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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外223 将兵達の胸中は

「ふうむ。我らもああいう変装が出来れば案外潜入任務などにも加われるかも知れんな」

 ――と、浮遊するマクスウェルが核を明滅させた。ベリウスが三つの首でこくこくと頷き、ジェイクはまあ、何となく小首をかしげているような印象だ。

 マクスウェル達が言っているのは、現在進行形で違う姿に変装させられているサトリのことである。
 変装の案としては……とりあえず毛足の長い何かにしてしまえば良いのではということで、オリエとカリン達小蜘蛛が糸束を紡ぎ、それを着色して体毛に合わせ、サトリの顔などに貼り付けて、毛玉状態にしていく、という形となった。

 オリエ達の紡ぐ糸は流石というか……。サトリの元々の毛並に合わせた糸を最初から紡げるらしく、色合いを合わせたものをウィッグとして貼り付けると地毛との見分けがほとんどつかなくなる。

「まあ……マクスウェルの場合は使役ゴーレムの見た目を変えれば潜入もいける、のかな? 話はついたから、今度は一緒に街中にもいけるだろうし」
「うむ。外出できるようになったのは嬉しい」

 マクスウェル本体は浮遊する異国の斧、ということになるのだろうが、浮遊と会話を行わなければそこまで目立たない、とは思う。後はマクスウェルが操る使役ゴーレムの見た目を騎士風ではなく、現地にいても馴染む何かにすれば、東国でも潜入には行けるだろうという気もする。

「ベリウスとジェイクは付け毛をつけていって見た目を分からなくすれば……」
「ええと……巨大な毛玉、かしら?」

 と、イルムヒルトがそれを想像したのか頬に手を当て、首を傾げた。
 巨大な毛玉……。三つの頭や巨大なカボチャをウィッグで隠す……ということになるのか。うん。やはり目立たない変装というにはやや無茶があるかな。ベリウス本人もそれを想像したのか、目を閉じて首を横に振っていた。むう。

「ヴィンクルみたいに幻影で誤魔化す方が良いのかな」

 そう言うとヴィンクルは俺に答えるように一声上げていた。ベリウスも静かに頷いている。まあ、潜入に関しては次の機会があったら考えるとしよう。

「変装の出来不出来は……よく、分からないが……案外悪くはない。糸の感触が、良い……」
「ふふん。そうだろうとも」

 サトリがそんな風に言うと、オリエが満足げに言って、カリン達も揃ってうんうんと頷く。
 話をしている内に大分ウィッグが装着されて、本格的に全身がもこもことした、よく分からない生き物になっていた。
 ケウケゲンの隣に並んでも違和感がない仕上がりというか。毛の下の体格、骨格が違うからシルエットは違うのだが、少なくとも顔はどんなだったかがよく分からない。

「うむ。良い仕事ができたでござる」

 と、サトリにウィッグを装着する作業をしていたイチエモンが、仕上がりを見て満足そうに言った。うん。確かに毛玉にはなったが……毛の生え方の流れは自然というか何というか。イチエモンが全力で技術を振るった事が窺える結果だ。

「重いが……動きにくさはない……。きちんと視界も確保できている」
「それは何よりでござる」

 そんな風にイチエモンが頷く。さて。シリウス号を停泊させる場所も決まり、結界も張り終わった。サトリの変装も出来上がった、ということで、ガクスイ達の陣営に同盟締結の旨を知らせに行く事としよう。



 そんなわけでゲンライ達やみんなと共に都市へと向かう。ガクスイの陣営には話がついているということもある。異国からレイメイの伝手で援軍が来ている、ということを示すために、船の防衛班を残して使い魔達も連れていく。
 ラヴィーネ、コルリス、ティール。それにマクスウェルも一緒だ。まあ変装したサトリを紛れ込ませるための手でもあるのだが。

