30-麻耶最大の不安な日
龍太郎はスーツを脱ぎ、ホルスターを肩に掛け、そこに小型の銃を収めた。
さきほど、ある人物から届けられた物だ。
油脂に包まれ、実弾も別の箱に、きちんと縦に並べられたままの箱が、
ずしりと重い。
そこから20発取り出し、8発装填する。
残りは内ポケットに入れて、出来るだけ使いたくない。
やはり実物は、何か恐ろしさを感じる。
以前使用した事のある銃と同じだ。
試射もしたが、なかなか的に当たらない。
当然だ、ロシアにかなり長く滞在していた時、軍の高官に指導を受けただけだ。
護身用に持っていた方が良いからと、半ば強制的に持たされた。
この現状、己の身を守るには持っていた方が安心だろう。
が、しかし、本当にそんな場面に直面したら、まず撃てないだろう。
自分の気持ちの問題だ。安心と言う暗示をかけて・・・
そんな状況を見ていた麻耶、本当に怖さが、体の震えが止まらない。
もし・・、龍太郎が、そんな事は決して考えたくない。
だが、これが現実なのだ、この地において、決して冗談ではない、実際に目の前で、彼、ヴィクトル・ムラブレンコフが撃たれたのだから・・・
「麻耶、君はアナスタシアの家に行ってくれ。」
「くれぐれも注意を払ってね・・!」
「君には護衛がついているので、心配ないと思うが。」
「はい、わかりました。」
「アナスタシアも、それに彼女から生まれてくる新しい命も!」
「それで龍太郎は・・・これから、何処へ?」
「友人と合流して、奴らを追う。」
「大丈夫!? その件はプロに任しておいたほうが・・?」
「そうしたい、だが奴らは許せないのだ。」
「龍太郎、絶対に無理しないで・・お願い!」
「もちろんだ、拳銃など殆ど持った事がない私に、使えないよ!」
「これは、飾りだ、そう・・・お守りだ!!」
「でも、どうしても・・・龍太郎・・・行くの?」
「行かなければ・・・うん、行ってくる!」
「龍太郎、絶対死なないで・・・お願い!」
龍太郎は、かなり無理な笑顔を作ってホテルの部屋を後にした。
心配でならない麻耶。しかし、麻耶にもやらなければならない事が・・・、
そう、アナスタシアの家に、行って彼女を慰めに行かなくては。
そして、少しでも彼女のために出来る事を、少しでも多くしてあげねば。
麻耶は、龍太郎を見送って少しして、アナスタシアの家に向かった。
護衛つきで、そして運転も護衛の人間がしてくれた。
その車だが、防弾ガラスの車に変えてある。やはり、万全の用意がこの国では必要だ。
もちろん、龍太郎の運転する車も防弾ガラスに変えてある。
しかし、ロケット弾の様な強力な銃器には歯が立たない。もちろんだが。
麻耶は、アナスタシアの家に着くと、そこにはまだ先日からのカウンセラーが、
付き添っていてくれた。
そのお陰か、アナスタシアはかなり、元気を取り戻した様子で、
時たま笑い声も・・・安心する、麻耶だった。
麻耶はずっと付き添ってくれたカウンセラーに礼を言って、
今日は私が彼女を面倒見るからと、返してあげた。
「わかりました、それでは私、今日はこれで帰るわ!」
「それで、私はまた明日夜に来るわ、それでよくって?」
「はい、そうしてください、お願いします。」
そう言って、アナスタシアにキスをしてカウンセラーは帰っていった。
「どう、アナスタシア少しは落ち着いた?」
「はい、何とか!」
「そう、良かった!」
「それでね、うちのボスはあなたに出来るだけの事をしてあげたいって?」
「本当に、有難う」
「あなたの、ボスは最高に素晴らしい人ね!」
「そう思います、私も・・・」
「わたし、感じるんですけど、もしかして・・・?」
「えっ、何を・・・」
「そうね、あなたと、ボスの関係・・・」
「どう・・・いう・・・」
「あなた、彼に恋しているでしょ?」
「えっ、・・・・」ずばり言われて、真っ赤になった麻耶
「やっぱり・・、ね、いい事ね!」
「応援するわ、頑張って、私の分も・・・」
何だか、励ましに着たのに、逆に励まされてしまった格好の麻耶、
もうごまかしは無理と察して、成り行きを彼女に話し出した。
「そう、それはすばらしわ!」
「年の差なんて、愛には問題外よ・・・愛があれば・・ね!」
さすがに、ひとつのグレーゾーンは彼女にはいえなかった。
そう、もしかすると・・・父親・・・でもその事は解決済み・・・
そこへ、麻耶の携帯が鳴り響いた。
龍太郎の携帯だ・・・きっと・・・・
不安がよぎる、麻耶のハートに
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