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奇跡の巡り会い
作:浅見 希



26-小さな命


二人は現場を後にして、以前麻耶と泊まったホテルに移動した。
龍太郎と、矢吹はホテルのバーカウンターで、ウォッカをあおっていた。
暫く無言の後、カウンターのリキュール、ウォッカなどの酒瓶を定まらない目線で見つめながら、龍太郎は重い口を開いた。
「惜しい人材を亡くしてしまった。」
 「はい、とても残念です!」
「で、彼の家族は?」
 「はい、最近結婚しまして・・・ロシア人の・・・」
「そうか、ロシア人と結婚したのか・・・!」
 「その彼女の名はアナスタシアと言いまして、おなかに赤ちゃんが・・・」
「それは、とても残念な事を・・・・」
 「はい、妊娠8ヶ月だそうです!」
「矢吹君、今からその彼女に会いに行こう!」
 「えっ、大友様自ら・・・、ですか?」
「もちろん、それが私の義務だ!」
 「あっ、はい、かしこまりました。」
 「直ぐに、車を・・・」
「それと、君、わかるね!!」
 「はい、それ相当の金額を・・・!」
「ばかもん!! まだその話はいい。」
「それより、彼女の精神的なフォローが第一だ!」
 「はい、申し訳ございません!!」
「誰か、信用のおける看護師か、医者を傍につけろ!」
「彼女を、絶対に不安な状況にさせるな!」
「これは厳命だ、絶対に流産などさせるな!!」
 「はい、絶対に・・・・」

なんと言う優しい気遣いなのだろ、会社に働く者にとって何と心強い事か・・・
矢吹は今更ながらに大友龍太郎の凄さに敬服した。
おそらく、遺族には相当額の・・・・・

 アナスタシア婦人の家に着いた龍太郎、
何とそこには矢吹と合流した麻耶がいた。
麻耶は日本で情報を取りながら、いても立ってもいられずに、
この地にやって来たのだ。
そして、タイミング良く龍太郎たちと合流する事が出来たのだ。
 麻耶は進んで自らこの場所に来て、アナスタシア婦人の傍にいてあげたいと、
申し出たのであった。
龍太郎に是非にと・・・
泣き崩れるアナスタシア婦人に、麻耶はただ黙って傍に寄り添い、
身重な彼女を気遣いながら手を握り締め、一緒に涙していた。
このような場合、下手な言葉より、気持ちが重要だ。
麻耶はその事を肌で感じ実行していた。
とにかく、今は彼女を落ち着かせる事が絶対的に重要だ。

今回の事故の状況は、会社側に落ち度は見られない。
その事はおそらく、アナスタシア婦人もよく分かっているはずだろう。
しかし、龍太郎の気持ちとして、精一杯の配慮をしてあげたいと・・・
その事を麻耶自身もしっかりと把握している。
生まれてくる子供を安全に・・・、そう、これ以上悲しみを増やしてはならない・・
龍太郎と矢吹は、目礼して全てを麻耶に任して、
アナスタシア婦人の家を後にした。

 女性二人だけになった途端、彼女は張り詰めた気持ちがいっぺんに崩れたように、大きな声で泣き叫び、体を麻耶にぶつけるように抱きついた。
「なぜ、・・・なぜなの?」
「どうして、彼なの・・・?」
 「・・・!!・・・」
何も言えずにただ、アナスタシアを抱きかかえるだけの麻耶
「いやぁ・・! いやよ・・」悲痛な叫び
「私これから・・・どうすれば・・・!!」
 おそらく、麻耶の方が若いだろう、しかしすがりつくようなアナスタシアの姿は姉か母親にすがる様な気持ちだろう。
麻耶自身、本当にどうして良いのか分からない。これから生まれてくる命と、
それを守って行く命、両方絶対に守らなければと言う気持ちは絶対だ。
どこをどう慰めて良いのやら・・・、
しかし気持ちは通じているはずだ。
麻耶は、ゆっくりとアナスタシアをソファーに座らせ、
何度も何度も彼女の顔をなで、頬にキスをし、流れ落ちる涙を、
しなやかな指で拭ってあげていた。 












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