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特別な僕は君と出会い幸せを知る

作者:SHU1
3秒間、目と目が合えば3日以内の未来が見える。それが僕の異能だ。

生まれつき持っていたこの異能は、はっきり言って邪魔だ。
僕はこの異能のせいで、昔も今もそして未来も多分このまま世間の嫌われ者だろう……。

まともに人の顔を見れない。誤って目が合ってしまえば未来が見えてしまう。
制御できないこの異能を生まれつき持っていたせいで周りからは「化物」と蔑まれ、両親からも恐れられ、いつしか居場所は無くなっていた。

そんな日常から逃げるべく家を出て、僕のことを知っている人のいない場所で暮らし始めた。 周りに認めてもらうために勉学にも励んだ。運動も苦手だったがそれを克服しようと尽力した。

どんな出会いが待っているんだろう。どんな青春を送るのだろう。
そんな期待に胸を膨らませ、僕の高校生活が始まる。


いつも通りの朝、僕はボロボロの見た目からして安いと分かるようなアパートを出て、学校へと向かう。

「おっはよ〜! えーと、三目みめ君だっけ?」

家から出て数分のところで、僕と同じ高校の制服を身に纏った、茶髪でミディアムヘアの、美人というよりかは可愛らしいと表現する方がしっくりとくるような女の子に声をかけられた。

「え、あ、おはよう。えーと……な、名前……なんだっけ?」

「私はかおり春野香はるのかおり。もう! 覚えてないってひどくない?」

「ごめん……名前覚えるの苦手で……ほんと、ごめん……」

「あ、いいよいいよ! こっちこそごめんね、責めるような言い方して」

少しだけ不機嫌になりつつも、僕のことを気遣い、天使のような笑みを浮かべる香は男女問わずに人気が出るだろう。
そう思えるほどにこの二言三言の短い会話で、彼女の優しさが伝わってくる。

これが普通の人に対する普通の接し方なのかもしれないが、周りから蔑まれ、誰からも近づかれない、そんな環境で小さい頃から育ってきた僕にとっては、とても心地よく感じた。

「三目君の下の名前はなんだっけ?」

飛鳥あすか、鳥が飛ぶで飛鳥、それが下の名前」

「へぇ〜、なんか女の子みたいな名前だね! 背も私くらいだし、顔も可愛い顔してるし、スカート履いて眼鏡外せば女の子にしか見えないよ! 」

香の予想外の発言に僕はなんて返せばいいのか分からず、しばらく黙り込んでしまった。
ただ、香の突飛な発言がなんだか嬉しく思えた。今まで容姿のことを褒められることも、こんなに人と話すこともなかった僕にとっては、まさに理想のシチュエーションだったからだ。

僕にとって楽しい時間を過ごしているうちに、気がつくと学校に着いていた。

「あ、私今日、日直だった! ちょっと職員室行ってくるね!」
とそそくさと香は行ってしまった。
1人になった僕は教室へと向かった。扉を開けると

「おはよー」

「三目君おはよー」

と中学の頃には思いもよらない程の自然な挨拶。今までそんな当たり前を経験してこなかった僕にとっては、かなり嬉しいことだった。

生まれて初めて友達と遊び、学校では香たちとも楽しい会話を繰り広げ、かなり充実した高校生活を送っていた。

そして次第に僕の中で香は最も信頼できる人になっていった。

それから数日が経ち、高校に入って初めてのテスト。
普段から真面目に授業を受け、復習も予習もしていた僕にとっては、それほど難しくはなかった。
もちろん、異能は使っていない。そもそも使おうと思っても、僕自身が異能を制御できないためそういうことは不可能だ。これは僕自身の実力だ。


それからさらに1週間が経ち、テスト返却日。
次々とテストが返され、点数を披露しあいながらみんな盛り上がっていた。もちろん僕もだ。

「三目また90点超えてるじゃん! 頭いいんだな」

「スゲーな」

と僕の点数の高さに周りは羨望の眼差しを向けている。とても心地良い。ずっと憧れていた普通で当たり前の学校生活を送れているという実感がある。とても嬉しかった。それと同時に、異能なんてやっぱり必要ないと改めて感じた。

もう異能のことなんて忘れよう。僕は普通の高校生。どこにでもいる普通の高校生。これからも僕は普通の人としての生活を送るんだ。

そう自分に言い聞かせていると、ボソリと黒板の方から不穏な呟きが聞こえた。「未来が見えるくせに……」と。

声の主は、クラスの担任の加藤かとうだった。その呟きは僕だけでなく近くにいた数人にも聞こえていた。

「え? 未来が見えてる? なんのこと?」

「もしかして異能の話? このクラスに異能者なんているの?」

「いたらやばくね? 何されるかわかんないよ?」

と所々から気味悪そうに話し声が聞こえてくる。気づくとその話題はクラス全体に広がっていった。

「三目、お前はどうせ未来視の異能でテスト内容が分かっていたんだろ? 大人しくしていれば黙っていようかと思っていたが、異能を悪用するというのなら話は別だ! やはり異能者にはロクな奴がいない」

