#05 Don't think feel
あわててUCの後を追って、1Fのスタジオに降りたkumiだが寸前のところでその扉はしまってしまった。しばらくの間そこで立ちすくんでいたが決心してその扉を開けるとギターを抱え、シンセサイザーの前で曲をアレンジしているUCの姿が見えた。
「ワリィな…見ての通り、今最大級の取り込み中だ…話ならまた今度にしてくれないか?」
後ろを振り返らず、そう告げられると悔しさと哀しさでkumiの瞳から涙が止めどなく流れ、両手で覆っても押さえ込むことは無理だった。
「もう…私の知っているUCじゃないんだね…」
震える声で訪ねたkumiに
「だろうな…あれから何年が過ぎて、その間、オレに何があったのかさえお前は知らないだろうし、今はshinとも上手くいってないかもしれないが、お前らが幸せだった時間だってあったんだろう?過去を大切にできないヤツほど、むやみに前を向きたがるんだ。とにかくお前の頼みを聞いてる暇がないんだ…美咲さんから頼まれたscandalで オレは精一杯だし、力になれなくてワリィな」
と表情すら変えず再びモニターへと集中するUCの後ろ姿にkumiはいよいよ本格的に "これ以上は…もう…"と諦めるしかない現実を意識し始めた。
こぼれ堕ちる涙を拭い、力なくドアに手を掛け
「ゴメン…勝手に押し掛けるような真似しちゃって、明日もう帰るから……UCは昔から曲作りの邪魔されるのが一番嫌いだったのにね…ずいぶん時間経っちゃっていたから忘れてたょ」
そう告げると静かに、そのドアを閉めた。
モニターに映る踊る音符に目をやりながらUCは深呼吸のような深い溜め息をついて
"まったく……これだからな……女ってのは、とにもかくにも勝手な生き物だ…これでオレが手貸さなければ、ただの冷たい人になるんだろうな…" と少しだけ笑うと完成したばかりの曲をCDに落とす。モニターに "finish!" と文字が点滅すると
「ほんと…オレも甘いよな?」
そう言って非情になりきれない自分に笑うしかなかった。