35-麻耶たちの食事
何とその電話の主は龍太郎だった。
入室があった場合、そのコマンドが不眠不休で動き続ける、スパーコンピュータが反応して、
モニター画面がオンとなり、コンピューターからの自動 “発電”がなされ、
既に録音された龍太郎の声が相手を認識する。
当然その内容は、携帯ネット通信で龍太郎の携帯にも情報が送られる。
龍太郎はその時、何と北海道で受けていた。
そう、龍太郎も少し遅れてロシアを発っていたのであった。
龍太郎は、携帯から当然麻耶たちとリアルタイムで会話が可能だが、
あえてそれはしなかった。
麻耶が会話しているのは、録音の龍太郎の声だ。
「ようこそ、私の城へ・・!」
「あっ・・・、龍太郎!」
「あなたの名前を・・!」
「えっ・・・? あっ・・はい!」
「松本麻耶です!」
「・・そうですね・・!」
「それでは、あなたの好きな言葉を・・おっしゃってください?」
「えっ・・、好きな言葉??」
「そうです!・・ 好きな言葉です!」
麻耶は少しおかしいことには気づいているが、少しずつ龍太郎の言いたいことが、
理解で来ている。
そう・・・、この部屋に入った人間に対する最終チェックだ。
「はい、それは・・・?」
「それは・・・?」
北海道のある場所で、リアルタイムで麻耶の声を聞きながら、
龍太郎はにやりとする。
どんな言葉でも、麻耶で有る事は確認出来ているので、OKなのだが、
麻耶の言葉がどんな言葉になるのか、興味津々。
少し変な気分になっている、携帯電話の向こうの、龍太郎。
「それは・・・“大友龍太郎”です!!」
「そうですか・・・“大友龍太郎”ですか!!」
「そうです・・・あなたです!」
「それでは、私の城でお寛ぎ下さい!」
「何・・・これ!!」
状況の飲み込めないアナスタシア、呆然としているだけ。
「龍太郎のこれが最終チェックよ・・!」
「ねぇ・・・龍太郎・・・?」
「・・・・」
「あっ・・・、もう反応・・しない!」
「・・・!」
「ねぇ・?? 龍太郎・・今夜のお勧めの夕食は?」
「鮨でも・・・どうですか?」
「そうね!!・・・で、店の名は?」
「築地の“鮨清”では?」
「ありがとう、彼女きっと喜ぶわ!」
「・・・!・・・」
麻耶、最後の2つの返答は、生の声である事がすぐに察したのであった。
微妙に違う・・さすがに、二人の関係の深さが見破ってしまったのだろう。
しかし、それと同時にその事を黙ったままなのが、麻耶の心を寂しくさせた。
龍太郎・・・今・・何処に・・
「アナスタシア・・・お寿司・・・どう?」
「OSUSI ?」
「そう・・・鮨よ・・・ロシアでも今人気の・・・!」
「そう・・・本当 鮨ね それは最高・・・」
「本場の鮨・・・最高・・・早く行こう!」
俄然元気になった、アナスタシア、うれしさを体で表す。
「アナスタシア、お腹・・・そんなに・・・暴れちゃ・・!!」
「あっ・・・そう・・忘れてた!」
「そうよ・・・!」
「ねえ、今の龍太郎との会話・・・リアルタイム?」
「そうね・・録画と・・少し・・!」
「すこし・・何・・?」
「生も・・・あったようだと思うわ!」
「そう・・・リアルタイムは・・?」
「最後の、2つの会話・・だと思う?」
「いくら、コンピューターが凄くても、・・あれは・・・無理でしょ!」
「そうよね!・・・まるで、そこにいるような気がしたもん?」
「そう、鮨と・・・その店の名前なんて・・・」
「うん・・・」
「本当にお腹が空いちゃった・・早く行こう!」
「鮨清・・に!」
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