と加藤は今度は声を張って主張した。それを聞いたクラスメイトたちは青ざめた様な顔で僕の方を見つめてくる。

「未来が見えるとかキモ! もしかして私たちの未来とか全部見られてんじゃね」

「ていうか、俺たちがこれからやることとか全部読まれてるってこと? それマジやばくね? 化物じゃん!」

などと僕の異能について何も知らないくせに、あることないことでっち上げて蔑むような目で見てくるクラスメイトたち。異能を持っていることを知っただけでなぜこんなにも掌を返すのか、僕には分からない。さっきまで楽しく会話していた人たちも気がつくと距離を取っている。

「僕がこの数日間何をしたっていうんだよ……なんもやってないだろ? これまで楽しくやってきたじゃん……どうしてだよ……」

つい我慢出来ずに思ったことを口にしてしまった。空気はさらに悪くなる。その中でクラスを見回す僕。ふと香と目が合う。「香なら助けてくれる」と心のどこかで思っている自分がいたが、香は申し訳無さそうに目を逸らす。

やっぱりそうか……異能を持っているとやっぱりこうなるのか……

「信じてたのに……」

そう一言呟き、この空気に耐えられなかった僕は教室を飛び出した。

目に涙を浮かべながら、無我夢中にひたすら走った。悔しくて悔しくてたまらなかった。

気がついたら、僕は自分家のベッドで横になっていた。外は暗い。走り疲れてそのまま寝おちてたのだろう。
気分転換にシャワーを浴び、今日あったことを思い返す。

許可なく個人情報を吐露した担任の加藤。
この数日間で仲良くなったクラスメイトの掌返し。
一番信頼していた香からの拒絶。

たったこれだけ。今までの扱いに比べたら正直まだ全然マシだろう。それなのに……それなのになんでこんなに辛いんだろう……。

次の日、僕はいつも通り学校に行くことにした。
いつも通りの時間に家を出る。
少し歩くと、いつもの場所で香と遭遇する。
なんも変わらない。
ただ1つ変わったこと、それは僕に対する香の態度だ。
目と目が合う。すると、逃げるように早足でその場を去る。
「ごめん……」
そう言われた気がした。

香に追いつかないようにゆっくりと学校へ向かった。
校舎内に入ると所々から視線を感じる。他クラスの生徒たちだ。恐らく、僕が異能者ということを耳にしたのだろう。気にしていたらキリが無い。そう言い聞かせ、教室に入る。

扉を開くと、そこには何事も無かったように楽しげに話し合っているクラスメイト。
少し安心し席に着こうと見回すと僕の席がなくなっていた。なんとも安いイジメだ。

チャイムが鳴り、加藤が入ってくる。そして、いつも通りの点呼。次々に呼ばれる生徒たち。ただ、そこに僕の名前は無かった。空気にされたこと、そしてこの安いイジメの黒幕は加藤ということはすぐに理解できた。どうしようもない大人だ。

僕がこれまで見てきた大人はみんなこうだ。

少し変わった子がいれば、ああいう人間にはなるなと教え、差別する。そういう大人を見て育った子供たちもそれが正しいと捉え、差別をし始める。そういう世の中だ。本当にどうしようもない。

この状況に呆れた僕は家に帰った。そしてそれから学校に行くこともなくなった。いわゆる不登校だ。ただ、無駄に時間を浪費したく無かった僕はバイトを始めた。新聞配達と派遣のバイトだ。朝は新聞配達、午後は派遣とそういう生活を送った。

それから約5ヶ月が経ち、世間は冬休み。僕は家の近くのクリスマスイベントの短期バイトへと向かった。寒い中マフラーを巻きポッケに手を入れて、完全にクリスマスモードへと化した商店街を歩いた。まだ午前中にも関わらず、手を繋ぎラブラブと腕を組んで歩いているカップルたちを避けつつ、バイト先へと着いた。

