34-龍太郎の城?
今麻耶と身重のアナスタシアは、日本に向かう飛行機の中だ。
一時の途方にくれたアナスタシアの顔は今ほとんど無い、
女は強いものだと痛切に感じる。
逆に希望さえも感じられる、ロシアにいて、噂や夫から聞かされる話、
おそらく良い話が多いだろう。
とにかく日本は暖かい、そして四季と言う物が体で感じられる。
龍太郎の配慮で、日本の永住権に近いような資格を得てもらった。
暫らくは龍太郎の大きなマンションで麻耶と一緒に暮らす事で、
出産の苦労を麻耶が助けてくれる事になるだろう。
麻耶は日本に戻り、10日程して今まで通り会社に出社する予定。
「わぁ・・・素敵!!」
龍太郎のマンションの前にタクシーで降り立ったアナスタシアの第一声だった。
「そうね、本当。でも中はもっと凄いわよ!!」
「本当に、確か最上階のひとつ下って・・言っていたわよね?」
「そう、ペントハウスね。 私が自慢するの・・、変だけれど!!」
「そんな事ないでしょ?」
「えっ、でもまだ・・・あれだし・・・!」
「龍太郎と約束は・・・?」
「まさか・・そんな事考えた事も無かった・・・し・・!!」
そう言いながら麻耶の体で認証を終えてマンションの中に入り、
エレベーターの前に立つ。
基本的に認証された人間以外はエントランスより先に入れないが、
龍太郎がすでに警備会社に連絡してあったので、特別にエレベーターの中に
入る事が出来た。
24時間不審者の入室は、不可能になっている。
高精度の防犯カメラが主要箇所に設置してあり、それが無線で警備員室に飛び、
設置してある録画再生機能と、画像編集機能がスーパーコンピューで処理され、
必要な解析を行う。
当然アナスタシアの事は不審者として、捉えられているはずである。
しかし警備員がやって来ないのは、事前に龍太郎から送られた、データとの解析がなされて、合致を見たからである。
とにかく、最新のデータ処理能力と確認技術が、不審者の侵入を防げる最新システムとなっている。
内装の凄さに、眼を見張るばかりのアナスタシア。
そして、高精度防犯カメラが小刻みに自分の動きに対して動くのを、
少し変に感じ、麻耶に尋ねる。
「ねえ・・・? このカメラ、私を追いかけるみたい?」
「そうね、あなたを一応不審者扱い、そして照合しているのでしょう?」
「えっ、どう言う事?」
「龍太郎から送られたデータと、違っていないかどうか・・・よ!」
「ほら、もう貴方をカメラが追うの、止めたでしょう。」
「あっ、本当だ・・!」
「貴方はもう確認出来たのよ・・・本人と!」
「わあ・・凄い・・これが龍太郎の開発した最新式?」
「そうね・・それを元に今の研究員が新たに改善を加えて・・そう最新式ね!」
「この技術をロシアに・・・そして、夫も・・」
「私も初め、何だかわからない事がいっぱいだったわ!」
何と、アナスタシアは夫の事を思い出した様で、急に目にいっぱいの涙が・・
とめどなく流れて、ここに来て本当に安堵感で・・・
「アナスタシア、早く部屋に入りましょう。」
「・・・はい・・・」それが限界の様である。
二人はエレベーターに乗り込み目的の階を押した。
エレベーターはあっという間に50数回を昇りきり、ドアーが開いた。
夕暮れ近かったので、西の空が夕日の赤とそれに染まる空と、
絶妙なグラデーションを・・夕日が今まさに沈もうとしている。
その姿に、先ほどまで涙で濡れたアナスタシアの瞳が、
より一掃輝き出した。
「素敵ね・・・とっても・・」
驚きの連続に彼女、今度はうれし涙か・・・
「そうね・・・、本当!」
「私もね・・・初めてここに来た時・・思ったわ!」
「ステキ・・・って!」
「そうよね、本当に・・・いやな事忘れさせてくれる・・・よ!・・ね!」
「さあ中に入りましょう。」
「わぁ・・中も本当に凄い・・・!」
「これ・・龍太郎さんの趣味・・」
「そうみたい。」
「この部屋まるで中世のお城の中のイメージ・・・でしょ?」
「本当ね、椅子やテーブルそして絵画・・・凄いわ!」
「私、何だかこの部屋にいると・・・変な感じ・・落ち着くって言うか・・!」
「どう言う意味?」
「あのね、昔に・・こんな感じの・・・うん・・良く説明できない!」
「ところで、麻耶さん・・・あなた御両親は?」
「今は、父も母もいないわ・・・私・・・祖母に育てられたの。」
「いつから?」
「そうね、父はほとんど記憶がないの、母はかすかに記憶が・・」
「そうだったの? そして、祖母さんは今何処に?」
「北海道よ。稚内、シベリアに凄く近いわ。」
「そして、寒いわ・・・あなたの住んでいた場所と比べれば少しは・・・」
「そう、私も地図で日本・・どの辺だか大体・・・分かるわ!」
「寒さは、ある一定以上過ぎるともう・・・同じかも・・・!」
「そうね、でも私その・・北海道の稚内に行ってみたい気がする・・!」
「どうして?」
「なんだか、その“ワッカナイ”なんか・・何処かで聞いたような・・・?」
「そう、あなたの夫の祖父の出身地・・・もしかすると?」
「北海道かもね?」「聞いた事ない・・?」
「ごめんなさい、そこまでは分らない!!」
「そうよね。変な事聞いちゃって!」
「いえ・・!」
「あっ、さっきから質問ばかり・・・」
「あっ・・・そう、お腹すかない?」
「ええ・・・少し・・!」
「どんな物・・食べたい?」
そんな時、突然リビングの電話が鳴った。
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