何か言いましたか?
「うわああああ!」
ぬっと目の前にヒゲのおっさんの顔が!気が滅入る!二度寝しようか!
「おはようですぞシゲマル殿」
王様かい!もうちょっとマシな登場できないんか!
「お、おはようございます…今何時ですか?」
時計がどこかにいってしまって時間がわからない。
「今は朝の6時30分です、ミレアは起きてご飯を食べていますぞ」
ミレアのご飯食べる姿!萌え要素!ハプニング!
「ご飯食べてきまーす」
突撃、王女の朝ごはん!
「おはようごじゃいまふちげまるちゃま」
なんだこれは!萌え要素もクソもねえ!ご飯粒とご飯粒とご飯粒しかねえ!
「おはよう、口の周りにたっくさんご飯粒ついてるぞ」
「ほーでふか!うっかりひてまひた」
喋り方は萌えるな…なんて言ってる場合じゃないよな。朝ごはん食べないと…
「で、これはなんですか?」
高級な皿に乗っているのは、焦げた蛙のような物体。
「もしかして蛙じゃありませんよね?」
「蛙ですぞ、蛙の丸焼き」
今の時代蛙なんて食うのか?僕の家だけ古風な感じになってないか?
「た、食べられるんですか?」
丁寧に丸焦げになった可哀想な蛙を見ながら聞く。
「当たり前ですぞ、カルシウムも豊富に取れるし」確かにそれは聞いたことがある。だが蛙を食べたミレアの食後を観察すると、明らかに食ってはいけないように見えますな。
「おとうさーん…漏らしちゃった…」
くせえ。○○○の臭いだったのか…
「またやっちゃったのかミレア、そろそろオムツは卒業しないとだぞ」
あんたらは食事中の人に迷惑がかかるとか考えないのか…僕の頭の中は既にウ○コにまみれておりますのに。
「王様、電話が鳴ってますよ」
うちにある固定電話が鳴っている。特徴的な音だからわかりやすい。
「はいもしもし、キラーです」
その自己紹介はやめなさいよ、僕の苗字キラーじゃないから。
「そうですかわかりましたそれではさよなら」
なんかほとんど王様が喋りっぱなしで電話は終わった。どうせろくな内容話してないだろうな。
「シゲマル殿、討伐の依頼が来ました」
あら、珍しく真面目な話題じゃない。おほほほほ。
「地中に埋まっているらしいです、巨大なモグラが」
「いやそれをどうやって倒せと」
「出てきたところをズバッと」
「もう王様はあてにしません」
この親子は説明が下手というかテキトーというかとにかくわかりにくい。ズバッとやんないとだめらしいっすよ皆さん。
「逝ってきまーす」
よくわからんアドバイスのせいで本当に逝くかもしれないなあ…
「待ってくださいシゲマル様〜!王女ミレアもついていきます〜!あぁお尻にまだ茶色い物体が」
「黙ってついてきなさい」
下ネタで調子が狂うところだった、あぶないあぶない。
「モグラが出るのはどこらへんなんだ?」
「ここら辺じゃないでしょうか」
曖昧なのか正確なのかは本人にもわからないことだろうが、もしもここが本当にそうなら少し恐い。いきなり出てこられても太刀打ちできないぞ。
その数秒後に地面が揺れだした。最初は地震でもきたのかと思ったが、地面にヒビが入りだした頃にやっとわかった。
下から来る!
「シゲマル様、下から来ますよ」
「わかっておるから」
背後で、大きな音がした。砕けたコンクリートの欠片が落ちてきた。
「巨大モグラのおでましか」
体長は軽く5メートルはありそうだ。まともに戦って勝てる相手じゃない。どうする…?
「シゲマル様、今回私はアドバイスができません」急に気弱になったミレアに驚く。それもそのはずだ、モグラが出現してからずっと震えているから。
そうか、勇者はここで王女を護るべきなのだな。婚約者の王女を、自分の体を張ってでも護らねばならない。
「ミレア、お前は後ろに下がってろ。ていやー!一発で倒してやる!」
かっこいいところを見せたい。一撃で倒せばどれだけかっこいいか…
「そんなものが効くわけないだろう」
モグラが突然しゃべりだした。僕のキラーソードはモグラの片手に受け止められ、パキンと軽く折られてしまった。
「剣が…どうすれば…」
あれこれ考えている暇はなく、モグラのカウンターが次々とくる。
「逃げているだけでは勝てないぞ!」
だんだんと後ろへ追い詰められていく。ミレアのいる場所へ、こいつを連れて行くわけにはいかない。
「こっちだ!」
方向を素早く変え、僕は武器屋に走った。金はあるから武器の一つや二つくらいは買えるはずだ。
「武器屋!キラーソードを売ってくれっていねえし」
閑散としている。店員の一人もいない。これじゃソードが買えない…
「隠れているのはわかっているぞぉ!」
ぱかっと屋根を取ってしまったモグラが攻撃を仕掛けてくる。武器屋はボロボロだがこの際仕方ない、剣を一つ借りていこう。
「うわあああっ」
屋根が取られたせいで家屋のバランスが崩れ武器屋が崩壊した。瓦礫に埋まりながら僕は一本の剣を掴み、地上に這い上がった。
「モグラめ、くらえ!」
ザクッ…と刺したはずだったが、思いの外音がない。それどころか刺した感触もない。
ドロドロだしなんか臭いし…まさかこれって…
「武器屋おすすめのウ○コソードじゃねえか!最悪!」
今のところ一番攻撃力が低い剣だろう。先っぽドロドロ、茶色い刃。斬れ味なんてものはなかったと言いたげなこのどうしようもない剣。
「くせえええええええ!なんじゃこれは!」
意外と、モグラには効果てきめんだったようだ。すっごい臭がってる。確かに、くっせ。
「はっはっは僕の勝ちだくさっ」
「くそー負けたくさっ」
勝負もなにもあったもんじゃない。ウ○コまみれのままミレアのところには行けないからそこらへんで体を洗っておこう。
「こちら銭湯です、金を出してねー払わなかったら死刑」
銭湯選び間違えた、死刑とかいうサービスいらんから。
「モグラさんはこっちね」
「あんたなんで入ってきてんの、モグラ用の風呂なんてないよ、ねぇ銭湯の人?」
銭湯の人はニヤついている。今から銭湯の常識が覆るぜみたいな感じで。
「実はあったりするのさ、巨大モグラ用」
お前ら打ち合わせしてただろ…なんとなくで巨大モグラの風呂作るかよ…
「あぁ〜いい湯だ〜」
「あれ、その声はシゲマル様ですか?」
女湯からミレアの声が聞こえた。なにしてんだあいつ。
「なんで風呂にいるの?」
「シゲマル様がなかなか来ないので暇つぶしにと」
僕がモグラと頑張って戦ってた時にこいつは風呂に入ってたってことか、ちくしょう。
「ってことは今ミレアは裸…」
「何か言いましたか?」
「なんでもない」
いかんいかん、男の煮えたぎる性欲が暴発しそうになった。
「そろそろ出ますね、シゲマル様が出るの待ってます」
なんと偉い子だ。僕の嫁は素晴らしいお方だと改めて思った。
「シゲマル様のコーラを買って待ってますね、あとでシゲマル様には一気飲みしてもらいますので♡」
一気に風呂から出る気が失せた。なんでだろーなー。
僕炭酸飲めないって知ってるのかなあ。