「すみません、短期バイトで来たんですが」

扉を開けすぐ近くにいた茶色のロングヘアの女性に声をかけた。

「あっ、短期バイトの方ですね!」

振り向きながら可愛らしい笑顔をこちらへと向けてくるその女性は、とても見覚えのある顔だった。

「かお……り……?」

「えっ? 三目君? 三目君だよね⁉︎」

突然の再会だった。だが、素直には喜べない。だって僕は香に見放されたのだから……。

「こんなところで会えるなんて……ごめん、ごめんね……私何にもできなくて、ごめんね。どうしていいか分かんなかった……本当にごめんなさい。」

涙を浮かべながら何度も謝ってくる香に僕は心が締め付けられた。僕のために泣きながら謝ってくれる彼女は、本当に優しい人なのだと思えた。ただ、そう思えたからこそ憤りを覚えた。

「なんだよ、今更。勝手に見放して長い間放置して、偽善もいいところだよ……もう俺に関わんないで」

そう言ってその場を一旦離れようとすると、

「そうだよね……言い訳なんて聞きたく無かったよね……でも、これだけは言っておくね。」

「私、三目君のことが好き。初めて話したあの時からずっと好き。実はね、あの時三目君を見つけた時ね、なんて声をかければ良いのかわからなかった。でも、話してみると楽しくて自分が日直だったこと忘れてたの。それで気づいた。私三目君のこと好きだなって……」

香のその言葉を聞いて僕は逃げてしまった。どうして良いか分からなかったからじゃない。3秒間、目が合ってしまったから。そしてその未来がとんでもないものだったから。

短期バイトを香と距離を置きながら着々とこなし、2時間程でそれが全て終わった。素早く着替え、周りの人に「お疲れ様でした」と挨拶をし家へと帰る。そして、あの時見た香の未来を思い返す。あれはいつ起こるのか、どこで起こるのか、気がつくとそんなことばかりを考えていた。

雪が降っていて、地面に少し積もっていた。そこそこ広い道に、血を流し横たわっている香。点滅している信号。辺りは薄暗い。

見えたのはそれだけ。これだけじゃ何にも分からない。明日起こるのか、明後日起こるのか、それとも明々後日なのか、皆目見当もつかない。
なんて不便な異能なのだろう。何にも役に立たない。その割には周りから化物を見るかのような視線を浴びせられる。本当に邪魔だ。

半ば絶望していた僕はふと外を見る。すると、外には雪が降っていた。

「まさか……」

居ても立っても居られなくなり、慌てて外へと飛び出した。地面には雪が積もり始めている。

「やばい、やばいぞ……このままじゃ、マジでヤバイ」

頭の中が焦りで真っ白になりかけていた。

「どこかさえ分かれば……クソ……どこだよ……」

涙目になりながらも必死で走り続ける。その時ふと頭にある場所が浮かんだ。一旦その場で足を止め冷静に整理する。

「商店街……? そうだよ、商店街だ! あそこの端の横断歩道だ‼︎」

場所が分かり、そこへとただひたすら走り続ける。

「横断歩道を渡るのさえ防げれば、未来を変えられる!」

絶望が希望へと変わり体に力が湧いてくる。ただ、雪は異能で見た景色と同じくらいに積もっている。

「間に合ってくれ!」

その一心で走り続け、ついに現場へとたどり着いた。辺りを見回すと同時に点滅を始める信号。それにつられて急いで渡ろうとする影。

「香……マジかよ……」

香は小走りで横断歩道を渡り始めていた。そして、一台の車がスピードを落としながら迫って来ていた。
一見は普通の光景。
ただ僕にはそうは見えなかった。
気がつくと僕は道路へ飛びだしていた。そして、香を物凄い勢いで突き飛ばした。それと同時にブレーキを踏んだ車が雪に足を取られスリップし、僕を軽々と吹き飛ばした。

目がさめると、見知らぬ白い天井。部屋中に漂う独特な匂い。病院だ。
体を起こし、僕の身に何が起きたのか思い出した。まだ痛む体を無理やり起こし、カーテンを開けようとすると

「三目君! 目さめたのね! 良かった……本当に良かった……」

そこには右頬に湿布、右腕に包帯を巻かれた香がいた。
香によると、車に吹き飛ばされた俺は左腕骨折、左足打撲、脳震盪を起こしたらしい。

「三目君、ごめんね……そして……ありがとう。もしあそこで三目君がこなかったから私は多分死んでいた。でも、君の未来視のおかげで私は今生きている。本当にありがとう。大好きだよ」

涙が流れるのを必死で抑えながら率直な気持ちを伝えてくれた香は、なんだかとても眩しく、そして愛おしく思えた。

今までひたすら僕の邪魔をしてきたこの鬱陶しい異能に、今はとても感謝している。この異能が無ければ香とも出会えず、そして、救うこともできなかったのだから。

異能の秘めている可能性を、香は教えてくれた。

だから、これからは異能について真剣に向き合っていこうと思う。

それが僕の、三目飛鳥の歩むべき道だと信じて。

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