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道の果ては 作者:花咲リナ
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3



研究所に来るまでのことも含めて、調合物のことや白衣の人間達のこと、全てを話した。


「その調合物って」
「知らない。けど、毒だと思う」

女は「解毒剤」という単語を使ったことがある。つまり自分が口にしていた物は、恐らく毒物だったのだろう。

「無理矢理、呑まされたの?」

眉を寄せるヘルに、首を横に振る。
不可解そうに足を揺らすヘル。

「抵抗しなかったってこと?」
「……」

ひとつ頷く。それを見て黙り込んだヘルだったが、すぐにまた口を開いた。

「他に何かされた?乱暴されたとか……」

質問に対して、首を横に振る。
ただ、あの地下室にいる間はお風呂なんて入れなかったし、トイレも自由に行けなかったため、衛生面が――。

ふと、自分の体を見下ろす。

ところどころ包帯が巻かれた腕。見たことのない服。
頭を触れば、伸びきっていた髪が整えられている。

自分の体を今更ながら確認していると、それに気付いたヘルが、思い出したように声を出した。

「ごめん!言い忘れてた。その……僕は、女の子だし勝手にしちゃまずいかなって思ったんだけど……」

何やら言い淀むヘルに、首を傾げる。

「えーっと、ここに君を連れて来た奴がさ、君の髪とか……、体とか洗ったんだと、思う。うう、やっぱり止めればよかった……。あ、大丈夫!あいつは基本紳士だし。そういう面は心配しないで!」

何やら慌てて謝られるが、寧ろこちらが謝るべきだろう。

「――ごめんなさい、何から何まで」
「え、いやそれは全然。むしろ……」

ゴニョゴニョと、何か言いたそうなヘルは、結局何も言えずに口篭り、髪を掻き回した。

「あー、もう知らない。だいたい僕は悪くないしね!うん!」

ヘルは何やら一人で納得すると、こちらに輝くような笑顔を向けた。

「いろいろ教えてくれてありがとう。僕はあいつ――、君をここに連れてきた奴と連絡を取るから、もう少し休んでいて。眠かったら寝てもいいからね」

「……ありがとう」

大きな机の方へと歩いて行くヘルの後ろ姿を見つめながら、小さく息を吐く。


まだ分からないことは多いし、これからどうすればいいのかも見えてこない。
だけど、ヘルが教えてくれたおかげで、随分状況はマシになった。ここが地球とは別の世界だと分かっただけでも、精神的に大きく違う。

それにしても、ヘルは百歳過ぎだと言っていたが、こちらでは寿命がそれだけ長いのだろうか。
百歳で子供の姿なのは、特殊なことなのだと思う。
だけど、百歳という年齢は、この世界でどういう見方をすればいいのか。

ヘルが何やら紙に書き込んでいるのを見つめながら、取り留めのないことを考える。


こんなに長閑な気分になるのは、いつぶりだろう。
ヘルが先程から言っている『あいつ』とは、どんな人なんだろう。会ったらお礼を言いたい。
ここにはヘルとムゥ以外、住んでいないのだろうか。
窓の外を見る限り、森の中のようだけど、あの研究所と近い場所にあるのだろうか。

浮かんでは消えていく思考の波。
外から聞こえてくる小鳥の鳴き声に、頬が緩むのを感じた。


「よし。じゃあこれ、頼んだよ」
『了解』

「……」


ヘルが手紙のような物をムゥに渡すと、それをクチバシに咥え、赤い鳥は窓から飛び立った。

「さぁて……。あれ、どうかした?」

ヘルがこちらの視線に気付き、キョトンとした表情で首を傾げる。

「……ムゥ、喋るの」

「あ、うん。喋るね」


窓から、爽やかな風が吹きこみ、肩の長さで切られた自分の髪が揺れる。

ムゥが飛んで行った、緑の風景を眺めながら、ぼんやりと思う。



自分は今生きている。
――だったら、死ぬまで生きるだけ。


そう、それだけだ。

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