたわよ。姉妹想いの良いお姉ちゃんじゃない♪」


 お、お姉ちゃんは、なんと言う事をしてくれたのでしょう。清純100パーセントだと思っていたら、見た目に反してそんな特技があったなんて……!?


「うがぁ~裏切ったなぁお姉ちゃん!この前、風呂場にあった携帯を勝手に操作して、お姉ちゃんの彼氏に私の考えた最強のラブメールを送ったのをまだ根に持っていたのね!良かったじゃん、彼氏からもラブラブなメールが帰ってきたしさ!彼氏とはマンネリになって、どうしようって言ってたのに感謝される筈なのに何でこんな復讐みたいな事するのお姉ちゃん!リア充爆発しろよぉ!」


 あんなウブなお姉ちゃんにも彼氏がいるのだ…。

 私?ああぁ…私はほら?彼氏達は画面の中に居るからさ……彼らと同じ次元に行かないと彼らと触れ合えないの。

 これは彼らと私の遠距離恋愛みたいなもの……だから、悔しくないんだからぁ。


 それと、お姉ちゃんは週末に彼氏を家に連れてくるのだけは勘弁してください!

 隣の部屋の私に薄い壁越しから聞こえる、彼氏と彼女のとても甘い会話が駄々漏れです。

 隣から、初めてだからって言うお姉ちゃんの聞いた事の無い甘い声もまる聞こえだし。

 分かった優しくするねって言う、彼氏の声も聞こえる。

 さらに時間がたって、ちょっと隣の部屋のベッドのギシギシと軋む音がうるさい!


 あの二人には気がついて欲しい…隣の部屋には年齢=彼氏無しの、ゲームもしないでベッドを被って会話が聞こえないようにして恋人時間の二人に配慮している重病人が居る事を…。


 自分で言うのも恥ずかしいので、言わないで気がつくのを待っていたら……あたの二人は全然気がつかなかった。

 毎週毎週、隣の部屋からお姉ちゃんの高い声が私の部屋に響いてくるので寝れない!

 お姉ちゃん!清純そうな見た目なのにお盛んですね!

 もう、我慢できないですよ私。


 そうだ!良い事思いついた…次にお姉ちゃんと彼氏が部屋でラブラブしてたら、私が彼氏の代わりに隣の部屋から壁ドンしてやろうか!壁ドンだよぉ!カベ・ドン!


 ドン!ドン!ドン!ってな感じでね♪


 きっとお姉ちゃんは顔を真っ赤にして、泣いて喜んでくれる筈♪

 ふひひ、引き出しの鍵のロックを解除したお返しだよぉ~お姉ちゃん。

 楽しみだなぁ…。


 唇の端が自然と吊りあがっていくのを感じる。


 悪巧みをしている私を呆れた顔で見つめるお母さん。

 おっとと、私って顔に思っている事がすぐにでる体質だからさ……すぐ悪い事考えてるのが他の人にバレちゃうみたいなんだよねぇ~。


「そんな事ばかりしてるからお姉ちゃんが、あんたを怒るのを学習しなさいよ……。そう言う事だから、あんたには今後お小遣いはあげません!ゲームを買いたいなら働きなさい、分かった!じゃないと大変な事になるわよ?」


 大変な事?そんな脅しには屈しないのが私だよぉ!

 それよりもお小遣い無しの方が、私には大変重要な話なんですけど?

 収入源がお小遣いだけの私には、死活問題だ。

 手持ちのお金が足りなくて、当てにしてたお小遣いが無いとなると…。


 私の命を人質にするしかないって事ね!


「全然分かりません!お小遣い無し?そんな事、納得するわけないよぉ!もうすぐ、新作のゲームが出るのにぃ!このままじゃ、お金足りなくて買えないよぉ!うぐぐぐぅ。お母さんがお小遣いくれるまで、自分の部屋に引き篭もってやるんだからぁ!それで私を餓死させたくなかったら、お母さんにお小遣いを要求する!これは命を張った要求なのよぉ!」


 自分の心臓のあたりに手を置いて、潤ませた私の瞳でじっとお母さんの目を見る。

 悲劇のヒロインっぽく見えるようにするのがポイントだ。

 学生時代にみんなに言われていたのが…見た目だけはすごく良いよね、でも中身はちょっと無いわーと言われていたのが引き篭もりニートのこの私です。

 その私がずぶ濡れになった子犬の如く助けたくなるオーラを放てば、お母さんなんてイチコロよぉ!

 私の中身はアレだけど、見た目は超絶美人のお母さん似に産んでくれた事は感謝してるけど……。


 お母さんと私の地毛の色が、ピンクなんだよねぇ……。

 どこのゲームのヒロインだよってな感じで地毛がピンク。

 それで、お姉ちゃんもお母さん似なんだけど地毛が黒なのよ。

 学校行っていた頃は、お姉ちゃんは髪が黒くて良いなぁ~って思ってた。

 地毛がピンクの髪なんて、現実世界に私とお母さん以外にいないじゃん?

 だから、学生時代は染めないと何か苛められそうで怖かった。


 と言うか……どこ出身よ、地毛がピンクの私のお母さん?

 普通に日本語ペラペラなんだけど……日本育ちなのかなぁ。

 あれっ?そういえば私、お母さんの実家に行った事……無い!?


「こんだけ言っても働いてくれないの……もう、呆れてものも言えないわ。でもねコレだけは覚えておいて、あんたを産んだ事だけは後悔はしてないからね。じゃあ、頑張ってね!」


 まるでお別れの挨拶をするみたいな事、言ってるんですけどお母さんが…。

 それは何かのフラグなのかな?

