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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外237 退魔の結界構築

 ……というわけで、まず訓練用の陣地の一部に小規模の結界を張る事で、どういった代物なのかを見てもらい、シガ将軍の許可を貰った。
 早速外壁に沿うように結界を作る作業に取り掛かっていく。
 既に都市があるところに結界を作るので、魔石の粉で結界線を引くのは建造物の地下を通す作業になってしまう。真面目にその方式でやっていると時間がかかるし、地下道を掘って、となると土魔法を使える面々に負担がかかるだろう。

 そこで要所要所に質の良い魔石を設置し、魔力の向かう方向をミスリル導線で誘導し、点と点を繋いでやる事で魔法陣を模す、という形式を用いることにした。
 使い道の少ない小さな魔石から粉末を作って線を引くのと違い、この場合、そこそこのランクの魔石が複数個必要になってくる。諸々含めてコスト的にはこちらの方が高くつくし、結界を起動させるための難易度も高くなるのだが……効果としては問題なく機能するはずだ。

 都市部を直上から見て土魔法の模型を作り――どこに魔石を設置して、どの角度で魔力を誘導するかを決めていく。
 居城が都市の中心部にあるので……ここに非常時用の結界を展開できるようにしてやれば良いだろう。

「魔除けの術を行う、ということで領民への通達は済みました」
「問題なさそうですか?」
「ゲンライ殿やレイメイ殿の来訪も伝わっておりますからな。安心しているようですぞ」

 なるほど……。土地柄的に得しているというか、ゲンライとレイメイ、それからシガ将軍への信頼故に、というところがあるな。そのあたりの信用を傷つけないように仕事はきっちりとさせてもらおう。

「魔石の設置場所は可能な限り民家を避けて……魔法陣がこうやって展開していくから……まず、ここを始点にして、この光点の部分に魔石を敷設していくことになるかな。ミスリル銀の角度調整はこっちで行うよ」
「それじゃあ、私達は地下に魔石を敷設していけばいいのね?」
「そうなるね。ええと。バロールと一緒に敷設する場所に光球を飛ばしておく。アシュレイとマルレーンも水球や光球を目印の位置に飛ばす方を手伝ってもらえるかな」
「分かりました」

 アシュレイとマルレーンがにこにこしながら頷く。
 というわけで魔石を地下に敷設。その周辺を構造強化で固めていくことになる。
 土魔法を使えるのは俺、クラウディア、ローズマリー、ステファニアという顔ぶれだ。コルリスは……穴を掘ったり魔石周辺を固める作業の手伝いも出来るかな。ステファニアの補助をしてもらうのが良いだろう。魔法を使えない面々や動物組は作業中のみんなの護衛をしてもらう、ということで作業を進めていくとしよう。



 目印となる光球をあちこちに飛ばしながら、地面に円筒型の穴を掘り、魔石を敷設してミスリル銀線を正確な角度で接続した後に、最後に掘り返せないように周辺ごと固めていくという作業となる。
 外壁や城郭そのものに魔石を埋め込むポイントも点在している。みんなで手分けしながらの作業であったのでそれほど時間もかからずに魔石の敷設自体は終わった。
 残りは……俺の作業だ。ミスリル銀線を正確な角度で埋め込むことで魔力が正しい方向に向かうように調整するというわけだ。

「勉強させてもらいます……!」
「こちらこそよろしくお願いします」

 というわけで俺が接続作業している傍ら、ミスリル銀線の束をコマチが持ってきて近くで待機。必要な時に必要な長さだけ束から切断して渡してくれるという形だ。
 補助と見学を兼ねているのでコマチは実に上機嫌である。適度な長さに切り取られたミスリル銀線を受け取って魔石に接続。これで一ユニット完成。埋めて固めるといった作業を繰り返していく。
 これもバロールと手分けしての作業が可能だ。バロール側ではミスリル銀線の束を持って補助してくれているのはヴィンクルである。爪と牙で易々とミスリル銀線の束を適度な大きさに切り分けて、ゴーレムの手を使って接続作業をしているバロールに渡していく、といった寸法で作業している。

