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道の果ては 作者:花咲リナ
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地球とは別の星、『ウホマトンケ』。
この星には魔術と呼ばれる力が存在し、妖精がいて、亜人と呼ばれる種族がいる。

世界は大きく四つの大陸に分けられ、大陸毎に様々な特徴を持つ国が点在する。

「そしてここは、東大陸一の領地面積を誇る国、"ケダトイナ王国"だよ」

ヘルによると、ケダトイナ王国は魔術に関しては発展途上であるものの、軍事力に長け、中でもケダトイナの『王属騎士団』は世界に名を轟かせる程の実力を有しているらしい。

戦争では負けなしで、そのためか近隣諸国に比べても非常に豊かな国ではある。
天候や土地にも恵まれており、話を聞く限り日本に似ているようだ。寒い時期や暖かい時期が交互に来るため、時期によってできる穀物が変わり、その多様な食物が国を潤わせるのを助けている。


代々王が治めるこの国は一時期、ひどい悪政が行われ、人身売買や闇取引が横行された。
今ではその悪政も見直されてはいるが、取締の穴が見られ、前時代の傷跡が払拭しきれていない現状である。

しかし改善された点も、もちろんある。最近は他国との関係性も見直され、近隣諸国や隣の大陸である中央大陸の数国と同盟を結び、外交面にも力を入れつつあるとか。

「君を奴隷市場で買い取った伯爵のような、前時代的思考を捨てきれない貴族も多い。現国王が奴隷制度を廃止したけど、裏では法を掻い潜って、未だに人身売買が行われてる。君もその被害者ってこと」

あそこは奴隷市場だったのか、と今更知る。

「特にその件の伯爵は、そう言った闇市場によく顔を出していると、噂されていてね。今回改めて調べ上げてみれば、その違法取引に加え、魔術研究所と繋がっていることも分かった」
「魔術、研究所」
「君を見つけた場所だよ」

そこで何かを思い出すように言葉を止めたヘルは、ゆっくり瞬きをする。
そして静かな声音で言葉を続けた。

「あそこは魔術に関する研究施設、ってことになってる。表向きはね」

含みのある言い方に首を傾げると、ヘルは苦笑した。

「あの研究所は現国王が即位する以前からある、意外と古い施設でね。この国は周辺諸国と比べてあまり魔術の技術が発展していないから、この研究所を建てたのが始まりなんだけど、悪政の時代から、その研究所では秘密裏に、倫理的とは言えない実験をするようになった」

実験、と言われて思い出すのは、無表情に何かを書き記す、白衣の人間達。

「人体実験だ。その頃は人身売買が当たり前に行われ、奴隷が国内で急増した。そして用無しとなった者は研究所に送られた。中でどんなことが行われていたのかは知らない。生きて出てくる者はいなかったからね」

"檻からは出してあげることはできるけれど、この研究所から出ることはできない――。実験体も、そして研究者も、ね。"

そう言って、悲しそうに笑っていた女を思い出す。

「君を買った伯爵が、研究所と繋がっていることが分かって、国王は過去最大の汚点を消す機会を得た。騎士団に命を下して、調査と題した強制弾圧に踏み込んだんだ。そこで君を見つけた」

「……私以外の、人は」
「残念だけど、ほとんど助かるような状態ではなかったと、聞いてるよ」

つまり、自分以外にも "実験体" がいたということだ。
研究所にいた女の話しから、そうかもしれないとは思っていたが……。そうか。


――自分が、助かってしまったのか。


「それで、きっと思い出したくもないだろうけど……。君が研究所で何をされていたのか、言える範囲で良いから教えてもらえるかな?」

申し訳なさそうに言うヘルを見つめる。

「報告しなきゃいけなくて」
「ほうこく?」

子供らしかぬ単語に、首を傾げる。
すると何かに気付いたように、ヘルは手を打った。

「……ん、ああ!そっか。そこを、説明してなかったね」

納得したように頷き、ヘルは「実は」と姿勢を正した。

「こんな成りだけど、実年齢は百過ぎのおじいちゃんなんです、僕」

少し恥ずかしそうに笑うヘル。
愛らしくも綺麗な、幼い笑顔だ。

「おじい、ちゃん……」
「うん。冗談じゃないよ?」
「……だから、髪が白いの」
「うん?」

パチパチと瞬きをしたヘルは、次には吹き出し、声を出して笑い始めた。

「ははっ!そこか!……これは生まれつきだから、白髪とかじゃないよ」

可笑しそうに笑うヘルの、サラサラ揺れる真っ白な髪を見つめ、年の割に妙に達観している理由が分かり、納得する。

「それでね。君を研究所で見つけてここに運んできた奴と、僕が知り合いなんだ。今そいつは後処理に追われて忙しいから、僕が代わりに君の事情聴取を頼まれたってわけ」

そこまで説明し終えて、ヘルは少し言い難そうに眉根を下げた。

「君のことは、研究所の実験資料に記されていたよ。年齢や研究所に来るまでの経緯。生誕日とかもね。君がニホンという国の出身だってことまで書いてあった。ただ、君が別の世界から来たなんて、さすがに思わなかったみたいだけど」

肩を竦めたヘルに、ふと疑問に思った。

「なんで……、私が別の世界から来たって、分かるの」

ヘルはさっき言った。
『君のように別の世界から来た人間は、僕の知る限り初めてだ』と。

この国では、黒髪黒目が珍しいらしい。だからと言って、別の世界から来たなんて考える人はいるだろうか。
それこそあの女のように、どこか遠い国の人間だと思う方が普通だろう。

別の世界が存在すると考える人が、どれだけいるのだろう。


ヘルは一瞬だけ目を見開いてから、考え込むように上を見上げたが、すぐに笑顔で口を開いた。


「それは僕が別世界の存在を知っていたからさ。公にはしてないけどね」
「……」
「ニホンのことも、そこじゃ黒い髪が普通だってことも知ってるよ」

今まで、別の世界から来た人はいないのに……?どこからその情報を入手したのだろう。
その疑問が聞こえたかのように、ヘルが言葉を続けた。

「僕は魔術師だからね。新しい魔術を生み出すのが好きなんだ。その時は何の気もなしに、ただ召喚陣を書き変えて遊んでいたんだけど、たまたまできあがった魔陣がニホンに通じていてね。それで、知ったんだよ。別の世界の存在を」
「まじん?」
「ああ。これだよ」

ヘルが大きな机の方へ歩いていき、散らばっていた紙を一枚取って渡してくれた。
そこには黒いインクで、複雑な円形模様が描かれている。

「この模様が魔陣。魔力を込めることで、術が発動するんだ。ちなみにこの陣形は使い魔を召喚する時のものだよ」
「つかいま……」
「うん。魔術師の助手として、異空間から呼び寄せる、異形なモノ。ムゥがそれ」

窓際に留まっている赤い鳥のムゥを見ると、クチバシで毛繕いしている。

「まあつまり、魔陣を通してニホンを見たことがあるんだよ」

納得してくれた?と、首を傾げるヘルに頷く。
ほっと息をついたヘルは、上目遣いでこちらを見つめる。

「えーっと。それじゃあ君の話しを聞きたいかな」

そう言われて、研究所でのことを話すんだったと思い出す。
随分話しが逸れてしまったようだ。

「大丈夫?無理強いはしないよ」

心配そうにこちらを伺うヘルに、首を振る。

「だいじょうぶ」

ヘルは色々教えてくれた。
次はこちらの番だ。


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