 そのせいか、迎えに来たガクスイの使い達は、動物組を見て目を丸くしていた。

「儂が連れとるタクヒと同じようなもんじゃ。危険はないぞ」
「そ、そうなのですか?」
「みんな、挨拶を」

 と、俺が言うと、コルリス達が拳と掌を合わせる形で一礼する。マクスウェルも身体を傾けてから「よろしく頼む」と、言葉を発していた。

 ガクスイの使い達はその光景にぽかんとした表情を浮かべたが、少しの間を置いて再起動し、思い出したかのように挨拶を返した。とりあえず危険はない、ということに納得はしてもらえたらしい。
 驚いている沿道の住民達にも動物組がこちらの様式で挨拶をしたりして。
 何か信じられないものを見た、というような反応が返ってきていた。中にはつられて挨拶を返す者もいたりして……。まあ、見知った動作で挨拶のやりとりをすると案外良い印象になるものだ。少なくとも悪い方向で見られることはないだろう。

 ガクスイは居城の入り口で待っていてくれた。

「おお、お戻りになりましたか。むう。何と申しますか……賑やかな面々、ですな」

 と、こちらの顔触れを見てガクスイが言う。

「例の件に関しては首尾よく話が纏まりました。これがホウシン殿から預かった書状です」

 カイ王子は、ホウシンがガクスイに宛てた書状を手渡す。

「確かに受け取りました。内容を確認したら、重臣達に知らせる事としましょう」
「その席に立ち会っても?」
「勿論です」
「ではゲンライ殿の助太刀ということで伝えて貰えればと思います」

 動物組も仙人の霊獣と同じような扱いと思ってもらえればいいということで。

「承知しました」

 というわけで城の奥にある一室に通される。書状の確認と家臣達の召集までの間、少し待っていて欲しい、とのことである。

「そう言えば、停戦を希望している派閥の言い分はともかく、その中心人物についてはどういった方なのですか? やはり、それなりに発言力を持っている人物だと思うのですが」
「キショウ殿か。ガクスイ殿の陣営では古株の家系ではあるかな。古参の将軍であるオウハク殿と並んで、武門において名家の出と言われる人物ではあるね」

 俺が尋ねるとカイ王子が教えてくれた。

「今の当主は代替わりしたが……親の七光りなどと言わせないぐらいには有能な人物として知られておるよ。個人では武芸、軍においては指揮においてかなりの才覚を発揮している、そうじゃ。若手の期待株、といったところかのう」
「ああ。それは確かに。そういった方が反対に回っていたら押し切って開戦に臨む、というのも難しいですね」
「単独戦力ではショウエンの陣営に及ばない、というのも事実のようだものね」

 ローズマリーが少し思案しながらそんな風に分析を行う。
 オウハクは……叩き上げの将軍という印象だったが。こちらは話を聞いた感じ、若手のエリートといった印象かな。
 代々仕えている武官の家系で、特にこれまでの経歴や素行に瑕疵がないともなれば……確かに、反対意見を無視することもできないだろう。だからホウシンの陣営との同盟の行方次第、という形になってしまう部分があったのだろうが。

 同盟締結となれば、この後の召集にも顔を出してくるだろう。実際のところがどんな人物なのか。その主張に裏表がないのかなどは、その時に判断するべきことだ。

「主要な人物の……名は覚えた……。一応、それらの人物を注視しておく」

 と、サトリが言う。そう、だな。そういう形になる。
 ホウシンの家臣達は武官に関して言うなら全員戦意満々で士気が高かったようではあるから、主君としては頼もしくも思いつつそんな家臣達に武功を立てさせるために後押ししていた、というのが実態ではあったようだ。さて。ガクスイの陣営はどうだろうか。

 やがて、女官がやってきて、召集の場所に案内してくれる。やはり主だった者を集めての内々の話、ということになるわけだ。

 動物組を連れてきたのは助っ人としての戦力が充実している、ということを示すためでもある。基本的にはホウシンの所でやったのと同じように丁寧に仙人の戦力や制空権等々について説明するつもりでいるのだが……。
明けましておめでとうございます!

旧年中は大変お世話になりました。
今年も頑張っていきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
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