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奇跡の巡り会い
作:浅見 希



18-張り裂けそうな、麻耶のハート


ヘリは、近くの空き地に降りた、それと同時ぐらいに、
エドゥアルド・ロトキンの携帯が再び鳴った。
 「うん、無事か、良かった!!」
 「で、身柄との引き換えの方法は・・・?」
 「そうか、そこに入金すれば・・・」
「ちょっと待て、相手に2人で1億しか用意できないと伝えて・・・!」
 頷きながら、ロトキンは右手で、OKの合図を龍太郎に示した。
 「相手も、その条件は呑むそうだ!」
「そうか、それで入金先は・・・」
 「XXX銀行XXX支店123876xxxに振込みが確認出来次第・・・」
 「拉致してある場所を教えるそうだ!!」
「そうか、それで信頼の度合いは!?」
 「それは、まず大丈夫だろう・・・!」
 「それに、君は騙される様な事はしないだろう?」
「勿論だ、入金に少しトリックをかます!!」
「当然、拉致の場所と無事が確認出来たらちゃんと支払えるような・・・」
 「まあ、その辺は・・・君に任す」
「とにかく、銀行に連絡する。」
そう言って、龍太郎は先ほどと同じ方法で連絡をとり、入金先を知らせた。
 暫くして、相手側から“入金の確認が出来た”と知らせがロトキンの携帯に来た。

ヘリは、急激にエンジン音をなびかせて目的地に向かった。
目的地は、荒れ果てた廃工場の跡地だった。
ヘリが地面に着くやいなや、龍太郎はかけ出した。
その行動を、あわてて屈強なボデーガードの2人が、それを体で制した。
 「危ないです、リュウタロウ、我々の後ろにいて下さい!!」
龍太郎は厳しい眼差しで、きつく静止させられた。
それでやっと自分を取り戻した龍太郎だった。
そして、2人のボデーガードは素早く、拳銃を片手に左右を2人でけん制しながら、
ゆっくりと進んでいく。
 まるで、スパイアクションのワンシーンそのもの、いや、映画のシーンではない。
下手をすると本当に実弾が飛んでくる。
 ボデーガードの後を、エドゥアルド・ロトキンと用心深く進んでいくと、麻耶がいた。
大丈夫そうだ。
 2人のボデーガードのOK合図で走り寄ると、そこには憔悴しょうすいしきった、麻耶がいた。
 龍太郎の姿を見て、いっぺんに安心したせいか、力の限りに叫ぶ・・・しかし、その声はかすれて微かにしか聞こえない・・
「龍太郎・・・さん!!」
「麻耶、麻耶・・・」
「麻耶・・・、良かった・・・良かった!!」
 しかし、麻耶の反応は、冴えない、顔に涙が・・・・涙の先に血で汚れた・・・、
青年が・・・どうも、息が途絶えているらしい。

「その、青年は?」
「うん、うん・・・うぅ・・・」
「どうしたの?」
 「ぅぅ・・・」もう言葉が・・・でない麻耶
 龍太郎、彼の生死を確認・・・周りの人間に横に首を振る。
もう・・・呼んでも・・
 救急車を呼んでも意味の無い事を合図する。
好きなだけ泣かせて上げよう。
そう言う気持ちで、少しその場を離れる。
 安全を確認したボデーガードたちは、ボスの指示を仰ぐように、ロトキンを見つめる。
 何か合図しあって、龍太郎に耳打ちする。

 その内容は、車を一台手配する事。
その青年の家族を見つけ出し、手厚く葬ってあげる事。
そして、2人は硬い握手。
龍太郎、大きな借りが出来た事になる。

 暫くして一台のベンツが到着した。
運転手は運転席から降りて、深々と頭を下げた。
 これから、龍太郎の運転手として、指示に従うように言いつけられて来たのだろう。
龍太郎は、麻耶を抱きかかえるようにして、用意されたベンツに乗り込んだ。
 麻耶の気持ちを考えると、龍太郎なかなか話しかけられない。
今は抱きかかえて心の静まるのを待つしか手はない。
少しずつ事の次第を聞いていくしかない。
 銃弾に倒れた青年、その青年に何がしかの感情移入があり、
命を失った青年に対する、悲しみ。
 想像するに、何がしかの援助を青年から受け、その青年が麻耶を守ろうとして殺された。
おそらく、この事は推測出来る事実だろう。
 だが何故青年は、死ななければならなかったのか?
目的は、初めから麻耶だったのだろうか?
それとも拉致してみたら金になる。
 それで、麻耶のパスポート、持ち物から・・・、
こちらが捜索している事を知り、近付いて来た。

 そう言う事か、で、青年は麻耶のために・・・
まあ、その事はおいおい麻耶から聞けばいい。
 とにかく、青年は彼らに上手く対処してもらう以外に方法はない。
麻耶の気持ちを慰めながら、これからの事をかいつまんで話した。
少し落ち着けば、聡明な麻耶の事だ、直ぐに理性を取り戻すだろう。
 龍太郎、麻耶の体を抱きかかえるようにして、落ち着くのをじっと待った。

 少し、ショックから落ち着いたようで、
今度は、龍太郎に抱きつくようにして、声を立てながら、泣き出した。
 少し、正常な麻耶が顔を出して来た。
 「龍太郎さん、本当に心配かけてごめんなさい。」麻耶かなりしっかりした言葉だ。
「気にするな、今、君は生きている!」
「命あっての、・・・ものだねだ!」
 「はい、でも・・・・、ヴィクトル・ムラブレンコフは・・・」
 「死んでしまった・・わ!」
「その、ヴィクトル・ムラブレンコフと言うのは、あの青年の名前か?」
 「そうです、とっても優しかったです・・わ!」
「どんな風に?」
 「私が、モスクワのホテルに帰るのに、交通機関が上手くいかず。」
 「かれは、私を、ホテルまで送ってくれようとして・・・」
 「ぅう・・・う・・」思い出したようにまた涙が・・・
「わかった、わかった!」
 「もう泣くな!!」
「彼には、本当にすまない事をした、後のことは彼に任した!」
「きっと、上手くやってくれる・・よ!」
 「そうですね、あのロシア人とても親切そうだったから!!」
「もう、めそめそするな!!」

 そうこうする内に、車は、ホテルに着いた。
ホテルに着いたとたん、麻耶は今までこらえていた物がいっぺんに噴出し、
人目も構わず、抱きついた。
 おいおいと泣きながら、龍太郎に抱きついて・・・涙が枯れない
物凄くハイな気持ち、人間の死を直面して・・・
目の前で・・息が途絶えるのを・・・












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