6-麻耶の策略?
大友龍太郎は、麻耶にせがまれ二人で食事に行くことになった。
その場所は、麻耶のリクエストで、赤坂にあるロシア料理を出してくれるレストランに決めた。
麻耶がどうしても、龍太郎とそこで食事がしたいと申し出た。龍太郎はあえてその場所を指定する麻耶の気持ちは理解できなかったが、了承した。
独特の雰囲気のレストランで麻耶と、龍太郎は和やかにロシアの郷土料理を、
堪能した。
麻耶自身、何故その場所で食事をしたかったのは本人も理解が出来ない。ただなんとなく、そう思ったのだ。
食事中、ナイフフォークの手を休めては、麻耶が次から次へと質問攻めの連続だ。
龍太郎は、ゆっくりと構え、麻耶の鋭い質問には大人の対応で、上手く交わす。
麻耶は話に夢中なせいか、ワイングラスを持ったり置いたりする回数が、
自然と多くなる。
そんな仕草を、龍太郎は大人の目線で優しく見つめている。
麻耶の質問は、もっぱら龍太郎の過去が多い。
龍太郎の行きつけの、また、麻耶のアルバイト先の、サパークラブの会話とは、
さすがに全然違う。
その話しぶりに対しては、龍太郎がその様に指示する。
その好意に甘えて、麻耶も友達、いや、もっと近い、肉親的な話し方で接している。
おそらく、店の従業員も、中むつまじい親子と思って接している。
「ねぇ、パパ!」
「えっ、パパ?」驚く龍太郎、一瞬周りを見渡す。
「おい、“パパ”って!!」
「その言い方が、こんな時!!」
「色々と、都合よくありません?」と耳元でささやく。
少し戸惑いながら「なるほど・・・!!」と頷く。
「で、君は・・それでいいのかい?」
「はい!!」「是非、そう言わせて!」
「それに・・・“君” なんていやです!」
「では、何と・・・・呼べば・・?」
「“麻耶”で、いいです!」
「では、“麻耶さん”・・!」
「だめです、”麻耶“ですよ!」
「さん、付けしたら、とっても変ですよ・・・ 周りから・・・」
「そう、かな・・・ そうだね!」
「一度、言って見て! “麻耶”って!!」
すこし、声の調子が高い。
ワインのピッチが早いせいか、酔いも回って来ている様子が伺える。
龍太郎は、こんなに無防備になっている麻耶が、あらゆる意味で心配だ。
果たして、自分のことを男として見ていないのか?
いないとしたら、それも少し残念。
いるとしたらそれもまた大変。複雑な心境だ。
あどけなさと、女の色気と言うか、魅了する可愛らしさを半々に持つ、麻耶。
それは、彼女の作戦なのだろうか、それとも・・・?
「パパ、おなかもういっぱい!」
「それに、少し眠くなっちゃった!」
甘えるような、男を誘うように、本当に小悪魔的な微笑で・・・・!
「それじゃー、帰るか?」
「家は、何処?」
「送っていくよ!!」
「ねぇ、パパのそばにいたい・・・、の?」
「そんな事いわないで!」
「行く先教えなさい!!」
「いやです!!」
「パパと一緒に帰る!!」
声が少し多きい事を心配して、素早くブラックカードで、精算した。
その最中に、龍太郎は携帯で運転手を呼んだ。
車は5分でレストランの前に到着していた。
車に麻耶を乗せ、その後に龍太郎は乗り込み、運転手に彼女の帰る場所を、
確認させた。後の事は運転手に任せて・・・。
かなり不満気味の麻耶だったが龍太郎が傍にいるせいか、いつの間にか寝入ってしまった。
ワインの飲みすぎだろう、麻耶は安心しきってすやすや寝入っている。
龍太郎は、自分のマンションに車を止めさせ、先に一人で下りた。
龍太郎の住むマンションは、生半可の所得や、成り上がりの金持ちでは決して、
入居できるようなマンションではない。
その事は、いかに龍太郎が、生半可のVIPでない事を物語っている。
龍太郎は、入り口から部屋の前までの、全てのチェックを最新式の認証システムで潜り抜け、ドアも当然生態認証システムで開けた。
広い玄関を抜け、圧倒されるような豪華なリビングルームにたどり着き、
特注のイタリアの有名デザイナーのソファーに腰を下ろした。
手元のリモコンを操作して、60階の窓のブラインドを開いた。
そこからの眺望も偉く素晴らしい。
何故か、龍太郎高いビルが気にいっているようだ。
龍太郎は、この大都会の夜景が、かなりお気に入りなのだ。
そこで、ブランデーグラスを傾けていると、龍太郎の携帯が鳴った。
「どうした・・・」運転手の声だ
「先生、先ほどの女性が・・・?」
「帰ろうとしない?」
「住んでいる所在地の地名が出鱈目で・・・教えて下さいません!」
「うぅーむぅ・・・・」
「で、彼女は・・・?」麻耶は、受話器を奪い取るようにして
「パパ、何で・・?」
「どうして・・・、私、一人にするの・・?」
「だって、・・・君は・・・!」
「いや、いや、パパの傍に・・・」
「いたいの!!!」
「ずるい、麻耶の寝ている間に逃げ出してしまって・・・」
「が、しかし・・・、僕は一人で生活しているし・・・!!」
「それじゃー、よけいに、大丈夫じゃーないですか?」
「大丈夫って、僕は男だよ・・・」
「その、男一人の部屋に・・・」
「全然、かまわないわ? 麻耶は・・!!」
「そんな事言っても・・・」
「いや、いや、麻耶、パパの傍にいたいの・・・!!」
暫く考えた末、
「麻耶、では、運転手に代わってもらってくれるか?」
「はい、変わります!!」
何故か、麻耶勝ち誇った様に明るい気分で運転手に受話器を渡す。
「麻耶さんを、連れてきてくれ!」
「はい、かしこまりました!」
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