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奇跡の巡り会い
作:浅見 希



24-つかの間の休息


東京に戻った龍太郎と麻耶、二人の甘い生活は再び始まった。
以前はたった1週間で2日位しか一緒の生活は無かった。
果たして生活と呼べるか・・・

龍太郎の照れもあるだろうが、悠々自適のはずの生活が急に変化してしまった。
大きな原因は、相手国のトップが龍太郎を名指しで指名したからだ。
龍太郎自身も、無くしたはずの仕事への興味がふつふつと沸いてきたのも、
おそらく麻耶の存在が大きい。
龍太郎の生きた世代は、仕事をする姿が己の生きがいであり、其れを好きな女性に見てもらう事が、美徳であり、生きがいと思っている。
当然麻耶も、今の龍太郎の姿に非常に魅力を感じている。
今までの、龍太郎とは、距離が少し遠ざかったような不安感も。
だから、夜に2人きりの時間は、麻耶は異常に龍太郎を欲しがる。
と、言うか密着していたい気分がありありと伺える。
甘えたいのだ。

今、龍太郎は、ロシアから帰国して、現役完全復帰と言っても過言ではないだろう。
とにかく、やる気がみなぎっている。
当然の事だが、“麻耶は龍太郎の秘書”と言う事で、龍太郎も現役復帰となった。
 麻耶のおかげで龍太郎はいっぺんに若返った。実も心も。
もうこれからの人生、のんびり行こうと考えていたのだが、
なんだか全てが再出発のような気分、改めて仕事が楽しくてしょうがない。
そして龍太郎は気分爽快で、毎日あのエレベーターの前に立つ。

麻耶の今いる部屋は、以前間違えたフロアー・・・そう、54階だ。
何もかも超高級の家具、インテリアで統一されている。
おそらくこの部屋は事務所の雰囲気がほとんど無い。
一般客はほとんど来ない。
そして、来客はほとんどが外国人、それも政府関係者が主だ。
当然の事だが、ドアにも表札らしい文字はない。
たまにやってくる日本人も、政府関係者と、相当社会的に名の知れた、
上の位の人間ばかりだ。
なにせ、一般のエレベーターでは到達出来ないのだから。
オフィスというか応接室はほとんど人がいない。
その奥で、麻耶はパソコンで、世界中の情報を集めている。
その二つ奥の居住空間、それは住居、と言っても過言ではない。
20畳ほどの部屋に、龍太郎が窓の外を優雅に眺めている。
あいにく外は雨だ。
その雨を窓から何かを思い出すように龍太郎は見つめていた。
 
今日も、当然の事だが麻耶と龍太郎は同じ部屋から出勤だ。
しかし、出勤は別々だ。
最近麻耶は、お気に入りのスポーツカーを自分で運転して通勤している。
朝食は、麻耶が作る、それを二人楽しそうに同じテーブルで向かい合って食べる。
お手伝いさんは相変わらず、週に2度ほどやって来る。
部屋の掃除と洗濯は行っている。
買い物も日用品野菜類はお手伝いさんに調達してもらっている。
お手伝いさんも、麻耶の同居に関して気づいているが、
その事に関しては一切触れない。
長年龍太郎を影で支えて来た、裏の女将さんみたいな人間だ。
すべて理解して行動する賢い人なのだ。

 龍太郎、突然の電話で起こされた。
携帯のディスプレーを見て、緊張が走った。
携帯のラインをオンにすると、相手の声がかなり緊張している事が、
近くにいた麻耶にも理解出来た。
龍太郎ガウンを身にまといながら、常時オンのパソコンに近付き、ニュースや情報元に確認をする。
「龍太郎!! ・・・・」「大変な事になっている!」
「そうだな、これは、わが社にとって・・・」
 「行くのでしょう?」
全てを察した麻耶、さすがは頭脳明晰で、優秀な秘書龍太郎が、
これから取るべき行動は殆ど理解している。
先ほどまでの2人の甘い時間は、1本の電話でぶち壊しだ。
しかし、麻耶も龍太郎もその辺の分別は完全に大人だ。

麻耶は、ネットから、航空チケットを2枚用意している。その内容を見た龍太郎は、その行為を遮った。
「麻耶、チケットは1枚でいい!!」
 「えっ、・・・・」呆然とする麻耶
「今回は、俺一人で行く!!」
 「どうして・・・・ですか?」麻耶の最後の方の言葉は消え入る様な発声だ。
麻耶は、龍太郎の真意を理解したからだ。
麻耶を危険な場所には連れて行けない。
そんな龍太郎の心が痛いくらいに胸にしみる。
無理して行っても、足手まといになるのは、
麻耶自身しっかりと理解しているから・・

 最短で取れたチケットで龍太郎はロシアに飛んだ。
麻耶は、何故かいやな胸騒ぎがする。
龍太郎、絶対無事に帰ってきて。 絶対に、お願い・・・・












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