杉川村ルール
和尚から15年前の事件の真相を聞かされた蟹江は、驚いていた。
それと同時に、村人たちに怒りを覚えた。
だが、事件の時効は成立している。
誰も、犯人を裁くことができないのが、日本の法律の現状。国家権力の端くれの身としては、何もできない立場だった。
「仏の道を説くべき和尚が、こんな恐ろしい事件に荷担するとは……」
蟹江は、部屋の中で呟いていた。
もう、彼が杉川村にいる理由は無かった。 バットマンとの関連は、いまだに不明だが、何か人知を超える世界で繋がっている気がする。
そうなると、蟹江の出る幕ではなかった。
そんな事を考えている時、後ろから声をかけられた。
「どうしたの? 怖い顔をして」
振り返ると、瞬が立っていた。
「なんだ、瞬か……」
「なに、考え事?」
蟹江は、瞬に和尚の事を話そうか戸惑った。だが、話を広めるのも良くないと考え、別の話題を持ち出した。
「綾香ちゃんは大丈夫か?」
綾香は、瞬と一緒に行った出先で気分が悪くなり、戻って来ていた。
「大丈夫みたい。食欲も出たし」
「そうか、それは良かった。ところで、俺は明日、東京に帰る。綾香ちゃんも一緒に帰らないか?」
蟹江の突然の発言。
しかし、瞬は驚かなかった。まるでその言葉を予想していたかのように、蟹江に同意する。
「そのほうが良いと思う。なんか、嫌な予感がするから」
「瞬もそう思うか? 俺も胸騒ぎがしてしょうがない」
「なに、刑事さんは逃げる気だったの?」
瞬のからかうような発言を、蟹江は慌てて否定した。
「綾香ちゃんを東京に送ったら、戻って来るつもりだったさ」
蟹江と瞬は話をまとめると、綾香に相談した。
綾香も両親(養父母)が心配だったので、明日の東京行きを承諾した。
しかし、すでに手遅れな事に、まだ気づいていない……。
その日の夜、テレビを観ていた瞬と綾香と蟹江は、突然の出来事に驚いた。
画面が真っ黒に切り替わり、赤い文字列が浮かび上がる。
それには、こう書かれていた。
バットマンのルール(杉川村専用)
1 今から、杉川村には誰も入れません。そして、誰も出られません。
2 狩られる者と、狩る者。どちらかを選択してください。
狩られる者はネズミ、惨めに逃げ回ってください。
狩る者は鬼、ネズミを退治してください。
躊躇すれば、あなたがネズミになってしまいます。
3 ゲーム終了は、杉川村にいる全員が鬼になった時です。
それまでは永遠に続きます。
4 鬼は鬼に殺されません。
5 鬼になるのは簡単です。自分が最も愛する者を殺してください。
それができれば、ネズミを殺し回るのも簡単です。むしろ、快楽すら感じるでしょう。
では、ゲームをお楽しみください。
魔界より
画面を読んだ蟹江は、豪快に笑い出した。
「なんだこれ? こんな画像を見せられただけで殺し合いが始まったら、人間なんて居なくなるよ! バカなことが書いてある」
まったく取り合わない蟹江に対して、瞬は真剣な表情をしていた。
「嫌な予感が当たったかも……」
瞬の反応に、蟹江も綾香も不安になる。
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