再開と鼓動
無差別転移から、3週間たった頃俺はクレアたちと再会した。ある温泉街でゆっくりと旅館に泊まっていた時に、彼女たちが追いついたのだ。マリアンヌが俺の位置を探れることは知っていたし、陸にいればいづれ向こうから来るだろうと思っていたから、あいつらが俺を探し当てたことに驚きはなかった。しかし、クレア達は違ったようで俺の隣でもはやミイラと化している英雄を見てひきつった笑みを浮かべていた。まぁ、ここにいる間毎日代わる代わるやられていたからな。俺は、男としては本望だろうといってあいつらを抱き寄せた。久々に、女の肌に触った気がする。さて、こいつらと合流したからに男二人で部屋を取る必要はない。俺は英雄一人を残して五人でもう一部屋とった。英雄の看病? そんなもん仲居が喜んでするだろう。それから、さらに十日ほどその旅館でゆっくりとした俺たちは英雄を一人残し旅館を後にした。
一方英雄のその後だが、どうも厄介事に巻き込まれたらしくしばらくは旅館のためにいろいろな勢力と戦っていたそうだ。その戦いぶりにより、あいつが薄幸の英雄とばれたらしくそのおかげで噂を聞きつけた英雄のハーレムたちがその町に着々と集まったようだ。余談だが、ハーレムの面々は別々に飛ばされていたらしい。全員が集まったのは無差別転移から六カ月が過ぎてからだったそう。
俺たちは、事件の終結を噂で知り当面の目標であった目的地に向かおうとしたのだがそこで一つ問題が発生した。なんでも、目的地であるその谷に隕石が墜落したらしく各国の調査部隊が集まってきているのだそうだ。そんな場所に行っては、本末転倒というか意味がない。であるからして、ここで目的を変更することにした。谷へ向かうことはやめ、ほかの大陸へ向かうことにする。島でもいいが。そのためには、船に乗るしかないが大陸に渡るための船が出ているのは港町ポート・ウィッグに行かねばならない。そこには、多くの神殿関係者が布教のために滞在しているため危険ではある。しかし、他大陸に行けばクレアやアイスに対する偏見は格段に減ると聞く。だから、この危険を冒しても行くことにしたのだ。
神殿にて、アンティークは己の従者と麗鬼について話していた。なぜなら、麗鬼は彼と同じ経緯をたどってこの世界に来たのだから来た後の行動も似てくるかもしれない。そうなれば、この世界は混乱してしまう。以前、彼が従者を救うために行った行動やもうひとつの行動は結果としてこの世界に大きな影響を与えてしまったのだし。それが良かったのか悪かったのかはわからないが……。アンティークにとってこの世界の者たちは子供や孫のようなものである。また化神達は弟や妹のようなもの。そして麗鬼はアンティークにとって半身、もう一人の自分のようなものだ。だから、彼になにかあったときアンティークは麗鬼をとるか世界をとるかで悩むかもしれない。どちらとも見捨てられない存在だから。
「これから、どうなるのでしょう? 」
「わからんが、儂とは違う選択をするかもしれないな」
「そのとき、我々はどうすればよいのでしょうか? 」
「わからぬ。年を重ねても、未来のことはわからぬ」
「そうですね」
「ただ、彼には後悔のない選択をしてほしい。何が正しいのかなど永遠に分かりはしないのだから」
隕石が落ちた谷では、各国の調査団が血眼になってそれを探していた。何故なら魔界や天界から堕ちて来たものでは無く、宙から落ちてきたそれには計り知れない価値と可能性があるから。落ちて来た隕石それは鈍く光を放ち圧倒的な存在感とともにそこにあった。それの全長は百メートルをこえ、落ちた場所がこの谷で無かったら大きな被害をだしていただろう。昔、宙より落ちて来た隕石はメテオと呼ばれその石を身に着けると一度だけ隕石を指定した範囲に降すことが出来たと言う。さて、なぜ全長百メートルもある物体がたやすく見つからないかというと、谷全体に蔓延している霧のせいもあるしそもそもここは世界で最も危険な場所のうちのひとつなのだからそうたやすく探索も進まない。そして、なにより隕石の影響なのか霧がすべて漆黒に染まってしまい、前後左右が全く分からない状態なのだ。
状況は停滞し、時だけがいたずらに過ぎていく。
そして隕石は鼓動し始める。
鼓動はだんだんと激しくなり……
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