初プレイ
神崎 悠介は困惑している。
「なんだ?これ。」
夏。現在17歳。学生で学力は低い。スポーツ馬鹿というやつで部活動にも入っていた卓球にばっかり打ち込んでいたせいで、現在焦っている。
そう、学生の関門である、受験を目の前にしているのだ。
勉強を全くしていなかったせいで、私立以外は行けないんじゃないかと危惧しているが、親元を離れて一人暮らしの身であるため、そんな高額な授業料を払って私立に行くことは出来ない。だからといって、国公立に入る頭もない。
(あー、高卒かー。嫌だなー。)
金持ちになりたいとは思っていないが貧困生活は嫌だ。高卒ではその貧困生活に大きく一歩近づいてしまう。それだけは避けたかった。
親からの仕送りとバイトでコツコツ貯めたお金でも、衣食住には困らなかった。しかし、快適かと言われるとそうでもなく、エアコンがついてない部屋なので夏は死にそうに、冬も死にそうになりながら毎日を生きている。
今も窓を全開にして、カラスと蝉の音を耳に受けながら寝そべっている。
そんな時、神崎の玄関のチャイムが鳴った。
普段はほとんど来訪者がいないので基本親からの仕送りを届ける宅急便なのだが、仕送りはつい3日前ほどに受け取ったばかり。無視しようとしたが、なんとなく出てみようと思ったのか、暑さで体力の削れた重い体をゆっくり起し、玄関の鍵を外し、扉を開ける。
「お届けものでーす。」
相手は宅急便だった。はんこを押して受け取る。
差出人は書いていなかった。そして箱は空箱のように軽い。軽く振ってみると、カタカタと鳴る。一応何か入っているようだ。
割れ物注意の札に気づいて急いで振るのをやめ、開封した。
その中には一枚の紙と漆黒の腕輪が入っていた。
「なんだ?」
紙を見てみると、[当選おめでとうございます!!!]という文字が。それだけ。
次に腕輪を取り出す。ただの腕輪のようだ。持ったときは意外とずっしりとしたが今は重さになれたのか、ほとんど持っていることを意識しない。
何も考えずにその腕輪をはめる。やはり何も起こらない。
その時電話がかかってきた。相手は上条 愛梨、神崎の、、、まあそのあれだ、ガールフレンドというやつだ。
「もしもーし」
「ん?」
「悠ちゃん?」
「俺しかいないだろう」
「なんか変な箱と変な腕輪が送られてきたんだけどー」
「えっ」
「どうしたの?」
神崎は動揺した。同じ箱と同じ内容物が他人の家に届くなんてこと普通ないだろう。着けた腕輪を凝視した。
「いや、それうちにも・・・」
そこで電話が落ちた。
「悠ちゃん?」
それに返答する者はいない。
なぜなら、"1分"が経ってしまったから。