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奇跡の巡り会い
作:浅見 希



43-祖母が・・


なんか不気味な音が・・・・銃声、それとも何かが爆発・・・
果たして龍太郎の身に何が・・・・
か、しかし麻耶から龍太郎に連絡する事は出来ない。

 大きな不安を残したまま麻耶はアナスタシアを残して、単身北海道へ飛んだ。
龍太郎の、叔母がかなり衰弱して、ボケも出てきていると言う、
龍太郎の話が気になったのだ。
そんな短い時間に叔母はそんなに・・・まさか
 稚内空港に降り立った麻耶はすでにレンタカーをチャーターしていた。
つい数年前に、ここを逃げるように飛び出した。
その時はとにかくここから飛び出したくて、東京に行きたくて・・・・、
そして、それなりに仕事も出来るようになり・・・、
今お腹の中には、大好きな彼の子供がいる、幸せだ。
そう最高に幸せなのだ。
そう言い聞かせて、込み上げる涙を拭おうともせず、ハンドルを握る。
 右手に見える海岸線は何年も何年も見てきた。
ある時は吹雪いて身動きが出来ず、じっと座り込み、
微かな隙間を縫う様に、小さな歩幅で歩く。
吹き飛ばされないように、転ばないように、少しずつ前に進み家路に着く。
あの頃が、あんな惨めな家が、そして家に帰っても両親がおらず、
祖母の作った些細な食事を一人で摂る。

 もうそんな事は二度とない、これからは龍太郎と二人で幸せな暮らしを、
何不自由ない大都会で暮らす。
そう・・・楽しく、笑い合って、子供の成長を4つの目でしっかりと見つめる。
見つめ続けるのだ。
 
いつの間にか祖母の住む家が見えて来た。
小さな家だ、よくこの地で吹き飛ばされずにいたものだ。
  そうだろう、小さく低いから、吹き飛ばされなかったのだろう。
 家の前に車を止め、ゆっくりと歩いて行く。
ノックもせずに、無防備な家のドアを開けて、
「帰ったわ!」
そのまま、馴れ親しんだ家具を見ながらなお奥に進む。
するとそこには、生気を失った祖母がぽつんと椅子に座っていた。
「お帰り。どうしたの?」まるで他人だ。挨拶してもまるで感情がない。
果たして私の事、ちゃんと認識しているのだろうか?
「おばば?」いつも言いなれていた叔母をそう呼んでいた。
「おばば! どうしたの?」
 「なんだや?」
「おばば、私のことわかる?」
 「あぁ・・・マ・ヤだろ!」
「おばば、いつもここで一人?」
 「そうだな・・・たまに役場の人が・・くる・・よ!」
「おばば、ごめんなさい、ごめんなさい、麻耶・・・気がつかなくて!!」
 「おまえは、忙しかったんだろ?」
「役場の人が麻耶の事、探してくれたが、日本にいないって・・・」
もう、麻耶涙が溢れ出て、溢れ出て、流れ出て、とまらない。
前が見えない。涙で・・・・、
そのまま、おばばを包み込むように抱きしめる。
その体は、昔とちっとも変わっていない。昔のままだ。
そう、麻耶に優しかったおばばだ。
祖母は麻耶の、されるがままになっている。
その祖母がポツリと一言
「マヤ・・・やや子が・・出来たんだな!!」
「よかったな、よかったな!」
祖母は、何の疑惑や質問もせず、喜んでくれている。
元気な頃、こんな事が起こったとしたら・・・・、
何日もきっと家に入れてくれなかった所か相手の男の所にきっと
怒鳴り込んでいた事だろう。
とにかく昔は怖かった。曲がった事はとことん怒られた。

そんな祖母が素直に喜んでくれた。
それに、まだお腹も目立っていないのに・・・・、
麻耶のお腹の中に子供がいる事をちゃんと分っていた。
何故だろう・・・
「おばば、ご飯ちゃんと食べてる?」
「あぁ・・・役場の人が・・・来てくれる・・さ」
「そう、じゃないと・・・生き・・て」
その言葉を言えずにまた涙が流れ出る、こぼれる。
 どうして、こんな姿になるまでほったらかして置いたのだろう、
どうして私、・・・・気がつかなかったのだろう。
役場の人が会社に連絡してくれたはずなのに・・・・
丁度その時日本にいなかったのだろう。
でもあまりにも突然だ。
何が起こったのか今となっては知る術がない。
それに、一番聞きたかった、父親の事も・・・もう、完全に分らないのだろう・・・
いつの間にか、祖母は麻耶の胸の中でまるで子供のように眠ってしまった。
 もう、祖母は子供に返ったのだろ、そして祖母の母に抱かれるように・・・
その祖母をベッドに寝かせてあげた。

 そのまま、麻耶は車に戻り、役場に出かけた。
役場は閑散としていた。
もうあの頃の栄華は薄れて、と言っても麻耶自身廃れていく姿の中で、
外国人たちの元気が良かった。
その外国人のおかげで麻耶は、ロシア語、ノルウエー語を習得出来たのだから、
感謝すべきだろう。

「あのう・・、誰か?」
 「はい、なんですか?」
「あのう・・私は・・・」
「あっ、麻耶ちゃん・・・か?」
「あっ、はいそうです。」
「あのう・・・祖母が・・お世話に・・・」
 「あんた、何処にいたの?」
「はい、すいません暫く日本に居なかったのです!」
「だから・・・、連絡しても・・駄目だったんだね!」
「はい、すいません。で、祖母はいつから?」
 「それがね、何だか東京の人が来て・・・」
「その後、急に・・・あんなふうに・・・」
「そうですか? 東京から・・」
 「そう、何があったのかねえ?」

それ以上の事は、聞けそうもなかったので引き返した。
そのまま祖母の好きなお菓子と、本タラバ釜飯の駅弁を買って家に帰った。
 暫くぶりの本タラバ釜飯弁、楽しみだ。
あの頃は何かの時にしか食べられなかった。
勿論、タラバはしょっちゅう食べ飽きるぐらいに食べていたが、
あの格好が、あの丸い弁当箱がうれしかった。

「おばば、帰ったよ!」また返事がない。そのまま奥に進む。
するとそこに、祖母がうつ伏せに倒れていた。もう冷たくなっていた。
仰向けにしてみた。もう息をしていない。おばばが・・おばばが・・・
おばば・・・どうして?・・・・何故? 麻耶が帰って来たから?
おばば、安心したから・・麻耶の事・・もう大丈夫って・・・
そう思ったの・・・おばば・・
死んでいる。シンデイル オババ が・・・
死んだ・・・「おばば・・おばば・・・おば」
おばばが・・・先ほど枯れるくらいに涙を流したのに・・・
また涙が・・止まらない・・・












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