バットマン「狗神 杉川村編」(2/29)PDFで表示縦書き表示RDF


 バットマンの恐怖はまだまだ続く。
バットマン「狗神 杉川村編」
作:オリオン



バットマン2



  加害者その2


 全く、頭に来る!


 美咲は凄く目障りだ!


 顔が良いだけなのに得をする。


 素敵な男の子に告白されるのも美咲。


 先生にヒイキされるのも美咲。


 クラスで人気者なのも美咲。


 アイツなんて、顔とスタイルが悪ければ、誰にも相手にされないに違いない!



 ……本当は、それだけじゃ無いのは分かっている……。



 でも、恨まずにはいられない!


 美咲の顔を壊してやる!


 少女は、幼なじみの美咲を、いつもこう思い続けていた。
 彼女は、親指の付け根をカッターで切ると、半紙に描かれた人形の顔の部分に垂らした。

 自分の血で赤黒く染まる半紙。

 彼女は、それをウットリと眺めていた。

「美咲に効果があったら、今度は担任の先生だ!」

 彼女は、こう呟いていた。








  被害者その2 

 美咲は、部活を終え、自転車で帰宅途中だった。
 
 ブレザーの制服を着た彼女は、色白の可愛い女の子だった。

 美咲は、自動販売機の前で自転車を止め、何を飲もうか迷っていた。

 その時、後ろから肩を叩かれた。

 何気なく振り向く美咲。

 すると、何の前触れも無く衝撃が来た。

 振り抜かれたバットによって、美咲の美しい顔は砕けていた。

 顎の骨が割れ、歯が吹き飛ぶ!

 頭部が自動販売機に打ち付けられ、並んだ飲料水が血で見えなくなった。

 美咲は、その場で崩れるように倒れた。

 血だらけの顔面から、息がフューフューと漏れている。

 彼女を襲った人影は、何時の間にか消えていた。








  加害者その3


 憎い!

 憎い!

 憎い!

 憎い!


 三十路の女が叫ぶ。


 アイツが憎い!

 アイツは遊びだったんだ。

 わたしの方が好きだと言ったのに……

 奥さんとは別れると言った筈なのに、あの女は妊娠している。


『別れよう』


 と言われたのは、わたしだった。
 
 呪ってやる!

 手首を切って呪ってやる!
 
 カミソリで手首を切った女は、半紙に血を垂らした。







  被害者その3

 日下尚美は、幸せの絶頂にいた。

 二歳年上の夫は、働き者で優しく、夫婦生活は満足いく物だった。

 そして、待望の子宝にも恵まれた。

 そんなある日の出来事だった。

 ご近所のスーパーで買い物を終え、帰宅すると、やっと一安心。

 身重では、歩くのにも気を使う。

 お茶でも飲もうかと用意していると、

 突然、何の前触れもなく襲われた。

 後ろから肩を掴まれ、引き倒される。

「キャア〜!」

「助けて〜!」

 彼女の金切り声にも、犯人は躊躇ちゅうちょしなかった。

 黒い影が、悪魔のように尚美を見下ろしている。

 尚美は、恐怖に震えた。自分の身にこれから起こる事を予想できたからだ。

 黒い影は、バットを振り上げた。

 悪魔は、顔さえも黒く、表情が分からなかった。

 だが、尚美には、奴が何処を狙っているのかが解った。


「やめて〜!」


 必死の叫びも虚しく、凶器は振り降ろされた。

 どぉん

 どぉん

 どぉん

 鈍い音を立てて、機械的に振り降ろされるバット。

 尚美と夫の、未来と希望が詰まった腹部に、執拗なまでに攻撃が加えられた。

 尚美は、白目を剥いて気絶している。

 彼女の白いスカートは、真っ赤に染まっていた。

 





  加害者その3→被害者その4

 良江は、テレビのニュースを見て腹を抱えて笑った。

 あの憎っくき日下省吾の女房が重体で病院に運ばれたのだ。

「あはは、あの女もアイツも、苦しめばいいんだ!」

 久しぶりに愉快な気分になった良江。
 左手には、白い包帯が巻かれていた。

「そうだ、祝杯をあげよう」

 良江は、台所に向かうために立ち上がろうとした。


 その時、


 視界の端に人の足が写った。


「!」


 見上げると、黒い影が立っていた。

 それは、既にバットを振り上げていた。

「あたし、恨まれてるの?

 誰がバットマンを呼んだの?

 嫌だ!

 死にたくない」


 良江の頭に無慈悲な攻撃が加えられる。

 頭蓋骨が歪み、目玉が飛び出す。
 
 耳からは、血が噴き出した。


 ゴッ!


 ゴッ!


 ゴッ!


 凄まじい表情で、良江は息絶えた。  













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