バットマン
そのサイトは、突然あらわれた。
そして、人々の心を蝕んで行く……。
本当に怖いのは、人の心。
バットマンのルール!
1 バットマンを呼び出すには、殺す相手を怨んでいなくてはならない。
2 バットマンを呼び出すには、バットマンのホームページにアクセスしなければならない(“怨バットマン怨”で検索可)
3 バットマンを呼び出すには、半紙と筆と墨がいる。
4 バットマンを呼び出すには、半紙に墨で人の形(リアルでなくて良い)を書き、その形が赤く染まるまで、自らの血を流さなければならない(血で染める部位で、攻撃場所が決まる)
5 バットマンの仕返しは、染める血の量が多ければ多い程、相手へのダメージも大きくなる。
6 バットマンの仕返しは、呪いをかけてから24時間後の同じ時刻に行われる。
7 なお、利用者のリスクは出血のみで、料金等は発生しない。
ご利用ありがとうございます。
加害者その1
山辺定男がバットマンのホームページを見つけたのは、1ヶ月前だった。
正直、
「バカな事が書いてある」
最初はそう思っただけだった。
人生が順調な内は……。
山辺は、後輩のせいで会社をクビになった!
その日、彼は具合が悪かった。
出勤時間に間に合いそうに無かった。
遅刻すれば皆勤手当てが無くなる。
金額は2万円だが、安月給の身にとって、これが有るのと無いのでは大きい。
彼は、会社の後輩に電話した。
「ヨシ、今日、10分くらい遅刻しそうなんだ。タイムカード、俺のも押しといてくれないか?」
「もう、しょうがないですね」
ヨシは、そう言いながら了解した。
だが、これがいけなかった。
先輩の分もタイムカードを押すのを、社長に見られてしまったのだ。
しかも、ヨシは先輩に頼まれた事を白状してしまった。
何も知らずに到着した山辺は、こっそり作業現場に入って、何食わぬ顔で仕事を始めた。
しばらくして、彼は工場長に声をかけられた。
「山辺クン、二階で社長がお呼びだ」
彼は、前から社長から嫌われていた。
社長は、嫌味を言う機会を待っていたのだろう。
二階に呼びつけられた彼は、嫌味攻撃に耐えきれなくなり、切れた。
「そんなに嫌なら、もう出社しなくていい」
彼は、社長のリストラ作戦にまんまと嵌ってしまった。
ヨシさえ上手くやってくれていれば、こんな事にはならなかったのに……。
逆恨みなのは分かっている。
だが、彼は、バットマンに復讐を頼む事にした。
半紙に墨で描いた人形。
その、脚の部分に血を垂らす。
痛いのが苦手な彼は、指先に針を刺し、一滴だけ。
どうせ気休めなのだから……。
「でも、本当に効果があれば、次は社長の番だ」
彼は、こう呟いていた。
被害者その1
「山辺の奴、クビになってセイセイした!」
最近、ヨシはとても機嫌が良い。
それは、会社から嫌な先輩が消えたからだ。
ヨシは、その先輩を嫌っていた。
ヨシ、ヨシと気安く呼び、何かしら先輩風を吹かす。
「俺はお前の子分じゃないぞ!全く、ウザイ奴!」
だから、ヨシは、わざとタイムカードを社長の目の前で押してやった。
彼の思惑は成功し、先輩はクビ!
これほど上手く行くとは思わなかった。
夕方、工場から自宅のアパートに帰ったヨシは、部屋の鍵を捜していた。
「……」
ふと、背後に人の気配を感じる。
振り返ると、バットを振り上げた人影が見えた。
「!」
次の瞬間、膝に激痛が走った。
ヨシは、その場に倒れ込む。
「痛ってえ〜! 痛いよ〜。助けて」
自分でも情けないくらいの声が出た。
彼の膝を殴打した人影は、何時の間にか消えていた。
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