 やだなぁ、お母さん……そんな真面目な顔で、今から敵地に特攻する戦士を見るような目で私を見てるし。そんな目で見つめられると、何か起こりそうで怖くて今すぐこの場所から逃げたくなるんですけどぉ?


 さらに私が普段家から出ないから、必然的に透き通るようになった白い肌に鳥肌が立っていた。

 本能がここから逃げろと私に警告しているみたい。

 まじで、ここから今すぐお母さんを押し退けてでも逃げたくて堪らない。

 私…こんな気持ち初めて…。


「お母さん何を……ってこの足元の光は!?魔法陣だとぉ!ファンタジーが現実にやってきたぁ!?ひ~っ、助けておかあさぁ~ん!」


 私の足元に魔法陣みたいなのがあるんですけどぉーー!?

 それに青白いバリアが私の周りに張ってあって逃げられない。

 万事休すな状況に思わず、お母さんに助けを求めてる。


「大変な事になるって言ったわよね?実はお母さんわね……異世界人なのよ。故郷の世界が魔王が現れて、元上司が勇者を寄越せと煩くてね…。それでどうしようかなって思っていたら…まさか、勇者が実の娘とは驚いたわよ。でも実の娘をさすがにいけに…異世界に送るのはちょっと…ねぇ?」


 地毛がピンクの真実が今ココに!?

 私のお母さんは、異世界出身なの良いでしょ?って 友達に自慢できるね。

 まあ、居ないけどね友達…。

 それよりもこの足元で発光してるアレは、ラノベで呼んだ事のある……勇者召還するヤツなのね!

 えい、えい、駄目みたい…。この魔法陣の文字らしき部分を脚で擦っても消えない……さすがファンタジー、逃亡対策バッチリだね!

 ……なんで引き篭もりニートの私が、こんな事になっているの?


「い、今!生贄って言おうとしたでしょ~!ちゃんと聞いてたんだからねぇ!で、何で実の娘の私を異世界に送るのよぉ~?実の娘ならお姉ちゃんが居るでしょ!?そっちを送ってよぉ~。ついでにお姉ちゃんの彼氏も巻き添えにしてさぁ。引き篭もりの私を送っても、魔王なんて無理ゲーじゃん!」


 リア充のあの二人を送ったほうが、まだ私よりも魔王討伐する確立が上がると思うんだけど…割りと真面目な話。二人とも真面目そうだし、ちゃんと魔王を討伐してくれそう。

 私は城に召還されたら、なんだかんだで城に引き篭もるかなぁ……。

 魔王討伐はどうするんだって?

 城に引き篭もって居れば、魔王の方から来るんじゃない?

 私は戦いたくないから、その時は城の兵士さんに頑張って頂くけどね。


「お姉ちゃんは、あんたと違ってちゃんと働いているからこんな事をしてる暇は無いのよ。だから暇してるあんたを送ったほうが、良いに決まっているでしょ?魔王?大丈夫よなんとかなるわよ!あんたは私の娘なんだから、勇者に就職してもやっていけるわよ。」


 就職してるか、してないかの差か…。

 職歴なしって辛いね。

 これを就職って言えるのかは置いといて、お母さんの娘だから魔王討伐できるとか……お母さんは魔王を軽く見すぎてるのは、分かったよ…。

 引き篭もりニートが魔王を倒せるなんて、創作の世界だけだよお母さん?

 それに私にはまだ……この世界に遣り残したことがあるの。

 それが終わるまで、行きたくないよぉ…。


「ううううっ、そんなぁ~。もうすぐ発売する新作ゲームをしたかったよぉ。えいっ!えいっ!こんにゃろ~!あっ……このバリアみたいなのにヒビが入った。」


 試しにバリアを殴って見たら、ヒビが入った。

 へー、見た目は頑丈そうなのに案外脆いんだねこのバリア。


「えっ!?この子、転送陣の結界にヒビいれてるの!?嘘でしょ、こんなの初めて見たわ…。あっ、ちょっと止めなさい!そんなに叩いたら結界が壊れちゃうでしょ!それに出現座標が狂ってしまうわ!?」


 止めるなんて、出来るわけがない。

 今を逃せば、私は異世界に飛ばされてしまうのだから。


 ピシッ。ピシッ。


 やったぁ、バリアがもうすくで壊れそう。

 やぁ、たぁ、とぉ、必殺の駄々っ子パンチ!


「異世界なんて行きたくないよぉ!勇者なんてやだぁ!お部屋に引き篭もるのぉ!」


 このバリア、壊したら……お部屋に引き篭もるんだ私。


「そんな事したら、本当に転送陣が壊れてあっちの世界のどこに出るか分からないわよって……あっ。」


 足元から段々と私の身体が透けてきた……。


「わわっ、私の身体が透けて……。」


 なんだか……目の前が暗い。

 それにお母さんの声が…遠くから聞こえるような感じがする。

 お母さん…どこに居るの?

 何も見えない…でも声は聞こえる。


「と、とりあえず魔王を倒せば、後は日本に帰ろうがあっちの世界で英雄として暮らそうが自由だから。あんたは、それまで日本に帰って来れないと思いなさい。良いわね?」


 パソコンの無い、異世界になんて……長く居たく無いよぉ。

 魔王討伐なんて、めんどくさい……。

 でも、日本に帰りたいなぁ。


「良いわけ無いよぉーーーー……。」


 意識が…もう…。

 ……

 …


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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