決意
夜を越して昼。2人と2匹はついに東京都に入る。すでに高速を降り、目的地へと向かっている。しかし、東京に入ってから時々爆発音や激しい金属同士の衝突音などの戦闘音が遠くから聞こえてくる。
さきほども、他のプレイヤー同士の争いに巻き込まれそうになり、身を隠していたところだ。
二人はここに来る前に1人敵を殺している。あの車に乗った変なファンキー野郎だ。あいつから手に入れたアイテムはいつも通り、ポーションと造血剤、それにあの鉤爪だがそれはあまりに使いづらいと判断したのかファンキーが使っていたのを使いたくないのか、すぐに捨てていた。
大通りは戦場と化している可能性が高いため、裏通りを通る。普段ならDQNたちがたむろしているだろうから都会の裏道なんてまともな人間は通らないだろう。今はプレイヤーだらけ、しかも地味にタイムリミットまであと2時間。目的地でなければこんなところに来ることはないだろう。
「あと5kmくらいでつくよ!」
上条が嬉しそうに言う。それもそのはずだ。
夜はテキトーな古い店に不法侵入して睡眠をとった。しかし、あまりに古いところだったので、基本的に女性が嫌いな虫が大量発生した。それは上条も例外ではなく、朝起きたときには目の下に隈が出来ていた。更に電気が通っていないので昨日は体を全て水で洗っていた。服を着て脱衣所から出てきたときはガタガタ震えていて、真っ先に布団に潜り込んでいた。
「まぁ・・・嬉しいよな・・・・・」
「うん!」
神崎の言葉に元気よく返事をする。
一方、ドラゴン2匹は体が濡れても身震いで水を飛ばすし、体毛のおかげで寒さには強いのでなんとも思っていないのだろう。虫は鬱陶しそうに前足ではらっていた。
「着くけど、大通りを通らないといけないのよー?」
アルマが重要なところをつく。そう、神崎たちは目的地につくためにはスクランブル交差点、というものを通らなくてはいけない。それは普通の交差点にある横断歩道+四角形の対角線にも横断歩道が引かれている、広い広い道路である。その付近に目的地がある。
「いいか、愛梨。」
神崎が真剣な顔になる。
「ここから先はほぼ100%戦いが起きる。だけど愛梨はその力を絶対に使うな。俺が危険になっても我慢しろ。」
「・・・・・うん」
不服そうだが、一応納得している。
それから神崎はフレイに近づき、彼(?)にしか聞こえない声で囁く。
「動きそうになったらなんとか止めてくれ」
「・・・・・・愛人を危険に晒さないように動けるようになれ
しかし、いざというときは動こう。私に任せよ。」
神崎たちは交差点に着いた。神崎の考えは的中していた。交差点が戦場となっている。
横断歩道なんて見えない。クレーターのような穴や亀裂が大量に出現しているせいで、全て消えてしまっている。
突然、神崎たちが交差点を見るために隠れていたビルの上の階が爆発した。
「きゃぁああああああ!」
上条が驚きと恐怖から悲鳴をあげる。神崎はそんな彼女を無理やり引っ張って、落下してくるガラスの群衆から逃げた。そのためにはスクランブル交差点方面に逃げなくてはいけなく、神崎たちは姿を現してしまった。
そこには神崎たちと同じく男女ペアが1組、もう1つは4人のいわゆる教室の隅っこで固まってそうな男子グループがいた。どちらも大人だ。それぞれ、建物や能力で生成したであろう壁で身を隠し隙を見ては攻撃している。
男女ペアは銃。女の方は二丁拳銃、男はポンプアクション式のショットガンだ。一方のグループはそれぞれの手にボーガンという武器を持っている。
しかしその状況は神崎たちの出現で大きく変わった。共闘の話し合いなどはしていなかったが、どちらも「弱者(子ども)を仕留める」という考えが奇跡的に同時に起きたのだろう。
攻撃の矛先が2人に変わる。
「一瞬でこっちに攻撃対象が変わったけど!?殺気が全部こっちに!?」
神崎は上条の手を握って爆発したビルの対面のビルまで走った。全力疾走。一足駆けるたびに元いた場所には矢が通過する。そしてビルの陰に隠れたところでビルの角が銃弾によって傷つけられた。
「愛梨とお前たちはどこかに隠れろ!俺がなんとかしてくる。」
「待って!無茶だよ!悠ちゃん、死んじゃう!その言葉も完全に死亡フラグだよ!」
半分泣きながら訴える。しかし神崎の意志は固かった。
「大丈夫だ。俺は死なない。これも死亡フラグなんかじゃない。絶対に戻ってくる!」
そういうと神崎は一人で飛び出して行った。
上条は、ドラゴンに導かれるまま姿を隠すべく、ビルへと入っていった。