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道の果ては 作者:花咲リナ
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6



真っ暗な闇の中、目が覚める。
ここはどこだろう。今まで、どこにいたんだっけ。

――ガタガタッ

どこかで音が鳴る。
しかし一寸先は闇。何も見えない。

フワリ、と目の前に光が現れる。何だろう。フワフワ漂う淡い光。
その中で何かが動いていることに気づき、顔を近づける。

どこかの景色のようだ。遊具があるから公園だろうか。人気はほとんどなく、ベンチに一つだけ、小さな影があるだけだ。
もっとよく見ようと光をのぞき込むが、視界が暗くてよく見えない。どうやら光の中の時刻は夜らしく、視界が悪い。

――ガタガタッ

また音が鳴った。
公園に人影がもう一つ増えている。ベンチに仲良く腰掛ける二つの影。

唐突にぱっと光が消え、一瞬暗闇に戻る。
しかしすぐに淡い光が現れ、ゆらり、揺れた。随分と小さい。もしかしてかなり遠くにある光なのかもしれない。

――ガタガタッ

新しく灯った光の中で、また何かが動いている。光が小さすぎて、よく見えない。

――ガタガタガタッ

人、だろうか。暗くて見えない。もう少し近付いてみないと……。

――ガタガタガタッザーッ

音にノイズが混じる。何かが激しく音を立てる。
光が近づく。
ゆるり、光の中の影が動く。

――ガタッザーッ……

音が大きくなる。耳が痛い。
口を開くが声が出ない。目を見開く。
光の中に見えたソレは――……。


ガタンッ!!


「――っ!!」

ハッと目を開ける。映るのは暗くて冷たい、檻の天井。
肌に伝わるのは、金属の硬い感触。

――夢、か。

息を吐く。最近よく夢を見る。同じ夢だ。
そして魘されて起きる。ただ、内容はよく覚えていない。

体を起こそうと力を入れるが、上手くいかない。
横目で確認すれば、格子越しには無表情で立ち尽くす白衣の男が一人。

ああ、そうだ。確か透明な液体を飲んで倒れたのだ、と思い出す。
ここに来てから半年経ったらしい。しかしそれを知ったところで、この「日常」が変わるわけでもない。
相変わらず得体の知れない物体――調合物を口に入れる毎日。
最近はそれの反動が大きく、日に日に体が言うことをきかなくなってきた。

バタン、と扉が閉まる音を遠くに聞きながら、ぼんやりと虚空を見つめる。

――死ぬ、のかな。

はっと吐き出した息が熱い。いつからか、視界が靄がかったようにぼやけるようになった。
音もどこか遠くに聞こえるし、女が時々持ってくる食べ物の味も、分からなくなってきていた。
ここで、死ぬのだろうか。この、どこかも分からない場所で。

「ご機嫌いかが――。あら、あまり良くはなさそうね」

女の声が聞こえる。入ってきたことに気付かなかった。椅子を引きずる音が微かに聞こえる。

「息も絶え絶えって感じね。だけどアレを呑んでまだ息があるなんて。あなたには本当に驚かされるわ」

楽しそうに笑う女は、こちらに何か投げ入れた。手に当たった感触は硬い。

「プレの実よ。栄養価が高くて肌にも良いの。女性に人気の果物ね」
「……」
「解毒剤が直に効いてくるはずよ。食べて寝ることが一番の治療だわ」
「……」
「だけどあなた、もう少し体力をつけた方が良いのではなくて。そうね、私が教えて差し上げるわ」

楽しげに何やら計画している女を、寝転がりならが見つめる。視界に、茶色いゴツゴツした丸い物が映る。これがプレの実か。



独り言なのか、一人何やら呟いていた女は、いつの間にか姿を消していた。
震える手でプレの実を掴み、伸びきった爪を硬い表面に立てる。しかし力が足りず、結局諦めて目を閉じる。

頭の中がグルグル回っているような感覚が続いていた。目が回る。ひどく気持ち悪い。
しかし、この感覚はどこかで経験したことがあった気がする。どこだったか。……いつだったか。

思い出そうとしたが、結局そのまま意識を落とす。
そして次目が覚めた時には、格子越しに女が立っていて、その口元には笑みを湛えていた。

「起床の時間よ。――いいえ、運動の時間と言った方が良いかしら」

ふふっ、と吐息のような笑い声を漏らす女は、手に握った銀色の棒を揺らして見せた。

ガチャンッギイィーッ

「うふふっ、さあ楽しい特訓の始まりよぉ」

ご機嫌な女の笑い声が響く中、ゆらゆら揺れる檻の出入口を呆然と見つめる。

ここに来て、半年と少し。
この日初めて、檻の外に足を踏み出した。


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