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  絶皇帝~憎まれ、愛された者~ 作者:燎原之火
無事合格しました。
これからは、せめて二月に一回ぐらいのペースで更新していきたいと思います。
いやぁ、自分、内容をよくまとめて文に著わすのが何かメチャクチャ苦手だと気づいたんですよ。
一章 第四部~実力試験2~
 クロヴィスと相対するのはライアを含めて男子六人、女子三人。

 その九人から、(クロヴィスにとっての)猛者の如くの闘気は勿論、(重ねて強調するが、クロヴィスにとっての)強者の如くの闘気は(当然)感じられなかった。
 
 「はぁ」

 人知れず溜息をつくクロヴィス。その表情から、失望と怠惰の念が見て取れる。

 クロヴィスのその行動を好機と見たのか、一人の男子が腕を振り上げクロヴィスに突進してきた。

 ―――身の程知らずがっ!

 クロヴィスは気だるそうに、突進してきた男子の拳を頭を横に振る事で軽く躱す。それと同時に、男子の左後方へ移動。無防備な首筋に、振り向き様ざまに左手で手刀をいれる。男子は呆気なく気絶した。

 その場を沈黙が支配する。

 (ライアを含む)彼ら彼女らにとって、試験が始まっても緊張がなく、気だるげな様子を呈していたクロヴィスは所謂カモ、弱者であった。しかし、そんな認識を覆されたのだ。しかも、ただ(まさ)っていたというわけじゃない。相手を全く寄せ付けない程に圧倒したのだ。クロヴィスに気絶させられた男子が弱いわけではない。彼もトラエア魔術学園の受験者である。多少なりとも武の心得はあったはずなのだ。

 ―――所詮この程度。大したことは無い。

 クロヴィスはすべての魔術師を間接的に支配する絶対強者である。彼にとっては、学園の実技試験などは児戯にも等しかった。





 「クロヴィス、お前滅茶苦茶強いんだな」

 試験が終了した(のち)、ライアはクロヴィスにそう言った。

 試験結果は勿論、クロヴィスの圧倒的大勝利。ライアを除く受験者七人は、急造な連携でクロヴィスに迫っていった。しかし、(いず)れもがクロヴィスの拳や脚の餌食になった。残ったライアも軽くあしらわれ、試験は終了。クロヴィスに触れる事が出来た者はいなかった。これには教師も驚き、賞賛を送っていた。

 「ああ、まあな」

 クロヴィスは軽く流し、思案した。

 それは試験終了時の事だった。クロヴィスに視線を送った者がいたのである。刹那にも満たない時間だったから視線の送り主を特定出来ず、分かったのは大まかな方向だけである。

 ―――あの方向にいたのは在校生だ。

 学園生だからといえど油断は出来ない。いくら短時間だとしても視線の送り主を特定させなかったのだ。

 ―――もしや、ばれたか。だがそれはない。とすると……

 ―――ちぃ、何も分からん。様子を見るしかないか。





 「おっと、危ない。いくら何でもあれだけで気付くかよ、普通ーー」

 驚愕とあきれの意を込めてそう発言したのは、一人の男子生徒で、名をカイル・ヘヴンズといった。観客席に座って実力試験を見ていたのだ。背の半ば程の長さの明るい金髪と鷹の如き鋭い眼に黄金の瞳を宿らせ、王者の如き風格を纏った長身の彼はこの学園の生徒会執行部会長、つまりこの学園の支配者であった。

 「凄い逸材じゃないか、カイル」

 カイルにそう言ったのは、彼の左隣りの席で脚と腕を組んで座っている女子生徒で、名をクレア・ハードエッジといった。下ろせば膝裏に届く程の長さの小豆色の髪を後頭部高くで纏め、切れ長の眼に髪と同色の瞳を宿らせた長身の彼女は生徒会執行部副会長だ。

 「ボクも彼は有能だと思うよ~」

 語尾を伸ばしてそう賛同したのは、クレアの左隣りにちょこんと座っている女子生徒(・・・・)で、名をネリア・ボロドエアといった。アホ毛のある首筋程しかない薄緑の髪で、眦が幾分下がりがちの眼に深い緑色の瞳を宿らせた背の低い彼女は、クレアと同じ生徒会執行部副会長だ。

 「あれだけの体捌きだ、リリアやテレサに匹敵するかもな」

 「リリアはともかくテレサにか? テレサには俺でも敵わん。それは無いだろう」

 カイルは、クレアの言葉に首を振りながら否定する。

 「それでも、実力はある。まだ断片しか垣間見てないがあれだけの力だ。私達の役に立つ事はほぼ確定している」

 「でも~、彼がそう簡単にボク達の言う事を聞くかな~」

 「聞く聞かないじゃなく、聞かせるんだよ。主に俺が。場合によってはテレサを引っ張りだせばいい」

 これからの展開を思い浮かべて口角を僅かに上げながら言うカイルは、実に楽しそうだった。

 「それもそうだな。テレサに適う奴なんかいないだろう。私達が三人掛かりで()り合っても手も足もでなかったんだ」

 「さて、これからあいつはどれだけ俺達を魅せてくれるのか、まったく楽しみだ」

 手を組みそこに顎を載せながら、カイルは笑った。





 クロヴィスは、これから自分が何に巻き込まれるかを、まだ(・・)感知してはいなかった。
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