バットマン「狗神 杉川村編」(20/29)PDFで表示縦書き表示RDF


バットマン「狗神 杉川村編」
作:オリオン



杉川村ルール



 
和尚から15年前の事件の真相を聞かされた蟹江は、驚いていた。
 それと同時に、村人たちに怒りを覚えた。
 だが、事件の時効は成立している。
 誰も、犯人を裁くことができないのが、日本の法律の現状。国家権力の端くれの身としては、何もできない立場だった。

「仏の道を説くべき和尚が、こんな恐ろしい事件に荷担するとは……」

 蟹江は、部屋の中で呟いていた。
 もう、彼が杉川村にいる理由は無かった。 バットマンとの関連は、いまだに不明だが、何か人知を超える世界で繋がっている気がする。
 そうなると、蟹江の出る幕ではなかった。
 そんな事を考えている時、後ろから声をかけられた。  

「どうしたの? 怖い顔をして」

 振り返ると、瞬が立っていた。

「なんだ、瞬か……」

「なに、考え事?」

 蟹江は、瞬に和尚の事を話そうか戸惑った。だが、話を広めるのも良くないと考え、別の話題を持ち出した。

「綾香ちゃんは大丈夫か?」

 綾香は、瞬と一緒に行った出先で気分が悪くなり、戻って来ていた。

「大丈夫みたい。食欲も出たし」

「そうか、それは良かった。ところで、俺は明日、東京に帰る。綾香ちゃんも一緒に帰らないか?」

 蟹江の突然の発言。
 しかし、瞬は驚かなかった。まるでその言葉を予想していたかのように、蟹江に同意する。

「そのほうが良いと思う。なんか、嫌な予感がするから」

「瞬もそう思うか? 俺も胸騒ぎがしてしょうがない」

「なに、刑事さんは逃げる気だったの?」

 瞬のからかうような発言を、蟹江は慌てて否定した。

「綾香ちゃんを東京に送ったら、戻って来るつもりだったさ」

 蟹江と瞬は話をまとめると、綾香に相談した。
 綾香も両親(養父母)が心配だったので、明日の東京行きを承諾した。


 しかし、すでに手遅れな事に、まだ気づいていない……。

 その日の夜、テレビを観ていた瞬と綾香と蟹江は、突然の出来事に驚いた。

 画面が真っ黒に切り替わり、赤い文字列が浮かび上がる。
 それには、こう書かれていた。



   バットマンのルール(杉川村専用)


 1 今から、杉川村には誰も入れません。そして、誰も出られません。


 2 狩られる者と、狩る者。どちらかを選択してください。
 狩られる者はネズミ、惨めに逃げ回ってください。
 狩る者は鬼、ネズミを退治してください。
 躊躇すれば、あなたがネズミになってしまいます。

 3 ゲーム終了は、杉川村にいる全員が鬼になった時です。
 それまでは永遠に続きます。

 4 鬼は鬼に殺されません。

 5 鬼になるのは簡単です。自分が最も愛する者を殺してください。
 それができれば、ネズミを殺し回るのも簡単です。むしろ、快楽すら感じるでしょう。


 では、ゲームをお楽しみください。


          魔界より




 画面を読んだ蟹江は、豪快に笑い出した。

「なんだこれ? こんな画像を見せられただけで殺し合いが始まったら、人間なんて居なくなるよ! バカなことが書いてある」

 まったく取り合わない蟹江に対して、瞬は真剣な表情をしていた。


「嫌な予感が当たったかも……」


 瞬の反応に、蟹江も綾香も不安になる。













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