25-会社の危機?
無常な電話の主は、ロシア在住の支社の矢吹からの知らせだった。
かなり興奮しており、どうも彼もどこかに負傷を負っている様子で、
声が途切れ途切れで、必死に電話している事が理解できる。
「何だって、わが社のセキュリテーが破られたって?」
「はい、それも1箇所だけではない・・・で・・ す・・!」
「おい、矢吹君・・・・矢吹くん・・・!!・・・・!・・・!!」
通信は途絶えた。
他の関係筋に手配して見ると、何と10数箇所の個人宅、もしくは小さいが、
資金の動きの大きい会社のセキュリテーが破られ、
相当額の金銭が強奪された模様であると・・・
一体どのようにして、人体認証システムが破られたのか・・・
ロシアの設備は、少しぐらいの爆破ではびくともしない。
言うなれば小さな要塞と言ってもおかしくない。
それが破られたと・・・? 現場に行ってみないとわからないが、
一体どうやって・・・・そして、人体認証システムがどのような形で破られたのか・・・謎ばかりが・・・とにかく現場に早く行かなければ・・・・
龍太郎は、選りすぐりの技術者数名と、人体認証システムを共に開発した研究員
2名を日本から急遽呼び寄せた。しかしその作業は麻耶が行っていた。
そのスタッフを同行させて、現場に向かった。
龍太郎は飛行機の中で、襲われた現場写真を、何度も何度も見直していた。
救いは、プラスチック爆弾のような物を、認証システムにへばり付かして、
爆破したのであって、認証システムが解除された形跡が、
無い事が大きな救いのひとつだ。
認証システムが破られたとなると、完全に会社の存続が不可能になる。
だが、その認証システムの周辺を爆破された場合は、完全にお手上げ状態になる。
したがって、大きなビルや、政府関係のビルは、建物が頑丈なので、
問題はなかったのだ。
しかし会社のモットーは、広告に、小さな要塞であると明記していた。
その点で警備会社、保険会社との間に、何がしかの責任問題が発生する恐れがある。また、龍太郎にあの夜に届いた第一報では事の詳細がわからず、
人体認証システムの問題かと思っていたので、少し安心したのが事実だ。
ネットでの映像では、まるで、政府機関が被害を受けたような印象だった。
龍太郎は、まさかあの人体認証システムが、破られるはずは無いと、
確信していたのだから。
現場に到着してみると、まだ現場には火薬の臭いと、爆破によって、破壊された跡形が無残にそのままになったままだ。
警察の人間と、ロシアの科学捜査隊のような服装をした人間が、
数人現場の様子をカメラに、撮影している。
ビデオで撮影するのは、やはり科学捜査研究所の人間だ。
それに、TV放送局の腕章を付けた人間も現場を酌まなく撮影している。
当然の事だが、日本支社の龍太郎の会社の人間も混じって行っている。
TV局の人間は、日本支社の係員に事情を聞いている。
その場所で、龍太郎率いる日本調査団らしきを、発見したTV局のアナウンサーが、近寄って来た。
「どうして、このような事態が、起こったのですか?」
「まだ、現場に到着したばかりで、具体的な事はまだ・・・!!」
「そうですか!?」
「原因の究明に、現在一生懸命取り組んでおりますので・・・!」
「では、原因が判明次第記者会見を行う用意がありますか?」
「もちろんです!」「一刻も早い原因究明に努めます。」
「それが、わが社の顧客に対する、義務です。」
「それで、これから新たな事件は起こりますか?」
「その事を含め最善の努力で原因究明に努めます。」
「現在発生している現場は比較的個人的な建物が多いようですが?」
「そうです、大きな建造物はおそらく問題ないでしょう!!」
「それは・・・?」
「まあ、その事は正確には申し上げられません、安全の面から・・・」
「それで、今回の建造物と同等の建物に関しては?」
「既に、万全の策を取っております。」
「それは・・・どんな・・?」
「申し訳ございません。」
「その事は安全性の面から、極秘になります!!」
「当然でしょうね!」
「ご協力有難うございました!」
「はい!」
TVのインタビューを終えて、龍太郎は、少し疲れを感じた。
スーッと、傍に矢吹が心配そうに近寄って来た。
「お疲れ様です!」
「あぁ・・!」
「君も大変だったな!」
「いえ、私は大丈夫です!」
「それより、川本ワレリーが負傷しました。」
「川本君は、それで・・・・」
「ハイ、残念ながら・・・死にました。」
「そうだったか、私に電話してくれたのも彼だった。」
龍太郎はこの広大なロシアの地において、また死人を出してしまった。
己の責任ではないが何故か非常にむなしさを感じていた。
夕暮れ近くになって、何故か無性に麻耶の声が聞きたくなった。
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