 住民達は街のあちこちで作業を進める面々の護衛として同行しているラヴィーネやコルリス、ティール達に驚いたような顔をしていたが……ゲンライがにっこり笑って手を振ると、それで安心したのか笑いながら手を振りかえしていた。それに対してまたコルリスが手を振り返したりといった具合だ。

 大きな混乱も問題も起こらず作業は進んでいき……最後に一番大きな魔石を城の天守閣に敷設。結界を起動させたらクラウディアが契約魔法で街のあちらこちらに敷設した魔石と連動させる、というわけだ。

 そうして諸々の作業を終えたところで、ようやく結界起動となる。始点となるポイントに移動。地面にウロボロスを突き立て、目を閉じて魔石からミスリル銀線の方向へ魔力を伸ばし、ポイントからポイントへと魔力を伸ばして連結させていく。

「凄い……」

 それを見ていたセイランが魔力の動きを感じ取ったのか、驚愕の表情を浮かべて呟いていた。カリン、レンゲ、ユズの小蜘蛛達は何だか、その隣でうんうんと目を閉じて頷いていたりするが。

 都市全体に魔力を広げるので魔力循環は使えない。時間をかけて魔力を練り上げ、魔法陣へと魔力を通していく。そうして都市部を囲うようにぐるりと魔力がめぐり、始点に接続するように戻ってくる。
 ――来た。

 魔力が巡ったことを確認し、マジックサークルを展開する。結界の起動と同時に、都市部外壁に沿うように淡い光の幕が天に向かって立ち昇るが、それも一瞬のことだ。
 結界がしっかり起動してしまえば普段は見えなくなるものだからな。

「始めるわ」

 と、カドケウスと一緒に城の天守にいるクラウディアが言う。石柱の上に埋め込まれた魔石に触れて、クラウディアもマジックサークルを展開する。契約魔法で結界を構築している魔石と繋ぐ事で、非常時の結界強化であるとか、普段の結界への魔力補充を可能とするという寸法である。
 道士が都市部にいればそう言った人物に魔力補充を手伝ってもらってもいいし、いないのなら人数を用意してみんなで魔力補充すれば良い、というわけだ。



 そうして結界の切り替えも上手くいくかを確認。天守閣に設置した石柱を少しそれっぽくなるように装飾を施してやれば完成である。

「何と申しますか……懸念事項がいきなり解決してしまった、というのは衝撃的ですな。これだけの大規模な術を、これほどの短期間でとは」

 シガ将軍が外壁を見上げて呟く。

「術体系にも違いがありますからね。平和になったら西方との技術交流も進めていきたいところですね」
「ふむ。それは興味があるのう」
「そうですね。そういった面での交流も進めていきたいところです。テオドール殿とであれば、どちらの技術が伝わっても悪い方向には向かわないでしょうから」

 と、俺が言うとゲンライが頷き、カイ王子も相好を崩す。

「ふむ。穴を掘ったりすると仰っていたので、城にて風呂の用意を、と思っていたのですが……これは少し想像と違いましたな」
「ああ。汚れはしませんでしたが、それは嬉しいですね」
「お忙しいのは承知しておりますが、是非城にも滞在していって欲しい。歓迎しますぞ」
「昔の話も聞きたいところではあるのう」
「うむ。鬼の話は我も気になる」

 と、御前とオリエが言う、そうだな。それは確かに気になるところだ。シガ将軍、スウタイのシリウス号の見学。
 それから都市部に潜伏しているゴリョウ達の同僚の説得も行わなければならない。
 ゴリョウ達が言うには、流石に報告すべき事案があっても都市部の前で訓練している中では動けないだろう、ということで。こういう場合に落ち合う手順等々はしっかり決まっているらしい。

 というわけで、結界を設置してそれで終わりというわけでもないからな。城にてしっかりと将軍達の信頼関係を構築しつつ、やらなければならない仕事をしっかりとこなしていくとしよう。
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