とりあえず単純な条件で2
さて前回の続きです。
魔法が全てを握るこの世界ではどのような軍隊が生まれ、どのような戦争が展開されるのでしょうか。
軍隊の主力はやはり魔法使いでしょう。圧倒的な破壊力の攻撃魔法があらゆる敵を薙ぎ倒し、打ち砕きます。
しかし相手の魔法使いもそれを黙ってみている理由はありません。対抗して防御魔法や無力化魔法を駆使しはじめます。
そしてその繰り返しが魔法使い同士の戦いになるでしょう。
そうなってくるとお互いに手詰まりになっていきますが、打開する方法としては三つです。
つまり、より強力な魔法を習得する、より多くの魔法使いを揃える、魔法使い以外の戦力を整備する、です。
前者二つは言うまでも無いでしょうか。魔法が多く、強い方が有利に決まっています。
魔法使い以外の戦力ですが、これは普通の人間だけが対象ではありません。馬や犬、牛、鳥、或いは狼やライオンのような野獣も対象となります。者によれば樹木さえも対象となるでしょう。
これらを魔法で強化し操る事で戦力となすのです。傷ついても後退せず、文字通り死ぬまで戦い続ける操り人形です。消耗品の如くに使い潰される存在です。
死んだところでこの世界では神たる魔法使いに服従するだけの存在ですし、幾らでも増やすことは出来ます。
もう一つ考えなければならないのは武器の存在です。
この世界では武器や防具の発展は見られないと思われます。あらゆる物事を可能にする魔法使い達は今更剣も盾も必要としないでしょうし、支配される平民達の戦闘力を上げたり傷つかない様に気を使ったりすることもまた無いでしょう。そんな事に手間暇掛けるくらいならもっと沢山兵隊を作り出せばいいのです。
もしかしたら、駒を飾り立てたがる特殊な嗜好の魔法使いが兵を武装させるかもしれませんが、極限られたケースでしょう。
戦争は現実世界よりも遥かに悲惨なものとなりますが、何よりも恐ろしいのは戦争が社会を構成する人々全員の利益の為ではなく、極一部の上層部の為だけの戦争となるこどです。
指導者たちが諦めるか満足するまで誰も止めることは出来ないのです。
そして繰り返される戦争が魔法使いたちの娯楽となるのも時間の問題でしょう。なんと言っても彼ら自身が傷付くことは決して無いのですから。
魔法使いの世界では戦争は悲惨ですが、対照的に文化面は大いに発展すると思われます。
魔法使い達は絶対的な存在です。労働をすることもなく、反乱に悩まされることもなく、治癒魔法により命の危険すらありません。現実世界の古代ギリシア市民より遥かに人生に余裕がある存在です。
常軌を逸している程に余裕のある魔法使い達は娯楽と化した戦争に興じるか、その超常的な能力を駆使して芸術を楽しむか、好き放題です。
更に魔法使いの世界は巨大な都市国家が無数に林立する世界です。それぞれの国で芸術が興隆し、そして他の国と交流する。
互いに影響を与え合い、高め合う魔法使い達の芸術がどれ程の偉大な作品を残すかは想像も出来ません。
但し哲学だけは発展はしないのでは無いでしょうか。彼らは自身の存在に疑問も何も微塵も持たないでしょう。文字通り地上の神として君臨する魔法使いの心の中に自己の存在の追及など果たして芽生えるのでしょうか。
最後に経済に関してですが、この魔法使い世界では非常に早い段階から貨幣経済へ移行するでしょう。
都市単位で分かれる彼らの世界は他者との交流が早い段階から生まれます。加えて遠く離れた都市とも転移魔法で容易に接触できる為にその交流は加速度的に広まっていくでしょう。
但し、貨幣経済と言っても流通するのは貴金属ではなく、もっと魔法的な何かだと思われます。貴金属は魔法で作れる上に自然に存在する以上、彼らにとっては貴重な物質ではなくなるでしょう。
もしかすると前述の魔法で創り出した芸術品が貴重な価値ある品として貨幣代わりに用いられるかも知れませんね。
最終的にはこの世界は魔法使い達が神として君臨する爛熟し腐敗しきった世界となるでしょう。魔法の使い過ぎで異常気象や地震などの災害で滅びるか、より強力な魔法を身に付けて更なる発展を迎えるかは分かりません。
という訳で今回の条件ではこんな感じになると思います。何て夢が無い、と思われるかも知れませんがまあ唯の妄想なのでこんなもんでしょう。
次回はまた別の条件で考えてみたいと思います。(思いついたら)