9-幸せな麻耶、龍太郎?
龍太郎、何故か心が弾む、バックミラーに移る龍太郎の顔が・・・・
「先生、何か良い事でも?」
「そうかね!!」
「今日は特別にご機嫌がよろしいようで・・・」
「まあ・・・な!」
「先生のその様なお顔・・・」
「拝見するの、何年も・・いや、十数年も前で御座います!」
「そうかね?・・・それは・・・」
龍太郎の、運転手はもう既に20年近くになる。晴れの日も、曇りの日も、そして台風の日、人生の最大のピンチの時も、苦楽をいつもじっと見守ってくれている。
今となっては数少ない、同胞の一人だ。そして、龍太郎の、うれしそうな笑みの原因もすべてお見通しなのに、必要なこと意外決して出しゃばった、言動はしない。
それが、龍太郎にも良くわかる。
麻耶と一緒にマンションのロビーら出てきたのも・・・、仲良く話していたのも・・・
「おい、今日は凄くベッピンさんだな、恋人でも出来たのか?」
「失礼ね、いつもではないのですか?」
「それに、“ベッピンさん”なんて、部長ずいぶん古いですよ?」
「そうか、古いか、俺は・・・!」
「でも、うれしいです。褒めて、頂いて!」
「麻耶の恋人、どんな人だい・・・?」
「すげー、羨ましいな!」
「スッゴク素敵な人・・よ!!」
「幸せか・・・!!!」
「もちろん・・・よ!」
今度は、少し先輩の同僚が声をかけずに、もぞもぞしている。
「上原さん、何か言いたい事でも!」
「麻耶ちゃん今日特に輝いているね。素敵だよ!」
やっとの事で、口に出して言えた。何故か楽しそうに、会話している。
そんな会話を、盗み聞きしていた上司がいた。そう、井上部長だ。
悔しそうに地団駄踏む部長、部長も麻耶が凄く気になっていた一人なのだ。
当然、他の社員も狙っていた。
当然だろう、なにせ、デスクに座る姿が似合わない。
抜群のスタイル、整った顔、一瞬このフロアーはドラマの撮影現場みたいな雰囲気だ、カメラと、照明があれば・・・
そして最大の難関は、麻耶が凄すぎて、社員が身構えてしまう。
何しろ、語学が堪能、そして、重要な案件は殆ど麻耶が同席する。
20歳そこそこの女性が、大きなプレゼンに采配を取るのを見てれば、普通の社員は手が出せないのが現状だ。
麻耶は黙々と、デスクに座り、パソコンに目を向けている。画面は、全て日本語はない。
ネットのアクセス先は殆ど外国だ。東欧、それにアメリカ、最近は中国、そして、インドなどアジア圏内にもアクセスしている。
いつの間にか、麻耶は、中国語、インド語も、他にも数ヶ国語を、
短い時間にマスターしている様だ。
基本的にある程度の言語をマスターすると、他の言語もマスターが早い人が多い。麻耶もその一人だろう。
龍太郎は、昨夜から今までの流れが、まるで嘘の様な展開に、困惑している。
本当に、これから麻耶と二人暮らしが出来るのだろうか?
いや、していいのだろうか? ソファーに座り、新聞を見ながら思いあぐねている。確かに家政婦に麻耶が入室するに当たって、全てを任したが・・・果たして・・・
秘書が、コーヒーを持って来た時も、秘書が龍太郎を見て怪訝そうな顔をしていた。
龍之介の部屋からの眺望に、麻耶の面影が・・・そう、昔俺のただ一人本当に愛した、愛して止まなかった、本当に好きだったあの人と、どこか似ている。と、ふと想った。
まさか、彼女は、死んだと聞かされている。がしかし、身ごもったという話を聞いたことがある。
「・・・そんな事は、あるはずがない!」
「その後の調査で、母子共にあの大きな台風で、死んだと・・・」
「そう、他人の空似だ・・・!」
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