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『自分が欲しいものは、決してあきらめちゃだめよ?』
昔からお母さんから言われていた言葉。
その言葉の通りお父さんに一目惚れをして、アタックしてアタックしてアタックしてアタックしてアタックしてアタックしてものにしたお母さんはマジで凄いと思う。
(詳しくは聞かなかったけれども、今でもお父さんとの馴れ初めを語っていたお母さんのあの素晴らしい笑顔が忘れられない・・・)
まぁ何が言いたいかというと・・・
お母さん、私にも人生をかけて欲しい者ができました。
「おいっお前!!今日は俺が莉宇ちゃんと帰る日だろ!?」
「うるせぇなっお前昨日も一緒に帰ってたじゃねぇか!」
「まったく野蛮な言葉使いで莉宇さんの前で怒鳴らないでくれますか?」
「お前、何気に莉宇の肩に手を回すな。シメるぞ」
「もーっ皆さん!七緒が困っちゃってるじゃないですかぁ。帰りましょう?」
ぷりぷりと頬を膨らませながら、栗色のフワフワした髪を風にゆらし幼なじみは何の関係もない私の名前を出して今日も巻き込んだ。
この10人いたら9人が美少女だとこたえるだろう女は、私の生まれた時から幼なじみの氷川 莉宇。
まつげが長くぱっちりと大きな瞳、栗色の髪に吹き出物なんかない白い肌、高くすっとしている小ぶりの鼻に、いかにもキスしたくなるようなピンクの唇。
そんな絶世の美少女は幼稚園の頃から、私にべったりと付いて回っている。
そりゃ昔はお人形のような莉宇を私が守らないとなんて思ったり、皆が仲良くしたがる莉宇の幼なじみだったことが嬉しかったこともある。
だが、
小学校の頃にはすでに莉宇は男にモテるわモテるわで、お姫様状態が確立したのだ。
クラスの男子はもちろん、学校の王子様や、秀才で先輩のイケメン眼鏡、後輩でアイドルみたいな子まで莉宇に夢中になる。
それに面白くないと思うのは、ほかの女の子で。
これで私も美少女であるなら問題がなかった?かもしれないが、私の容姿はまったくの普通であった。
しかもお父さんに似たのか、どちらかといえば凛々しく身長も高い。
そんな私を莉宇は何を思っているのか、気づいているのかは・・・不明だが私を絶対にそばからはなさないで連れ回すので、莉宇に夢中になっている男子からは睨まれ陰では罵倒され、女の子からは無視を決め込まれているという現状だ。
なぜ逃げないのかって?
そりゃ朝から迎えにこられて(莉宇の家は私の隣)、「もう関わんないでくれる?」とはっきり言えば大きな目に涙を溜めて「あたしの事・・・嫌いになったのぉ」とあえて男の前で泣く。
そうすると莉宇に夢中の男はさらに私を睨んで、仕舞には「てめぇ調子に乗ってんじゃねぇぞ。その顔ぐちゃぐちゃにしてやろうか、あぁ?」や「おや?あなた自分が卒業できなくなってもいいんですかね」などと脅してくる始末。
一応女の子に手あげそうになるととか、最低すぎてあきれる。
そんなことを繰り返しているうちに、抵抗するのも面倒くさくてどうせ睨まれて罵倒を浴びるくらいならまぁいかと放置するようになった。
「ねぇ七緒ぉ、今日あたしの家に遊びにきてよ」
「なんで」
「みせたいものがあるんだぁ」
うふふ、と可愛らしく微笑む莉宇に一緒に帰っていた男どもは顔を真っ赤にしたり、悶えたりと大変気持ち悪い。
イケメンでも気持ち悪いのはかわらないな。
たしかに、私より背が頭一つ分低い(私の身長は175cmと女にしては高い方だ)莉宇は小首をかしげて可愛いと思うが、どこか演技がかっているような気がする。
・・・・まぁ確実に演技だろうなとは思うが。
ただ我が侭で、自己中で、そのくせ自分の容姿がどのように相手に映るかしっかりと自覚しており最大限にそれをいかすのが上手いのだ。
「今日はぁ七尾の為にぃ、クッキーを焼いたんだよぉ」
「へー(うわ、睨まれてる睨まれてる殺気ビッシビシだよ)」
「それでぇ〜・・・え?」
クンッと、
莉宇に袖を握られて後ろを振り返った瞬間、見えたのは莉宇の足下に光っていた魔方陣。
そして、その記憶が最後に私は気を失ったのだ。
はじめての投稿でドッキドキです。
ぶっちゃけ前フリみたいなのは苦手なので今回はサラッと流します。そしてきっと後で後悔をする。
次回もよろしくお願いします!