バットマン4ー2
学校から帰った優は、アパートの鍵が開いている事を不審に思った。
いつもなら、母親は仕事に行って居ない筈だ。
「ただいま〜」
玄関を開けると、煙草の匂いでムッとした。男物の派手な革靴が、優を不安にさせた。
「おかえりー」
母親が、脳天気な声で答える。
既に、かなり酔っているようだった。
居間には、母親の他に男の人がいた。
浅黒い色の、少し年配の人だった。
薄手のシャツをはだけている彼は、体に直接絵柄がプリントされているのが見えた。
彼は、優を見ながらニヤニヤしていた。
いやらしい視線が突き刺さる。
「嫌だな〜」
優は、心の中で呟いた。
「優、ここへおいで」
母親の手招きに、優は素直に応じた。
「優ちゃん、お母さんね、凄く困ってるの…。 実はね、麻雀の借金が溜まっちゃって払えなくなったのよ…
それを、この但馬さんが肩代わりしてくれたの…」
優には、母親が何故こんな話をするのかが理解できなかった。だが、声のトーンから、不安の匂いを感じとっていた。
「それでね、但馬さんが、お前の事を前に見た事があって、気に入ったんだって…」
話の方向が見えて来た優は、ハッキリ拒否した。
「やだよ! 借金の代わりなんて!
お母さん、いったい幾ら借りてたの!」
「300万」
「300万!
麻雀で!
バッカじゃないの!」
「うるさい!
お前のロクデナシの父親にあたしは不幸にされたんだ!
それくらいの金はお前が返せ!」
酔った勢いもあったのだろう。母親は、怒鳴り散らした。
優は、元から大人しい子だったので、すっかり脅えてしまった。
「おじさんは優ちゃんを虐めるつもりは無いんだよ。ただ、目を瞑って大人しくしていれば、済む話だよ」
今まで黙っていた但馬は、優に猫なで声で迫った。
「いや〜! 近づかないで!」
但馬を押しのけようとする優に、母親の言葉が突き刺さる。
「これからお父さんになる人なんだから、言う事を聞きなさい!」
母親の言葉に、優は唖然とした。
その隙に、但馬は優を畳の上に押さえつけた。
「やだ〜、お母さん助けて!」
娘の悲痛な叫びに、母親は答えた。
「近所迷惑でしょ! 静かにしなさい!」
その台詞と共に、優の口へ布巾を押し込んだ。
但馬に抑えつけられ、口も塞がれた優は、涙を流す以外なかった。
「血の繋がらない優ちゃんが新しいお父さんと仲良くするには、こうするしか無いのよ」
母親は、自分勝手な言い訳をしながら、但馬の命令で実の娘の両手を抑えていた。
彼女は、自分のために、優を但馬に売ったのだ。
但馬は、優の衣服を手馴れたようすで脱がせた。
優は、但馬が満足するまで目を瞑って耐えた。
何も考えたくない…。
何も感じない…。
ただ、苦痛だけが続いた。
透けるような、薄くて白い柔軟な皮膚が、膨らんでは萎む。
その動きは、ツンとした二つの隆起の下で起きていた。
匂いたつような若い肌は、赤味を帯びている。
優が目を覚ました時、窓からは夕陽が射していた。
“あの男”と母親は、気絶した優を残して何処かへ行ったらしい。
裸のまま放置された優は、怒りを通り越して悲しくなった。
「この場所に、私の居場所はない」
そう考えるのは、当然の結果だった。
優は、シャワーを浴びた。
体中が、あの男の体液でベトベトな気がしていた。
熱いお湯をかけて擦っても、汚れが取れる気がしなかった。
どうしても涙が止まらずに、頭からお湯をかけて泣いた。
シャワーを浴び終わると、手早く着替え、身の回りの物をバッグに詰め込んで家を出た。
“もう、この家には帰らない!”
そう決めていた。
夕暮れ時、よく買い物に来ていた商店街を抜けて、駅へ向かう。
“顔見知りに会いたくない”
そう思った。
下を向き、足早に歩いている自分に気が付いて
“もう帰る場所が無いんだ”
と思うと、また泣けて来た。
上京した優は、男に声をかけられた。
優しい笑顔の彼は、スーツ姿が似合うホストだった。
衣食住を与えられ、優しく愛された家出娘の恩返しは一つだけ…。
風俗で稼ぐ事。
強制はされなかったが、優は恩返しがしたかった。
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