バットマン「狗神 杉川村編」(24/29)PDFで表示縦書き表示RDF


バットマン「狗神 杉川村編」
作:オリオン



反撃



 街で騒動が起きていた頃、瞬や蟹江も行動を起こしていた。

「外に電話が繋がらない」

「ネットもだめだ」

 杉川村から外へ、連絡手段がなくなった。


 誰も入れない。誰も出られないの“誰も”は、人間の事だけではないらしい。


 和尚の姿も見あたらなかったが、その時は気にならなかった。

「とにかく、街の様子を見てみよう」

 瞬と蟹江と綾香は、情報を入手するために外に出てみた。



 街は、表面上は穏やかに見えた。

 三人が、ホッとしたのも束の間、突然の悲鳴が、静寂を破る。
 瞬は、すぐに反応した。

「刑事さん、綾香を頼む!」

 刑事をしている身としては、少年の命令を受けるのは不服だが、瞬は既に悲鳴がした方に走っていた。
 綾香を1人にもしておけず、蟹江はしぶしぶ残ることになった。

「気をつけろよ!」

 瞬の背中に、せめてもの大人のアドバイスを贈る。

 瞬は、片手を上げてそれに答えた。
 その後ろ姿が遠ざかるのが、早い早い。




 悲鳴の主は、強面のガタイのいい男だった。
 悲しいくらいの必死の形相が、なんとも言えない。
 息はかなり上がっていて、限界が近いように思えた。

 その男を追いかけているのは、青白い顔の痩せた男だった。手には血の付いた包丁を持ち、息一つ乱さず、冷酷な表情で走っている。
 彼は、すでに人間ではなくなっていた。完全に魔物に支配され、鬼と化していた。

 青白い鬼は、強面に迫っていた。もう、背中に包丁を突き刺せるくらいの位置だった。
 
 逃げる背中に、包丁を振り下ろす。

 そこに助けに入ったのは、瞬ではなかった。
 それは、背の高い女の人だった。
 ローライズのジーンズが似合うプロポーションの良い彼女は、青白い顔が持っていた包丁を払い落とすと、手首を掴んで投げ飛ばしていた。
 すぐさま地面に押し付け、後ろ手にして手錠を嵌めた。
 その手際の良さは、逮捕術を学んだエキスパートを思わせる。

「真弓姉さん、来てたんだ」

 騒動が収まった後に到着した瞬が、その女性に話しかけた。

「お待たせ! 瞬」

 真弓は、瞬に笑いかける。

「ギリギリ杉川村に入れたよ。もう少し遅かったら、入れなかった」

「やっぱり、バットマンのゲームが始まってから、誰も入れないし、誰も出られないんだ」

「まったく、くだらない余興に付き合わされたよ」

 真弓は、面倒臭そうに言った。

「ところで、手錠はどうしたの?」

 瞬の質問に対する答えは、指で示した。

 真弓の指先を辿って行くと、若い警官にたどり着いた。彼は、頭を怪我しているらしく、白い布を巻いていた。

「村民に襲われている所を助けたんだ」

 
「てっめ〜、よくもやりやがったな!」

 真弓と瞬が目を離している隙に、体力と元気を回復した強面が、青白くんに蹴りを入れた。

「やめな」

 真弓が、強面を羽交い締めにして引き離す。

「だってよ〜」

 まだ何か言いたそうな強面に、真弓がピシャリと言った。

「こいつの手錠を外すよ!」

 強面は、青白い顔の暗く不気味な目に睨まれていた。その目を見た強面は、慌てて首を振る。

「勘弁してよ、姐さん、もうしないからさ」

 強面の言葉に、真弓は苦笑する。

「あんた、名前は?」

「岩尾信雄」

「じゃ、ガンって呼ぶわ」 













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